千五百六十五(新和語による和歌) 富山市のライトレール
辛丑(2021)
四月二十ニ日(木)
富山市にライトレールを推進した市長が、明日退任する。日経新聞のホームページによると
コンパクトシティー、税収増など成果 富山市長退任

と云ふ見出し。前文は
富山市の森雅志市長が23日退任する。合併前の旧市時代から19年、推し進めてきたのがコンパクトシティー政策だ。JRのローカル線を次世代型路面電車(LRT)化するなど交通網を充実させ、街中や公共交通の沿線地域に住居や商業機能を集めた。税収や人口といった面で効果は出たが、中心市街地の活性化など道半ばの部分もある。

成果は
市内住宅地の公示地価のベスト10の地点は、同日時点でいずれも前年より上昇した。同じ北陸でも金沢市はベスト5のうち3つが下落している。
(中略)
人口減時代に郊外を開発すると、都市管理のコストがかさむ。公共交通を活性化させ、沿線に様々な機能を集中させる。これが森市長が進めたコンパクトシティーの戦略だ。商業や居住の機能が集まれば、地価が上昇する。そこで生まれる税収で、中山間地などのインフラを維持できると想定した。

数値で見ても
実際、富山駅周辺などの「都心地区」と公共交通沿線の「居住推進地区」の住民の比率は05年の28%から19年に38.8%に上昇した。市域全体からあがる固定資産税と都市計画税の合計額は20年度実績で360億円と、5年間で12%程度増えた。富山市の人口も13年連続で社会増が続く。

問題点として
象徴的なのが自動車の保有台数の増加だ。富山県はもともと、1世帯あたりの自家用車保有台数が1.67台(19年度)と福井県に次いで全国2番目に多い。車を多く持つには広い駐車場が必要で、郊外に宅地を求める動きが広がった。
その流れを止めようと一連の政策を打ったが、19年度の市内の乗用自動車の保有台数は約27万8000台と5年間で8000台増えている。森市長は「車を使う暮らしは否定していない」とし、車を運転できない人や歩いて文化施設巡りを楽しみたい人に公共交通という選択肢を示すことが大切だと話す。

ここまで大賛成だ。あと日本中で私以外に云ふ人がゐないので一つ追加すると、ライトレール(路面電車を含む)のある街は道路が、人と車の共有物だ。ライトレールのない街は道路が、車の占有物だ。
昔には 人牛馬(ひとうしうま)が 道を行く 今では人が 歩くとも 脇に限りて 真ん中は 車が走る 新しく 乗り合ひ走る 鉄の筋 敷けば車と 人が仲良く

(反歌) 街の中 人と車が 共走る これぞ明るい 幸せの街
今後の課題は
都心地区ではマンションなど住居は増えてきたが、商業の盛り上がりには欠けている。富山市民の多くが買い物に出向く平和堂系の郊外商業施設「ファボーレ」は19年に大幅増床した。一方、中心市街地で百貨店などがある総曲輪(そうがわ)は苦戦する。1月時点の県内公示地価の商業地ベスト10でも、総曲輪の2地点はマイナスか横ばいだった。


四月二十三日(金)
市長はインタビューで
――一貫してコンパクトシティー政策を進めてきました。
「就任時、20年後には人口減が地方都市の最大の問題になるとイメージできた。(中略)LRTが走るフランスのストラスブールのような例を示し、『こんないい町になるのなら』と思ってもらえた。今は20年後を見通せないから辞めることにした」
――2003年にJR西日本からローカル線「富山港線」のLRTを提案され、3年で実現しました。ほぼ同時期に提案があった岡山県の吉備線はまだ実現していません。
「沿線の人が便利になるだけでは全市の納得は得られない。他の路面電車とつなぐ構想も示し、まちづくりのリーディングプロジェクトだと位置づけて理解してもらった。(以下略)」
――住民基本台帳とGISを組み合わせた分析モデルを政策に生かしてきました。 「当時としては例がなかっただろう。(中略)多くの自治体は説明責任は果たすが、反対が出ると足踏みする。説得責任こそ大切だ。データも大事だし、(以下略)」
(中略)
――次の市長に継承してほしいことはありますか。
「あるゾーンに居住などを集中させて、得られるリターンを市域全体で使っていくという考え方だ。中山間地に住む人の除雪や救急車をまかなう費用をどう作っていくか。山あいに様々な施設を作ることが解決策ではないはずだ」

これは貴重なお話だ。山あいに施設を作っても、維持費が掛かる。(終)

編集後記
1.ライトレールを和語で表現すると鋼道(はがねみち)や鉄道(くろがねみち)。これでは語感が悪いし、道路全体が鉄製の印象を受ける。和語を用ゐる理由は、語感を整へるためだから、鉄(てつ)や線(せん、後に筋へ変更)のやうに、二音でしかもラ行で始まらないものは語感がよく、新和語とした。
2.これまで過去の特集で富山に関係するページは
富山県に行こう(路面電車のある街)
懐かしのプッシュホン指定席予約の廃止
飛騨旅行記
飛騨旅行記(その二)
本山東本願寺の本山初法座に参加
駅構内の操車場(富山駅)
駅構内の操車場(まとめ)
駅構内の操車場(直江津駅)
宿泊税
旅の思ひ出
ホームページ移行記
北海道旅行記
越中
越前旅行記

観光立地を目指す
ライトレールを考へる
黒部への仮想旅行
日電歩道と水平歩道
ますのすし
一級水系で再編

かつて路面電車と鉄道のメニューは隠しページだった。富山県に行こう 路面電車のある街の中で路面電車のボタンを押し、そこからメニューを押さないと行けなかった。今は、メインメニューの一番下にボタンがある。どれだけ富山市内電車を気に入ったかよく判る。

メニューへ戻る 和歌(百四)へ 和歌(百六)へ