千二百七十九 北海道旅行記(1.北海道へ行くことになった経緯、2.副室式気動車、5.旅行形態の変化)
平成三十一己亥年
三月十四日(木)北海道へ行くことになった経緯
駅のポスターに、北陸フリー切符四日間21000円と書いてあった。大人の休日倶楽部会員限定だ。自由席特急と、指定席も六回まで乗れる。私は、長野新幹線とその後に延長された北陸新幹線には、一度も乗ったことがない。
だから金沢へ行き、しかし宿泊税のやうな悪税には反対だから金沢には宿泊せず食事もせず買ひ物もせず空気も吸はず富山に戻って一泊する。次に北陸本線の特急も、寝台列車北陸号を除いて乗ったことがないのでそれ(列車名は不明だが白鳥号か?。昔は大阪から青森まで走り、私が小学校低学年の頃は切り離した一部車両が上野まで来た。今は白鳥号ではないやうな気がする)に乗って、新発田か村上に一泊し、そのあと会津か魚沼に一泊して帰る。さう云ふ、泊まらぬ宿の皮算用を立てた。そして大人の休日倶楽部ミドル会員に申し込んだ。
その後、三月九日までの数日間限定で、しかも一日三千枚限定で、JR東日本、北海道五日間フリー切符が発売されることを知った。そこで計画を変更し北海道旅行に行くことになった。

三月十五日(金)四回目の北海道
北海道旅行は四回目だ。
一回目は二十八年前の一月に寝台特急北斗星で、札幌、旭川、網走に一泊し、釧路から寝台急行で札幌に戻り、寝台特急で埼玉に戻った。往路で函館を過ぎると、デッキにある乗降扉のガラス窓の内側が凍ることに驚いた。
二回目は二十五年前に札幌へ出張で、同じく寝台特急に乗り、函館で降りた。その前に、食堂車でディナーは3000円くらいで高い。しかも予約が必要だ。ディナータイムのあと、予約なしで酒類と軽い食事の時間があることが判り、それに行った。窓に向かふ椅子に座り飲んでゐると丁度仙台駅を通過した。今回は函館で降りて、あとは昼間の列車に乗った。出張は月曜なので土曜夜の列車で来た。函館駅は改札を出た先が長く、そこに日本テレコムのクレジットカード公衆電話があり、丁度妻が出産のため仙台の実家に帰省中だった。私は横浜の自宅の留守番電話に何か入ってゐないか確認を兼ねて、この公衆電話を使ってみた。クレジットカード式の公衆電話は便利だし、当時はNTT独占のなかを日本テレコムなど数社が新規参入した直後なので、応援する意味もあった。駅前では朝市で賑はった。
三回目は、労働組合の全国交流会が帯広で開かれた。単産ではなく任意組織なので、大会ではなく交流会と称した。往復とも飛行機なので、交流会以外は行かなかった。移動の貸し切りバスが農地の横を延々と走り、途中で出会った北海道電力の鉄塔を見上げると、鉄柱が三角なのに送電線が二本しかない。一本欠けただけなのに三本揃ふときの1/3しか電力を送れない。

三月十六日(土)副室式気動車
今回の旅行で気付いたことがある。かつて気動車の排気は、香ばしい香りがした。それに反してバスの排気は、嫌な臭ひがした。だから乗り物に弱い人はバスの排気ガスの臭ひだけで具合が悪くなったさうだ。私は乗り物には強いが、あの臭ひは嫌いだ。
今回乗った気動車は鉄道なのに嫌な臭ひする。帰宅ののち調べると、かつての気動車は副室式ディーゼルエンジンを使用した。JRになってから各社は直噴式を採用した。直噴式は出力が大きい。かつての気動車は登り坂ではエンジンが高回転の音を響かせながら、走行は低速だった。しかし直噴式は速度が電車と変はらないから、素晴らしい。

三月十七日(日)旅行の変化
私の旅行形態は、三十年間で幾つも変化した。最初は、普通周遊券を使ひ、それには2箇所の周遊地を廻る必要があるため、例へば弟子屈駅で降りてバスに乗る形態を採った。遠距離の移動は寝台特急を使った。これは、電車ではなく客車が好きなためだった。
次に、指定席往復割引切符で寝台車も使へる区間のものか、グリーン車往復割引切符で寝台車を使ふ方法も多用するやうになった。この時期は、既に北海道への指定席往復割引切符が廃止になり、そのため寝台特急北斗星の人気に陰りが出た。
市内では碧血碑を見たことで思ひだしたが、旅行ガイドの書籍に載るところは、不便でも行った。アイヌの博物館、おどりなどがある場所も、不便な駅でも降りた。その後、その都市に行くこと自体が目的となり、これは私自身の旅行への考へが変化したためだが、旅行ガイドもかつてのやうに観光名所を列記する書籍が少なくなった。その影響に、今回の旅行で気が付いた。
指定席往復割引切符とグリーン車往復割引切符の廃止により、私の旅行形態は青春18切符を利用するものに変はって今日に至る。だから大人の休日倶楽部は、今回が初めてだ。
今、この記事を書いて気付いたのだが、寝台特急の廃止は、一般には新幹線の新設が原因だ。或いは夜行バスの出現が原因だ。更に古くは、ビジネスホテルの出現と、寝台料金の大幅値上げが原因だ。隠れた要因として発車時のカクンといふ前後動もある。しかし、指定席往復割引切符とグリーン車往復割引切符の廃止が本当の原因ではないだらうか。(終)

追記三月二十日(水)余録
出発前に、国内旅行でいつもホテルの予約に使ふサイトに異変が起きた。5000円以下で札幌を探すと、カプセルホテルかシェアハウスしか出てこない。ホテル予約サイトの変更かと一旦は思ったが、或いは札幌市内で5000円以下はこれらしかないのではないかと気づいた。
土曜は別の場所に泊まって札幌は日曜にすれば普通のホテルがあるかと思ったがやはりない。やっとの思ひで、札幌から一時間ほど離れた栗山町のホテルを見つけた。自動ログインで3500円。タッチパネルの反応が鈍く、キーの番号が表示されるからキーをあちこち探し、これは押しボタンで入力する暗証だと気付いたが、部屋番号がホテル中を探してもない。出口に、外に出て隣から入ることが書いてあり、やっと部屋に入れた。ハラハラドキドキした分を考慮すると3500円は高い。
稚内もよいホテルが無い。4000円が見つかった。風呂と便所は共用で4000円は高い。私が宿泊するのは通常は3500円前後だから、尚のこと高いが、ここしか見つからないので仕方がなかった。
実際に泊まってみると、各部屋の入口は和風の格子を付けて、部屋と廊下と便所も綺麗だ。改築したばかりだから綺麗と云ふ理由もあるが、ミニ「星のや」だ。本物の星のやは高級ホテルだが、安価なホテルで少し「星のや」を模倣した。
駅前に稚内サンホテルがあり、入り口に昨年11月破産の張り紙と管財人の連絡先がある。稚内はホテルの少ないことが、唯一の難点だ。
網走は、風呂と便所が共用で3450円。手頃な金額だ。フロントも感じが良い。風呂と便所が共用は昭和時代のホテルや国民宿舎の香りがする。第一回目の北海道旅行では、私学共済組合(及び相互乗り入れの公立学校共済と、更には公務員共済組合などとの相互利用)指定のホテルに泊まり、海の壮大な景色を見ながら入浴した。旭川にも宿泊し、国家公務員共済組合連合会(KKR)の宿舎に宿泊した。
四日目は、一日目と同じで札幌を避け、今回は小樽に泊まった。ここは3500円で、風呂と便所は室内。机の前が狭いのと、ポットの「開」ボタンを押してもお湯が出ず、いろいろ試したあげく蓋を外してお湯を茶碗に入れた。だから適正価格か。

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