30年前に
ジュディオングさん、ネルケ無方老師
七百五十五 曹洞宗「禅をきく会」ジュディ・オングさん、ネルケ無方老師
平成二十七乙未
十月七日(水)
曹洞宗の講演会
曹洞宗に「禅をきく会」といふ催しがある。聴きに行くかどうか迷つた。会社で有給休暇を取る場合は、未確定の段階でまづ会社の予定表に入力する。他の予定と重ならないためである。次に確定した段階で休暇届を出す。
今回、一か月くらい前に十月六日の予定を入れたものの、先週一旦削除した。その後、再び入れて休暇届を出した。それくらい迷つた。前々回の築地本願寺の香山リカ氏の講演があまりにひどかつたためだ。時間の無駄である。
しかしその心配は無用だつた。お二人の講演は、充実した内容だつた。
十月八日(木)
ジュディオングさんの講演
ジュディオングさんは台湾で生まれ、三歳で来日。十一歳で映画に出演、十六歳で歌手デビュー。テレビ、映画に多数出演し、日本レコード大賞など数々の賞を受賞。しかしそれだけではない。版画展を観て、入門を希望したが「ジュディ・オングさんでしょ、やめておきなさい」と云はれた。芸能人として忙しいので無理だと思はれたのだらう。しかし諦めずに版画作品を作り持参したところ入門を許可され、日展に入選。その後も入選を重ね、特選も一回。
あきらめないことが大切でしかし続けられないような無理はしない。三日やり一日休んでもよい。一年休んでもまた続ける。
そのようなお話しがあつた。また第二の矢の話もあつた。壁にぶつけたなど何か失敗したときに、そのことを考へてゐるとますます被害が大きくなる。そのような話だつた。この話が印象に残つたのは、今から三十年くらい前だらうか。電電公社が民営化され営業戦略の一環でめぼしい先に回線基本料を無料で録音を放送することを始めた様子だつた。聴者の通話料で収入を得ようといふ試みである。或る小さな末寺がテレホン法話を始めた。私も半月に一回くらい聴いた。その中に「二の矢を継ぐ」といふ仏教の逸話があつた。他人の過ちをいつまでも責めない、といふ話だつた。
途中で話の時間が無くなり半分しか話してゐないといふことで、まとめで劉海粟といふ文人画の詩を紹介し終了した。内容の充実した一時間半の経過を忘れさせる講演であつた。あと来日した直後、ジュディオングさんとその兄が日本語しか話さなくなつたので両親が示し合はせて、家では台湾語にしか返事をしなくなつた。すると小さいながらも、外では日本語、家では台湾語を話すのだと判つた。そのような話もあつた。
十月九日(金)
ネルケ無方老師の講演
ネルケ無方老師はドイツ出身である(老師とは曹洞宗で僧侶への敬称である。現代中国語でも教師の意味がある)。欧州では禅の道場があちこちの町にある。高校の先生が禅の校内クラブを始めた。希望者がゐないので一回だけ参加しないかと云はれて参加した。その後、毎回参加し来日し、僧侶になり、無檀家で自給自足の山奥の寺の堂頭(住職)になつた。そのお話しであつた。会場は或るときは賞賛の感動、或るときは驚き、或るときは笑ひの渦と、ジュディオングさんのときと同じく充実した九十分であつた。
XX教は最後の審判で他の神を信じる人を救はない。心の狭い神だと思つた。クリスマスのときサンタは本当にゐると思つてゐた。しかしあるとき叔父がサンタをしてゐるのを見て、サンタが嘘なら神も嘘ではと思つた。ドイツでは宗教の授業がある。宗教ごとにクラスが分かれ、無宗教は道徳を学ぶ。14歳で宗教選ぶ(ネルケ老師はけんしんと呼んだ。献身、検信?)。洗礼は親がするから自分では判らない。だから14歳で宗教を選べる。XX教を選ぶと親や親戚からお祝ひのお金を貰ひかなりの額になる。無宗教を選ぶと誰もくれない。しかもXX教を選ぶと親の許可があれば未成年でもお酒が飲める(ミサのときぶどう酒を飲む)。だからXX教を選んだ。
子どものときの話から始まり、初来日のとき、二回目の来日、修行時代を経て、大阪城公園でホームレスとして座禅会を開いた。
市に無許可で他のホームレスたちとテントを並べた。しかし師匠が事故で亡くなり、四人の兄弟子は自坊があつたり勤めてゐるため、臨時で寺の管理を引き受けた。日本人の恋人がゐたが大阪に残した。住職を続けざるを得なくなり、山奥に来てもらつた。弟子を育てるのにきゅうり型がよい。苗を植ゑて上から紐をたらせば、つるが自分で上に延びる。日本人はトマト型が多い。一つ一つ手を掛けないと上に延びない。西洋人はかぼちゃ型。周りを枯らしてしまふ。道元禅師は師匠は大工、弟子は木材と云つた。木がどんな形でもそれにあつた場所に使へなくてはいけない。一方で、弟子が師匠を作るといふ考へもある。
以上の貴重なお話であつた。
十月十日(土)
増上寺の縁
講演会が開幕する前に、増上寺の日曜大殿説教の常連にお会ひした。中央に置かれた資料を遅れて来た参加者に配布して回るなどする方である。
増上寺とメルパルクホールは目と鼻の先だから、日曜大殿説教の参加者に「禅をきく会」への参加を呼びかけ、参加した人たちのところを回つて歩いてゐる。そんな感じだつた。
私が声を掛けると、私のことは覚えてゐなかつたが、京浜四大本山巡り「だより」10月号といふパンフレットを頂いた。それには参加したい催し物が幾つもあり、まづは池上本門寺である。といふことで次の池上本門寺参拝は曹洞宗-->浄土宗-->-->僧X宗の流れでの参加になる。これを記念し、今号は「大乗仏教(僧X系)その二十四」と「大乗仏教(禅、浄土、真言)その二十」のそれぞれ次を統合して「大乗仏教(統合後)その四十五」とした。
十月十日(土)その二
増上寺と曹洞宗宗務庁
曹洞宗宗務庁はメルパルクホールの近くにある。といふことは増上寺と曹洞宗宗務庁は近い。これに関連した笑ひ話がある。三十年前富士通オーエーで御成門に勤務する人たちが部長から、朝、勤務する前に座禅でもやつたほうがいい、と云はれた。私と同期で入社した人が管理職ではないが最年長だつたので増上寺に相談に行つたところ、うちは宗旨が違ひますと云はれたさうだ。今思へば、曹洞宗宗務庁に相談に行けばよかつた。(完)
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大乗仏教(統合後)その四十六へ (禅、浄土、真言)と(僧X系)は今回から統合しました
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