七百三十九(丁) 増上寺の日曜大殿説教

平成二十七乙未
九月二十二日(火) 念仏の唱へ方
増上寺では毎週日曜大殿説教が行はれる。今週は「地獄と極楽」(或いは極楽と地獄だつたかも知れない)と題して東京目黒区の住職が講演された。この僧侶は若いのに優秀である。まづ、初めての方もいらつしやるので、と前置きして、念仏は、四つ、四つ、二つと区切り、九つ目だけ「なむあみだぶつ」と唱へそれ以外は「なむあみだぶ」と唱へることを説明された。
実は私もこの話は知らなかつた。これで三回目の日曜大殿説教参詣なのに三つ、五つ、二つに区切つてゐた。これは意図したものではなく最初の三つで息が苦しくなつて区切る。次の四つ目で周りが区切ることに気付きその後は判らない程度に少し遅れて唱へるから五つ目(他の人は四つ目)ではあたかも参拝歴十年の如くぴつたり合ふ。「なむあみだぶつ」は九つ目だけといふのも知らなかつた。私は九つ目と十個目でかう唱へてゐた。
一回目のときは前日の土曜に築地本願寺の常例説法に参詣したので、真宗式に「なもあみだぶつ」と唱へたこともあつた。

九月二十二日(火)その二 八大地獄
住職は三十五歳で死後の閻魔様や地獄の話を聞いた最後の世代で今の若い人たちは聞かされてゐないと前置きして始められた。配布されたプリントには「八大地獄」と題が付き、長阿含経、正法念処経、往生要集、大智度論に書かれてゐる等活地獄から阿鼻地獄・無間地獄まで解説があつた。八熱地獄とも云ひ、これとは別に八寒地獄や百三十六地獄もある。番号が大きいほど重罪になる。
1.等活地獄 落ちる理由:殺生
2.黒縄地獄 落ちる理由:殺生、盗み
3.衆合地獄 落ちる理由:殺生、盗み、邪淫
(中略)
8.阿鼻地獄・無間地獄 落ちる理由:殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見、犯持戒人、父母・僧侶(聖者)殺害

等活地獄は、衆人たちが互いに害心を抱き、自らの身に備はつた鉄の爪や刀剣で殺し合ひ、さうでない者も獄卒に身体を切り裂かれる。死ぬと風が吹いて「活、活」(活きよ、活きよ)と聞こえて生き返り繰り返される。等活地獄での寿命は500年である。人間界の時間に換算すると1兆6653億1250万年になる。落ちる理由の殺生は蚊やゴキブリを殺しても駄目で、しかし悔い改めれば救済の道もある。実は私には蚊とゴキブリは殺して仕方ないと考へてきた。どちらも人間に有害な上に、人家に寄生するからである。しかしこの考へだと駄目である。
黒縄地獄は等活地獄の十倍の苦しみ、衆合地獄は黒縄地獄の十倍の苦しみと、順番に阿鼻地獄まで続く。阿鼻地獄は落ちるのに2000年掛かり、これ以外の地獄が極楽に感じるほどである。

九月二十三日(水) 七七日
これ以外に次のようなお話があつた。
三種の人がゐる。極悪人は四十九日を経ないで三悪道に墜ちる。極善人は四十九日を経ないで極楽か天界に行く。普通の人は六日間で426Km歩き秦広王の審判、三途の川を善人は箸で渡り悪人は程度に応じて浅瀬か急流を渡る。二七日に初江王、三七日に宋帝王、以下五官王、閻魔王、変成王、泰山王と続き六道に分かれる。インドは七進法。天に行くと寿命が来たとき苦しい、今までよい世界だつたので。
一般は四十九日で七王の審判を受ける。もつれたときは百日、一周忌、三回忌で十王の審判。初江王は釈迦仏、閻魔王は地蔵菩薩の化身など十王が如来や菩薩の化身。

終了後の茶話会で、正法念処経は偽経ではないかといふ質問に、その土地に合つたもので偽経には偽経のよさがあるといふお話しだつた。私も同感である。三心のない念仏は駄目、浄土宗は救つていただく真宗はありがとう、といふお話もあつた。(完)


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