千四十二 心の時間・「インドの大地に再び仏教を」を観て
平成二十九丁酉年
十月二十八日(土)
NHK教育テレビの心の時間で「インドの大地に再び仏教を」と題して佐々井秀嶺さんが出演された。若い時に父親が正妻の子ではなかったので差別された。東京に出て就職したが人間関係で退職、紆余曲折を経て二十五歳で出家。
二年間タイで修行、三十二歳でインドへ。夢で竜樹に南天竜宮城に来いと云はれ、南天竜宮を訳すとナグプールなのでその地に行ったところ宗教対立が激しかった。アンベールカルが仏教に十二年前に改宗した地と知った。その後、アンベールカルの後継者となった。
そのやうな内容だった。佐々井さんのデモ、怒る顔つきには仏教、特に上座部仏教との相違を感じたが、佐々井さんが偉大な宗教指導者であることは間違ひない。その人生に心から敬意を表したい。
NHKの制作には問題がある。高齢の佐々井さんを長時間インタビューしてもほとんど聞き取れないし、高齢だから内容も放送に不適切なところがある。出家前の話はナレーターが軽く話すべきだ。視聴者が知りたいのはインドでの活躍ぶりだ。
番組ではアンベールカルの後継者であるやうに放送したが大改宗祭の大導師に任じられたこともあるが、必ずしも後継者ではないのではないか。そのやうな疑問は持った。

十月二十八日(土)その二
番組終了後に、インターネットで佐々井さんの年表を観て、疑問が正しかったことを確認した。佐々井さんはインドでは日本山妙法寺に頼り、おそらく日本山妙法寺の僧として活動したのだらう。しかし後に日本山妙法寺と決裂。七年後にインド仏教会の代表会議の導師、受戒僧。翌年の第二回全インド仏教大会の大導師。
インドの代表的な仏教僧の一人ではあるが、決してアンベールカルの後継者ではない。この辺りをきちんと取材し放送してほしかった。また佐々井さんの宗派としての立場は何なのか。最初に出家した真言宗なのか、一時は日本山妙法寺だったのか、アンベールカルの立場を継承し在家仏教中心だが僧侶の役割を付加したのか、それともタイ修行で出家した上座部の僧なのか。これらも放送すべきだった。

十月二十九日(日)
佐々井さんの導師で出家者が続出するのは頼もしいことだ。佐々井さんのタイ留学が役立ったやうで、佐々井さんの儀式は限りなく上座部仏教に近いと思ふ。「心の時間」は宗教の時間なのだから、この辺をきちんと放送してほしい。
特定の宗派ばかりを報道したら偏向になる。各宗教各宗派を平等に扱ふことで偏向ではなくなる。あとは宗派をぼかさずに、しかしその宗派の宣伝とならないやう報道すべきだ。
「心の時間」は制作の下手な人の練習台ではない。NHKは改善すべきだ。(完)

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