95、佐久間忠夫元運転士の話

平成ニ十年
十月ニ十六日(日)(明日からハンスト)
佐久間忠夫さんは鶴見線の運転士だった。しかし人材活用センターに入れられた。草むしりをする佐久間さんの写真が報道され、大きな反響を呼んだ。国鉄闘争団1047名の最高齢77歳である。その佐久間さんが明日からハンガーストライキを行うという。しかも初めてではない。昨年12月11日(火)午後2時から「JR首切り20年・政府は責任をとれ」ハンストを78時間行った。
私が佐久間さんと初めて会ったのは2年前の「団結まつり」である。JRに採用されず解雇された人たちの争議団を応援する催しで毎年模擬店が多数出展する。一般の人も特売品や各地の特産品を食べに集まる。私も2年前に始めて「団結まつり」を知り国鉄時代の話を聞こうと出かけた。たまたま元運転士という人と話したところそれが佐久間さんだった。 今回もお話を伺った。

十月ニ十七日(月)(団結が難しい「団結祭り」)
一昨年の「団結まつり」では本部テントに主催者側の役員が背広を着て一人だけポツンと座っていた。話を伺ったら国労本部も全労協も参加していないという。「代表だけでも来てくれるといいのですがねえ」と仰っていた。
去年の「団結まつり」では本部テントに主催者側の役員が多数座っていた。しかし千葉動労の前では一昨年も会った中核派のおばちゃんが「国労本部が参加したいと言って来たが我々が断った。」と言っていた。
そして今年の「団結まつり」では千葉動労が参加を断られた。

十月ニ十八日(火)(おばさん現わる)
あの中核派のおばさんは千葉動労の出展を見ていると毎年突如として現れるのだが今年は千葉動労が参加しなかった。ところが国労留萌闘争団の前あたりで突然現れた。しかも300円のほたて貝を持っていた。

模擬店の多くは留萌、旭川、鹿児島、熊本など北海道、九州の闘争団である。話を伺うと特産品など荷物は宅配便で送り人間は現地から来る。ご苦労なことである。解雇されても22年間頑張ってきたことはもっとご苦労なことである。日本の労働運動史と鉄道史に永久に記されるであろう。

十月ニ十九日(水)(労働情報、フリーター全般労組)
上層部の対立とは無関係に、参加団体はここ三年間ほとんど変わっていない。変わったのは、一昨年は参加していた「労働情報」紙が昨年からは参加しなくなった。一昨年は臨時に参加したのかも知れない。この月刊紙は平成5年辺りまでは清水慎三氏が編集人を務めていたが、清水氏の持論が民族の独立と社会主義だったとは最近までまったく気が付かなかった。
民族という考え方自体が欧米流の発想であり、本来は必要ない。しかしアメリカの半植民地のような日本にあっては、民族の独立を掲げることは間違いではない。
もう一つは昨年フリーター全般労組が模擬店を出し、しかも開会式で主催者挨拶の次に登壇したが、今年は参加しなかった。フリーター全般労組は私もよく知っている。フリーターの救済を目指し日本社会のために貢献している。

十月三十日(木)(佐久間さん頑張る)
今日は仕事を休み子供の文化祭を見にいった。午後国会の近くを通った。佐久間さんが近くでハンストをしていることを思い出した。国会の裏側の議員会館の前で元気に頑張っていた。新社会党ののぼりがたくさん立っていた。
私は前にも書いたが、自民党の伝統派、自民党を離党した羽田派、社会党の左傾化に反対した民社党、社会党左派を保ったため全電通(現NTT)や電機労連(現電機連合)などの支持を得られず落選した国会議員のいずれも支持している。

十月三十一日(金)(労働運動と創価学会1)
労働運動には創価学会関係者が絡むことが多い。私が勤務する会社で14年前に営業のY下さんが解雇された。労組に駆け込み争議の後に解決金で円満退職した。ところが数年後に再び会社に採用された。Y下さんは「労働争議のときは解雇された国労組合員をいっしょに連れて行くといい。国労の人たちは体が大きい。」と言っていた。確かに構内作業係や保線区の人は体が大きい。
30年前に隅田川駅で小荷物のアルバイトをしたときに、有蓋貨車(ワム)の足踏みブレーキをはずし手で貨車を移動させることになった。歯車が食い込み、誰が飛び跳ねてもブレーキが解放しない。空手の有段者という人が十回以上試みやっとはずれた。大変な肉体労働であった。

その数年後にY下さんがまた退職させられた。会社側は「Y下は創価学会だ。本人が今でも会員なことは確実だ。」「辞める理由はこれこれだ。絶対に言うなよ。」と私に言った。私は今期Y下さんが駆け込んだ労組の執行委員だし、当時も「もう一度労働運動をやったほうがいい」と本人に勧めていた。日本中で最も言ってはならない人間に向かって言っているのだが、私は約束を守り誰にも言っていない。道徳は重要である。その一方で唯物論に転落した日本の経営者どもは道徳を守らず、労働者を嫌がらせ退職させたり、うつ病や退職者が続出しても私利私欲しか考えない連中が多い。経団連は日本最大の唯物論である。

十一月一日(土)(労働運動と創価学会2)
大宮の正因寺の信徒のS沢さんが「矢島秀覚さんは戦前に農民争議を指導して共産党長野県委員会の年表に名前が載っているそうだ。」と言っていた。
私も25年前に短期間だが正因寺の信徒だったことがある。創価学会は平成3年に大石寺を破門されたが、その10年前に正信会と称する宗門全体の三分の一近くの寺が同じく破門されていた。正因寺は正信会に属し、先代住職は創価学会の元理事長で後に出家した矢島秀覚であった。
正因寺から帰るときにS沢さんといっしょになった。京浜東北線の窓からは眼下に大宮貨車操車場が広がっていた。全国のすべての貨車操車場はまもなく廃止されることになっていた。操車場の向こうの全国一般埼玉地本に数年前に相談に行ったことがあった。全金と一軒の家を共同で使っていて全国一般は共産党系の「統一労組懇」の看板があり、全金はこの少し前に「全民労協」に加盟した。総評は解体寸前であった。

S沢さんはこのときは機械を販売する個人事業会社を経営していたが、前は鉄鋼労連で不和哲三氏と机を並べたこともあるという。
「鉄鋼労連は全金とはぜんぜん違いますよね。どちらも金属ですが」などと話したことを思い出す。

「労働組合は仮想でもいいから社会主義を目標にしないと、労働者の団結ができないし、組合は駄目になってしまいませんか」と私が言うと「そうかも知れないね」S沢さんは答えた。私の「労働組合仮想社会主義必要論」はこのとき生まれたのであった。

十一月ニ日(日)(労働組合仮想社会主義必要論)
労働組合は社会主義を掲げないと利己主義になる。今から20年前に私は富士通労働組合に所属していた。ひどい組合であった。毎年「発表はこの額だが実際の金額はこれこれだ。よその組合からは、富士通さんはまたウルトラCがあるのでしょう、とうらやましがられる」というような話ばかりが職場委員会で発表された。ここで喜ぶ人は利己主義者である。そんなことをしたら新聞発表された低い額に中小企業は追従するからただでさえ低い中小労働者は浮かばれない。全民労協の議長は竪山(電機労連前委員長)、電機労連の委員長は藁科(富士通労組前委員長)であった。全民労協は数年後に今の連合となった。連合の初代会長は藁科という声もあったが社会党の参議院比例代表の最上位に回った。
連合の中小組合は例外として上層部はこのような日本最悪の利己主義集団である。
隠しベアがあるといわれて喜ぶ人は利己主義の上に愚かでもある。あるとき「よその大手も隠しベアがあるのではないですか」と質問したら委員長はしどろもどろになり「う、うん、あるだろうな。だけど、富士通が一番高いと思う」と答えた。どこの組合も「俺達だけが得した」と喜んでいるのである。

十一月四日(火)(東洋の考え方では闘争団の勝ち)
地労委も中労委もJRの不当を認め救済命令を出した。争議団が正しいことは明らかである。ここでJRは行政訴訟に持ち込んだ。行政は住民より権力を持つ。あるいは政治が二者の一方に加担する。これらを防ぐために行政訴訟がある。労働者委員、使用者委員、公益委員の合議で決める命令にそういうことがあるはずがない。
裁判を最終結果とする欧米の猿真似制度をJRは悪用したといえる。
次に裁判となり、裁判所の和解案を争議団は受け入れJRは拒否した。 この時点でもJRに非がある。判決で白黒どちらかに決めるのは欧米式のデジタル思考である。最高裁の結果は3対2で中労委の敗訴であった。決して5対0ではない。東洋の考えでは3対2の判決とすべきである。
JRは旧国鉄とは別ということでJRは勝訴したのだから、旧国鉄の幹部だった人がJRにいることはおかしい。

十一月六日(木)(道徳勝利金銭小勝利)
旧国鉄が不当労働行為を行ったことは最高裁も認めている。そのため国鉄生産事業団の後継組織である鉄道運輸機構の裁判では争議団が勝訴している。しかしJRに逃げられたため金銭は極めて不十分である。
日本の三権分離は欧米の猿真似である。欧米はなぜ三権を分離したのか。そこには権力を集中させないという目的がある。日本は目的を無視し悪いところだけ真似した。赤字の張本人である国鉄上層部と行政と立法の馴れ合いである。そして責任をたらい回しにして、結局は鉄道運輸機構だけに残った。


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