六百九十二、浅草寺仏教文化講座に参加

平成二十七乙未
四月二十五日(土) 二人の東工大教授
浅草観音として有名な浅草寺が仏教文化講座を毎月開催する。仏教の社会的意義を果たすその姿勢に心から敬意を表するものである。講演者は毎回二名で今月は二名とも東工大の教授だつた。東工大は菅直人の出身校といふことで、もはやその存在すら忌み嫌はれる存在になつてしまつたが、個々の教授や卒業生は別である。
一人目は丸山茂徳氏の「二十一世紀の気候と国際社会の変動予測」で、予想に反して二酸化炭素の増加は地球温暖化に無関係といふ内容だつた。昔式に言へば反動勢力側、資本主義勢力である。二人目は上田紀行氏で仏教に関係する著書も多い。
私は一人の講演には八割賛成二割反対、もう一人は二割賛成八割反対である。といふと二人目の仏教に関係するほうに八割賛成二割反対、一人目の二酸化炭素地球温暖化無関係論のほうに二割賛成八割反対だと誰もが予想することだらう。ところが実際はその逆である。

四月二十五日(土)その二 丸山茂徳氏の講演
丸山氏はまづ今から一万年前に農業革命があり、二千年前から三千年前に都市革命があり国ができた。そして世界各地に宗教が生まれた。キリスト教は人間が神に選ばれた存在して人間中心主義、仏教はあらゆる生物は平等。産業革命以降化石燃料消費。人口増加は死亡率の低下が原因、2020年に工業最大で以後低下、2050年に人口低下。しかし日本は世界の先端を行き既に死亡率が出生率を上回つた。日本は人口4000万人で安定させ、世界の手本を。
ここまでは賛成である。次に、地球温暖化は二酸化炭素が原因ではなく水蒸気が原因、太陽の黒点が少なくなると地上に降り注ぐ宇宙線が増え水蒸気が増加、地震や噴火も増える。私は地球学者ではないからここは判らない。しかし二酸化炭素が地球温暖化の原因だらうと無からうと化石燃料の消費は停止しなくてはいけない。その主張を丸山氏から聞けなかつたのは残念だつた。
それもそのはずである。丸山氏はかなり西洋の影響を受けてしまつた。このあと丸山氏は民主主義は戦争を起さない、ヨーロッパは民主主義国だからEUを作れたがアジアやアフリカはまだ民主主義国以外があるから戦争がなくならない、将来はアジアやアフリカにもEUのようなものを作りEUのような組織どうしが連合して世界を一つにすべきだといふ。この主張には反対である。民主主義国であるイギリスやフランスが世界中を植民地にした事実を何とする。選挙の実態はマスコミの洗脳を受ける。それをどう補正するのか。
講演の最後の10分間を皆で考へる時間だとしてまづ質問を募つた。後方の席の人が、資本主義があると戦争はなくならないのでは、と質問した。よい質問である。これに対し丸山氏は、組織内にも矛盾は生じる、弁証法で解決、新たな理論が必要と話され、皆で考へるといふより丸山氏の回答だけで終つた。

今回注目すべきは仏教文化講演会の参加者に資本主義に反対する雰囲気のあることだ。参加者は老人がほとんどで、質問者の年齢は判らないが仏教の精神と資本主義とは異質である。或いは産業を興す目的で資本金を募るといふ制度自体は仏教の精神と反しないが、一旦カネを集めると利益のためだけに動き出す。そこに仏教と反対の精神が生じる。
丸山氏は人間中心主義のキリスト教と、あらゆる生物は平等とする仏教の話から始めたにも係はらず、世界を一つに統合するといふ。これでは人間中心主義による世界併合ではないか。ここでキリスト教徒が人間中心主義、仏教徒が生物平等主義といふのでは絶対にない。キリスト教の影響下で長年に亘り熟成した西洋文明と、仏教の影響下で長年に長年に亘り熟成された東洋文明の相違である。だから日本人のキリスト教徒は生物平等主義だし、西洋の仏教徒は人間中心主義である。
世界に宗教対立はない。あるのは文化対立である。安定した生活が破壊されるからである。西洋人は自分たちのやり方を押し付けてはいけないし、西洋かぶれの日本人が他のアジア国を西洋人の感覚で見下してはいけない。

四月二十五日(土)その三 上田紀行氏の講演
二番目の上田紀行氏の講演は本当にこの人は東工大の教授なのかと驚いた。話し方はうまい。といふよりテレビの出演者によく見られるように、俺は偉いんだと上から押し付けるような話し方である。話し方は下手よりうまいほうがよい。といふより人前で話すならうまくなくてはいけない。聴衆を退屈させてはいけないからである。しかしそれは話に内容があるといふ前提だ。上田氏の話は高圧的なので嫌な感じがしてゐたが途中で従兄弟に春風亭小朝がゐるといふ話が飛び出した。ここまではまだ我慢できた。次に妻がNHKのアナウンサーといふに及んで、テレビ出演者の威を借りるのはやめてもらひたいと呆れた。と同時になぜ上から押し付ける話し方をするのか理由が判つた。奥さんの影響である。
昔の学生は理工系でも哲学や政治のことも話せた。ところが今の東工大の学生を見てゐると大学入試の科目のことしか判らないといふ。今の若者について僧侶の講習会で話したところ、或る僧侶が、そうでしょそんな若者に仏教を話さなくてはならない我々は大変なんです、と質問したといふ。それについて上田氏は何言つてるのだ、僧侶や手本となる大人たちが悪いのであって若者たちではないと思つたといふ。上田氏はそのことを本人に言つたのか。本人には言はないで後になつて別の講演会で言つても駄目である。それよりそんな若者ばかりになつたのは偏差値詐欺男の出現が原因である。これを解消するには大学を一旦解散するしかない。或いは入試は廃止して入学者はくじで決めるしかない。或いは授業に付いてこれない学生を防ぐためまづ足きりして次にくじにすべきだ。それをせず単に若者が駄目になつた僧侶も駄目になつたと批判する上田氏こそ一番駄目なのではないのか。
上田氏は会場に四つ質問し皆で挙手した。まづ「仏教は好きか」といふ質問で私も手を挙げたが2/3くらいだらうか。上田氏も全員ではないことに驚いてゐた。次に日本の仏教は好きかといふ質問で私も手を挙げた。その土地、その時代にあつた仏教が一番国民の救済になる。だから特定の宗派ではなく日本の仏教全体はとにかく日本の貴重な遺産である。次の日本の寺が好きかには手を挙げなかつた。最後の日本の僧侶が好きかにも手を挙げなかつた。最後の質問に手を挙げたのは一割だつた。
スライドを使って高校生のアンケートを発表した。日本、中国、韓国、アメリカで自分が優れてゐると感じる人、価値があると感じる人などの質問で、一番多いのがアメリカ、最低は日本、中国と韓国はアメリカより少ないが日本よりははるかに多かつた。これについて上田氏はアメリカ人は子どもを誉めるときどうするなどと話したがこれは無意味である。全体が大きく相違する中で個々の違ひを論じても意味がない。また個々の違ひを修正することによりどういふ影響があるかまで検証すべきだ。次に日本は控へめに答えるがアメリカは自己の能力以上に主張するといふ違ひがある。また価値があるかと質問されても価値といふ言葉をそれほど重視しない日本では意味がない。そもそも登壇者二人のうち一人は文化枠、もう一人は仏教枠なのだからもつと仏教との係はりで論じるべきではないのか。(上田氏の著書を読んだ感想へ)

四月二十八日(火) 丸山茂徳氏の問題点
丸山氏は地球温暖化はないといふのだから極めて重大である。しかし地球温暖化があらうとなからうと二酸化炭素の排出は止めなければいけない。さう反論することができる。二番目に世界を民主主義化して統合すべきだといふのだから悪質である。もちろん世界が一つに統合できれば戦争がなくなるから大歓迎である。しかし丸山氏の主張は欧米文化で統合しようといふものだから極めて悪質である。それでもそれほど強く反対しないのは世界を統合することは不可能だからである。一番最初にキリスト教文明と仏教文明の話から始めたことの御利益であらう。御利益とはキリスト教と仏教の両方の御利益である。
丸山氏の経歴を見ると、日本勤務の合間にスタンフォード大学客員研究員、アリゾナ大学招聘研究員、ミネソタ大学招聘研究員、スタンフォード大学アラン・コックス基金招待教授を歴任し、現在はアメリカ科学振興協会フェロー。これではアメリカを中心に世界を統合しようと考へるのも無理はない。(完)


大乗仏教(禅、浄土、真言)その六
大乗仏教(禅、浄土、真言)その八

メニューへ戻る 前へ 次へ