四百五十二、朝のテレビ小説「あまちゃん」(その三、東北大地震)


平成25年
八月一日(木)「大津波」
昭和六十三年に「武田信玄」といふ大河ドラマがあつた。誰もが武田の滅亡を知つてゐるから悲しみが背後にあつた。テーマ音楽で第一旋律は長調なのになぜか短調に聞こへた。別の話だが昭和五十年辺りに谷村新司みたいな音楽家二人がラヂオで「モズが枯れ木で泣いてゐる」はメジヤーかマイナーか議論するのをたまたま聞いた。私は即座に長調だと思つた。音階を二つ下げて短調になるのが長調である。「武田信玄」のテーマ音楽も長調か短調か判らないくらい悲しみを帯びてゐた。
「あまちゃん」は最後に大津波が来る。誰が亡くなるのだらうと考へながら観るから、笑ひが余計におもしろく感じる。

八月二日(金)「砂上の楼閣」
東北大地震の日は大変だつた(東日本大震災といふ言ひ方は嘘つき政治屋の菅直人が命名した。全国は東日本大震災といふ言ひ方を拒否しよう)。
あの日は首都圏の鉄道も止まつた。仙台の親戚は連絡が取れず二日後に市内の避難所にゐることが判つた。仙台は海に多数の遺体が浮いてゐるといふテレビ放送があつたので心配した。岩手県内の親戚は内陸部なので無事だつた。
この親戚構成は東北地方に共通である。多くが首都圏に出て仙台に行く人もゐて一部が地元に残る。東北地方に限らず西日本だつて、多くが京阪と首都圏に出て、広島や岡山に行く人もゐて一部が地元に残る。昭和三十年後半から始まつたこの流れは早く変へる必要がある。それのできる政治家が、既得権をぶつ壊す政治家とともに今後は主流になることは間違ひない。
大都市は砂上の楼閣である。化石燃料の大量消費とともに一時的に現れた。芸能界も砂上の楼閣である。
「あまちゃん」の人気が東京編になつても落ちない理由は、華やかな芸能界ではなく庶民と同じ生活をする芸能界だからである。

八月三日(土)「撮影終了」
一昨日で「あまちゃん」の撮影がすべて終了したさうだ。最後に撮影したのは最終回の一つ前の、アキとユイの震災復興のビデオを撮影するところだつた。といふことはアキは亡くならないし大地震は最終回ではなく前の放送で現れる。
調べてみると岩手県で犠牲者の多かつたのは次である。
市町村犠牲者人口比
陸前高田市1,7737.61%
大槌町1,2408.12%
釜石市1,0402.63%
山田町7534.04%
宮古市5140.86%
大船渡市4201.03%

それに対し久慈市は4人、0.01%である。これまで悲しみを乗り越へて久慈の人たちは撮影に協力したと思つてゐたが、これでは他の市町村の被害を尻目に浮かれただけではないか。私の「あまちゃん」への熱意が大きく減じたことは間違ひない。しかし「じぇじぇじぇ」と「潮騒のメモリーズ」の看板は、それを覆ひ隠す効力が今でもある。
一昨日の撮影終了後に能年玲奈が「あまちゃん2」を希望した。私も犠牲者数を調べるまでは賛成だつた。今でも賛成だが、今度は舞台を大槌か陸前高田に移し南三陸鉄道との相互乗り入れお座敷列車を舞台にしたらよい。南三陸の人を主役にしてアキは南三陸鉄道に乗り入れるお座敷列車の脇役として出演するとよい。

八月三日(土)その二「GMT47は完全パクリだからおもしろい」
GMT47はAKB48の完全パクリである。意図的に読者に判らせようと数字を一つ下にしたり、秋葉原を上野にした。だから見てゐて面白い。一番面白いのはGMTの荒巻プロデユーサで、AKBの秋元総合プロデューサーに顔付きと言ひ体型と言ひそつくりである。
ところがユーモアの判らない人がゐる。GMT47はAKB48のパクリだ、もしGMT47がCDを出したらAKBから損害賠償を請求されるなど一般の人がブログに書くならまだしもマスコミまで書いた。
板倉宏日大名誉教授(刑法)は「あくまでドラマだけで許可をしているだけで、終了後にAKB48を模したグループ(GMT47)でCDデビューなどをして利益を得た場合は、著作権法に触れる可能性が考えられます。もちろん民事なら損害賠償を請求できるでしょう。100万枚を超えるAKB48のCD売り上げを考えると、リリースされるCD1枚で損害賠償額が数億円になる可能性もあるんじゃないでしょうか」と話している。


だからさうならないようにGMT47はアメ女の二軍だしメンバーもそろつてはゐない。曲も「地元へ帰ろう」である。もしCDを狙つたら「故郷へ帰ろう」など情緒のある題名にする。
逆にAKB48の六人が久慈市を訪問した。そして海女姿で「北限の海女」と書かれた白ハチマキを巻き「あまちゃん」姿をパクッた。最初はほほえましかつたが久慈市以外に犠牲者の多いことを知つた後は芸能界の軽薄さが気になる。なぜなら被災地訪問で海女の仕事を手伝つたとあつたからだ。被災地訪問なら大槌や高田に行くべきだ。同じことを考へる人が他にもゐた。Yahoo知恵袋に東日本大震災の被害にあった東北3県(岩手県、宮城県、福島県)の人にとって芸能人が訪問することの感想を誰かが質問し 三人が答へた。
(一人目)金のためならなんでもするよね。
ボランティアで行ってるとは言ってもこうやって報道されれば宣伝になるわけだから。
名前売るための行動にしか見えない。別に反感は感じないが。
アイドルグループなんかに踊らされてるオタクから吸い上げた大金を被災地に何億、何百億と寄付すれば見直されるだろうが。
秋元豚にそんな考えは微塵も無いだろう。


(二人目)へぇーってくらいの感想しかない。
ファンなら嬉しいとか、元気をもらったとかあるのかも。
自分の好きなアーティストが地元に来て地元の衣装を着て「応援してます!」って言われたらとても嬉しいと思う。


(三人目)震災後に被災地にはいろんな歌い手さんがいらしてますよ。
被災された方は喜んでいます。
だって、こんな形でないと芸能人って田舎に来ないもの。


GMT47とAKB48の関係についてNHKの訓覇圭プロデューサーは特定のアイドルグループは想定していないと述べた。同じように秋元豚といふのは家畜改良センター岩手牧場、農業食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター、岩手大学農学部が共同開発した新種の豚であらう。特定の人を想定してはいない。といふことで一人目の辛辣な回答もそのまま掲載した。グループ名は具体的に書かれてゐたが「アイドルグループ」に変へた。

八月三日(土)その三「一週間ぶりの本放送」
月曜から土曜まで放送されるなかの今週も土曜だけを観た。アキが抜けた後のGMTの人気が出るといふ予告を読んでゐたので、それでは今までの「あまちゃん」とは違ふと不満があつた。「あまちゃん」の人気が高い重要な理由を一つ忘れてゐた。アキのすることは海女、北鉄、解雇からGMT47復帰、鈴鹿ひろ美の付け人とすべて成功した。成功物語こそ人気の原動力であつた。
アキの抜けたGMTに人気が出る理由が今日の放送で判つた。アキのゐないGMTは売れないと水口が社長の荒巻に反抗したため、荒巻が1万枚、いや10万枚売つてみせると怒つた。それなら判る。荒巻の力ならそれが可能だからだ。今日の面白場面は、録音係が大掛かりなマイクで二人のやり取りを追つた。このような場面が毎日あるから視聴者は退屈しない。

八月四日(日)「いわて銀河プラザ」
昨日は「いわて銀河プラザ」に行つた。といつてもわざわざ行つた訳ではない。歌舞伎座でエレベータを待つときガラス越しに「いわて銀河プラザ」といふ看板が見えた。ビルにはNANKAIとも書かれてゐる。いわて銀河鉄道は南海電鉄の資本が入つてゐるのかなあなどと考えた。
歌舞伎座を出たあとビルに行つてみて判つた。南海東京ビルの一階に「いわて銀河プラザ」が入居してゐた。入つてみると岩手県の物産を多数販売してゐた。久慈のまめぶもあり、入荷しました一人三袋まで、と書かれてゐた。NHKの制作した「あまちゃん」のポスターが貼つてあつた。全国版と岩手版の二種類があり、写真と文章が少し違ふ。ここに貼られたのは岩手版である。
種市のうにも販売してゐた。八月十日までださうだ。種市は2005年に誰かがYahooに質問し、その回答は
漁業しか無い町。久慈に行くにも、八戸に行くにも、鉄道やバスはあるが、車は必須。岩手県でも生活圏は青森県八戸市。典型的な過疎地。夏は「やませ」が吹き、暖房が必要な日もある。ウニ漁が盛ん。

とある。2006年に合併して広野町になつた。東北大地震で被害者はゐなかつたが、漁業施設に被害を受けたさうだ。

八月四日(日)その二「『あまちゃん』のモデル」
今から四年前に「あまちゃん」のモデルがゐた。全国から「かわいすぎる海女」と呼ばれた二人である。インターネツトで調べると
平成二十一年最高齢海女の孫娘が高校卒業後に久慈市漁業協同組合小袖支所「小袖北限の海女の会」に同級生とともに入会した。一人は常勤、もう一人は会社が休みの日だけ働いた。
NHK盛岡放送局が取材し全国に放送され「かわいすぎる海女」と呼ばれるようになつた。9月末で海女のシーズンが終わると、一人は久慈市の臨時職員となり各地で観光PRや物産展に海女姿で参加した。JR東日本「八戸線全通80周年号」で二人は一日車掌を務めた。
平成22年7月「小袖海女の会」を退会した。退会の理由は一か月に27日働いて給料が7万程度だったことと、先輩海女と意見が対立したことだつた。

農村や漁村では近所付き合ひのわずらはしさを連想する人がゐる。農村や漁村は共同作業だから都会の住宅地とは異なる。東京でも商店街では大晦日に自分の店の手ぬぐいを近所に配つて歩くなどした。「あまちゃん」に登場した谷中あかぢ坂を下つたところの藍染大通り商店街の話である。これは商店街は共同作業といふ意識の現れである。会社だつて共同作業だからわずらはしさはある。しかし時の経過とともに組織は堕落する。その対策も必要である。農村や漁村でわずらわしさがあるのなら、それを改善すべきだ。さうすれば海女が脱会することはなかつたかも知れない。


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