二千五百四十三(うた)南伝仏法と良寛和尚から、初期仏法を探す
甲辰(西洋発狂人歴2024)年
十一月七日(木)
南伝仏法と達磨大師から、初期仏法を探すことができるのではないかと、前に書いたことがあった。しかし達磨大師の教へを探すのは困難である。そこでまづ、達磨大師の代はりに、良寛和尚を用ゐることにした。
南伝仏法には、僧団とパーリ経典が今に続く。良寛和尚には、良寛詩と、修行時代に所属した曹洞宗がある。南伝僧団一番の特長は、戒律である。曹洞宗一番の特徴は形式である。僧堂に入るには右足からだとか、手は叉手(しゃしゅ、お腹の位置で両手を合はせる)だとか。
二番目の特長は、どちらの僧団も儀式の形式がある。日本人が南伝の瞑想寺院で一時出家したときに、儀式を軽視しうまく行かないのではないか。儀式は心の安定剤でもある。
戒律を軽視するのが日本の仏法で、鑑真和尚を招いても、それは変はらなかった。戒律を軽視しても、戒律の精神は重視すると云ふ伝教の理想主義は、僧兵を見れば破綻したことは明らかだ。比叡山以外でも、明治維新後の妻帯を見れば、破綻したことは明らかだ。
良寛和尚は妻帯をしなかったから、戒律を守ったことは確実だ。酒は飲んだが、日本の仏法は般若湯と称して酒を飲むことが違反ではなかった。般若とは智慧のことで、智慧のお湯である。
お釈迦様生きた時代の教へとは 複雑化及び神格化変化の前を探す旅立ち

反歌  ダンマパダ偈は釈尊の言葉にて因縁話両方混ざる

十一月九日(土)
良寛和尚の詩に、衆生が覚るなら仏陀は経を残さなかった、とある。また、覚る人は経の中身を読むが、覚らない人は文面に固執する、ともある。不立文字と、実際に経が存在することの矛盾を、よく解決した。
経があるだが文字立てず矛盾には 良寛和尚もろこしの詩で解決坐禅の意義も

反歌  法華讃その存在の意義までももろこしの詩読めば解決

十一月十日(日)
戒律について曹洞宗の智源寺専門僧堂堂長、高橋信善さんの講演をインターネットで見つけた。それによると
「戒」と申しましても南伝佛教の方では比丘二百五十戒、比丘尼三百四十八戒(五百戒)とも言いますし、中国あるいは台湾では現在も比丘二百五十戒、比丘尼三百四十八戒が基本になっていると思います。
現況は知りませんが、古くは日本でも南都奈良の律宗系の佛教各派では比丘二百五十戒、比丘尼三百四十八戒が行われておりました。特に鑑真和上は(中略)日本に生きた戒律を伝え、東大寺に初めて戒壇を設置して、聖武上皇などに授戒し、唐招提寺を創建したことで有名であると思います。
しかし後代日本では、天台宗の最澄に到って、「圓頓戒」(「梵網経」の十重禁戒四十八軽戒を法華一乗の円理によって開顕したものと言われる)を創唱し、日本での大乗戒の先駆けとなりました。

そして道元和尚は
高祖様は二百五十戒を受けておられたとの説もあります。
ある方は、
・・・六祖大師は五祖大師から菩薩戒をさずけられ、二百五十戒はさずかつておられぬ。
高祖みずからは、南都で二百五十戒を受けておられる。その戒牒はいま国宝になっている。御自分ではそのように沙弥戒、菩薩戒のほかに、二百五十戒をおうけになっているにもかかわらず、二百五十戒はおさずけにならない。それにはふかい思召しがあるであろう。・・・

と云ふ事は、良寛和尚は沙弥戒、菩薩戒を受けて、二百五十戒は受けなかった。しかし渡航説が正しければ、清国で二百五十戒を受けた可能性は高い。
次に
馬祖道一禅師の弟子の興善惟寛いかん禅師は「景徳伝灯録」の中で
「無上菩提は、身に被らしむるを律といい、口に説くを法といい、心に行ずるを禅という。応用は三なれども、其の致むねは一なり。・・・律は即ち是れ法にして、法は禅を離れず、云何が中に於いて妄りに分別を起さんや。」
とあります。
明確に律(戒)と法と禅とは本来一つのものであると断定してあります。

日本を除き、大乗仏法は戒律を軽視してはゐなかった。道元和尚も戒律を軽視はしなかった。
戒律は鑑真和尚何回も難破ののちに来日し 命を掛けた戒律は国の宝に仏の宝

反歌  沈没に光失ふ困難を超えて日本へ戒律を持ち(終)

追記十一月十一日(月)
中村元監修、阿部慈園「原典で読む原始仏教の世界」で、達磨大師や良寛和尚が戒律軽視の問題は、頭陀行で解決できることが分かった。頭陀はdhūtaの音訳で、杜多とも書く。仏陀の修行時代は頭陀行だったが、定住生活を始めると戒律で規制するやうになった。しかしマハーカッサパ(大迦葉、摩訶迦葉)やデーヴァダッタは頭陀を継承した。達磨大師や良寛和尚の行ったことは、まさに頭陀行であった。マハーカッサパは禅宗の第二祖である。

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