二千三百三(うた)NHK短歌、万智さんが選者
甲辰(西洋未開人歴2024)年
四月十四日(日)
本日のNHK短歌は、万智さんが選者なので楽しく観た。ゲストも佳く、すると司会も輝くから不思議だ。万智さんが選歌した
転居先 不明の赤い スタンプが 受け取りたかった 返事だたぶん

最初に見たときは、「たぶん」に引っ掛かるが全体は悪くない。ところが全体(最後のリレーを除く)を見終はった後に、二回目にこの歌を見ると「受け取りたかった 返事」とは、受け取りたかったと云ふ返事ではないかと、別の解釈になった。万智さんは、受け取らない返事と解釈し、小生の一回目も万智さんと同じだ。そこをはっきりさせるには
転居先 不明の赤い スタンプが 受け取りたいか どうかの返事

小生の歌観で更に直せば
転居先不明の赤き局の印受け取りたいか否かを示す

本の歌とは無関係な小生の歌観で、「赤き局」「受け取りたきか」と「き」を二つ重ねてはいけないので、後ろは音便を解消しなかった。 次の
便箋の 最終行の 渋滞は 君に会いたい 気持ちの密度

これは上手い。万智さんは転居先不明を一席にしたが、小生はこの歌を推す。万智さんは「密度」を避けたのかな。
飛行船の ごとき円で 「欠席」を 囲み二人の 未来を祈る

「ごとき円で」が字足らずだ。一句目は「う」があるので字余りではない。それより問題なのは、一句目と二句目を足せば十二音で過不足無いと、後の歌でも出てくるが、万智さんは考へる節がある。今回一句目は字余りではないが、一句目の字余りを二句目の字足らずで過不足なしと考へるなら、それは一つだけに比べ二倍に悪い。
飛行船 ごときの円で 欠席を 囲み二人の 未来を祈る

では駄目なのか。少しの修正で直る破調は放置すべきではない。
「家を売る ことにしました!」 父のその 文面の軽さが 重すぎる

万智さんは三席。まづ、記号を歌に入れるべきではない。次に、四句目と五句目で過不足無しとはならない。修正すれば
家を売る ことにしました 文面の 軽さに父の 筆が重すぎる

五句目は「お」があるので破調ではないが、それを直せば
家を売る ことにしました 文面の 軽さに父の 気が重すぎる

次に二席の
達筆を 誇りし友の 賀状の「賀」 杖つくごとく傾ぐ今年は

これは同感。記号を除いて。
以上いろいろ書いたが、万智さんは悪くない。修正せずに選ぶとなると、かう云ふ選歌しかできないだらう。現状の歌界が悪いし、修正せず選ばせる某N局が悪い。選歌だけなら、新聞雑誌ほかにも機会は多い。かう云ふ修正も一案だと、歌観を変へず修正することで番組の特長を出せばよいのでは。
初めては力を入れて番組が輝く次はどうなるか 万智さんならば続くを期待

反歌  一回目輝く人が回数を重ねたときに真価を示す(終)

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