百七十二、左右崩れは犬も食はない

平成二十三年
五月二十四日(火)「五五年体制」
昭和三十年に社会党が再統一した。それに刺激されて自由党と日本民主党まで合併して自民党が誕生した。このときから社会党の佐々木委員長が辞任した昭和四二年あたりまでが左右対立の時代といへる。つまりこの時代はすべての政治家が左右のどちらかに属してゐた。しかしその後のソ連崩壊により左右崩れの政治家を大量に生んだ。
その前に、政治姿勢を左右に分けること自体が日本に合わなかつた。例へば大塩平八郎は左右のどちらかと聞かれても返答に困る。吉田松陰や西郷隆盛を左右のどちらかに分類するのは無理がある。
しかしまず左右に分類し、次に左右が崩れた結果困つた人たちが出てきた。別名を拝米新自由主義者といふ。

五月二十六日(木)「右翼崩れ」
かつての自民党は農村と商工業者を基盤とした地道な政党であつた。例へば東京特別区の自民党の区議会議員が引退後に自宅を寄付し区立児童公園になつたりもした。地域の模範国民であつた。しかし社会党の堕落とともに自民党も堕落した。まず財界との癒着である。財界とは何か。地道な商工業者とは別の日本の癌細胞である。国民のことを考へない。
戦後に文化不連続となつたことも大きい。その結果平成元年あたりからアメリカの属領化を進める連中が出現した。それが新自由主義、グローバリズムとなつた。

五月二十七日(金)「国売り新聞」
右翼崩れの代表は読売新聞である。その内容は拝米の
国売り新聞である。米ソの対立に巻き込まれた。アメリカ大使館員といふ肩書きのCIA工作員や官邸機密費に取り込まれたのであろう。ソ連は崩壊し米ソ対立は終結したのだから読売新聞は工作前に戻りCIAもアメリカに引き上げればよいのに既得権者たちは権益を守ろうとする。
そして日本を不安定な社会に導いた。

五月二十八日(土)「アメリカ軍の保護下の平和は偽善だ」
左翼崩れは平和を叫ぶ。無論平和は尊い。平和を守るには国連機能の拡充が必要だが今の国連は欧米に偏りすぎてゐる。しかも西洋文明の影響下にある。だから地域ごとに組織を作るべきだ。アジアはASEAN+3、インド文化圏、アラブ文化圏の三つがちょうどよい。もちろん全体を統合してもよい。
平和を叫ぶにはそこまで主張しなくてはいけない。ところが左翼崩れは平和だけを叫ぶ。それではかつて社会党左派が批判したようにアメリカ軍の存在下の平和である。アメリカによる文化破壊といふ世界侵略に手を貸すことになる。

五月二十九日(日)「民主党は左翼崩れ体質で国民から見放される」
民主党で心配なのは左翼崩れ体質である。一部のマスコミが民主党のことを左翼体質だと書いたがこれは正しくない。左翼崩れ体質である。左翼崩れとは自由と民主主義を声高に叫ぶことだ。規制の多い社会で自由を叫ぶことは尊い。独裁下で民主主義を叫ぶことも尊い。ところが彼らは規制も独裁もない社会でこれらを叫ぶ。そして新自由主義に陥る。
計画停電のときの石原都知事と蓮航節電啓発担当相の論争を見るとそのことがよく判る。(「百六十二、菅直人と蓮舫は現代の非国民だ」へ)
石原氏は地震当日にJR東日本が駅のシヤツターを閉めたことについて一昨日に抗議文を出した。国民のために実に役立つてゐる。一方の蓮航氏は規制は最小限にすべきだ、夜間は電力が余つてゐる、と見当違ひのことを繰り返した。

五月三十一日(火)「左翼の二つの側面」
アジアの社会主義者は欧州にならつたために協同主義と唯物論の二面を持つ。しかし唯物論は当時の欧州で流行つたためにマルクスも採用したに過ぎない。あるいはフランス革命が堕落した王政に比べれば正義に見へたのであろう。
アジアでは民族解放戦線で唯物論を克服した。しかしソ連の崩壊や毛沢東の失敗を目の当たりにして日本の左翼は協同主義を捨てて唯物論は保つた。そしてアメリカ民主党といふ世界最悪の新自由主義を採り入れた。これが左翼崩れであり、管直人とその取り巻きの正体は左翼崩れである。

六月一日(水)「左翼崩れはなぜ唯物論を引き継ぐか」
人間は堕落する動物である。重力といふ一項を加へることで物理学が大きく進んだように堕落といふ一項を加へることにより社会科学は大きく進歩する、と前に述べたことがある。百十七、動的社会科学のすすめ(資本主義以前、資本主義、社会主義を超えるには)
古いものより新しいもののほうが堕落が少ないから左翼崩れの人たちはともすれば新しいものに飛びつく。しかし新しいものもおそらく一年で堕落する。そして新しいものは不確実性が高い。平衡に達するのに時間が掛かる。その間に弱者が被害を受ける。そこまで考へるべきだ。

六月五日(日)「弱者が被害」
労働者派遣法を考へてみよう。あの法律は総評が解体寸前のときに成立した。大企業労組は隠しベアを乱発させ、もはや総評も同盟も中立労連も腐敗の限界に達してゐた。電機労連(現、電機連合)が解体寸前の社会党に圧力をかけて成立させたと言はれてゐる
派遣労働者と派遣先の労働者は同じ仕事をしても賃金に格差がある。それだけではなく仕事が減つたときにクビを切られる。
左翼崩れの偽善者は「登録型ではなく常時雇用型にすべきだ」と主張する。しかし企業が派遣料を収入とする以上、派遣料で労働者が評価される。派遣業は料金表を作るべきだがほとんどのソフトウエア会社はそれさへ作つてゐない。形式的にあわてて作つたとしても本当の金額は営業と顧客が交渉で決めるから無意味である。
つまり労働者の責任ではないところで決めた金額で労働者が評価される。それだけではない。景気が悪くなると元請けは自社の従業員を優先させ派遣労働者は仕事がなくなる。所属会社に戻つたあとは嫌がらせ退職が横行する。
派遣が平衡に達するにはあと十年はかかろう。その間に弱者が犠牲になり続ける。

六月七日(火)「化石燃料と原子力による砂上の繁栄」
堕落といふ一項を加へることにより新しいものは不確実性が高いだけだといふことがわかつた。しかし近年はエネルギーの浪費により新しいことが繁栄すると錯覚をもたらした。もう一つの修正項である。
しかし地球温暖化と福島原発で繁栄は砂上の楼閣であることが明らかになつた。 人類は化石燃料の消費と原子力を停止し、それでも人類が幸福を感じる社会を構築すべきである。

六月八日(水)「安田講堂に最も近い東京大学教授の話」
左右崩れの人たちは民主主義といふ言葉に騙されてゐる。徳川幕府のような独裁政治のときは民主主義を主張すべきだ。しかし日本に幕府があるか。ないのに民主主義を主張すると民主主義の堕落を加速する。
それより民主主義が価値感だと言ふなら国内企業に民主主義を要求すべきだ。企業のなかには独裁のところも多いが、民主主義を叫ぶ人はそのような企業にさぞ不快感を感じるだろうと思ふとそうではない。これで民主主義に価値感を持つといふ連中の欺瞞が明らかになつた。
独裁の会社がどんなにひどいか例を挙げよう。私は今の会社に入り十八年になる。その前は労働運動に係わつたが今の会社では労働運動は一切しなかつた。ところが昔のことを誰かが密告したのだろう。私を辞めさせようとさかんにするようになつた。そんなときに安田さんと言ふ私より十歳近く年上の女性が中途入社し採用担当となつた。私は新人教育を担当してゐたのでいつしよに活動することも多かつた。安田さんのお父さんは安田善次郎が安田財閥の宗家を補佐するために制定した幾つかの分家の当主でしかも東京大学教授だつた。このときは既に故人だつた。
国会図書館で安田教授の雑誌投稿を見つけたのでコピーして安田さんに渡したところ、初めて見たと喜んで仏前に供へたそうだ。その二週間ほど後に安田さんが自分の職務が危いと狼狽し数日後に心臓麻痺で急死した。
安田家に弔問に訪れたところ安田さんのお母さんから「まさか会社が原因ではないですよね」と聞かれ、私は安田教授の奥さんに憎しみを与へては故安田教授も草葉の陰で心配だろうと考へ「いや、それはないと思ひます」とだけ答へた。

六月九日(木)「企業を民主化すれば社会主義の半分は達成する」
民間にはこれと似た悲劇が多発する。二十年前に勤めたコンピュータ専門学校でもまず理事長が脱税で摘発されて新聞に載り、その五年後には専門学校の倒産といふことで今度も新聞に載つた。準学校法人の基本財産を設立直後に抵当に入れたことを東京都の学事課も把握してゐたとも書かれた。
民間はこのようなことが起きやすい。そうならないためにまず個人事業と企業を住み分けるべきだ。個人事業は雇用を五人以下に制限し、一方の企業は株式の所有は一人三十%以下に抑へ株主総会と取締役会を厳密化する。これだけで社会主義の半分は達成したも同然である。あとは失業対策だけである。
資本主義といふ異質の経済体制にあつて、左右崩れの人たちは自由を叫ぶが、国民を切り捨ててゐる。だから法人税減税消費税増税などと筋違ひなことを叫ぶ。

六月十日(金)「アメリカの真似をしてはいけない」
アメリカは平衡に達してゐない。だから大富豪と貧困者が共存する。いや共存はしてゐない。土地を住み分けてゐる。長い歴史を経て平衡に達してゐる世界各国はアメリカの真似をしてはいけない。(完)

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