一五二、菅直人の問題点

平成二十三年
一月五日(水)「国民とは異なつた感覚」
菅直人の問題点は国民とは異なつた感覚を持つてゐることだ。庶民の生活がわかつてゐない。法人税は上げた。他の改革もやつた。それでも足りないから消費税も含めて税制の議論をするといふのならわかる。菅直人はそうではない。法人税は下げます、消費税は自民党案を参考に十%にしますといふものだ。そのため参議院選挙で大敗したにも係わらずまた同じことを言ひ始めた。
鳩山政権が誕生したのは「国民の生活が第一」を前面に掲げたからであつたが、菅直人のやつてゐることは「財界と官僚が第一」「首相の地位が第一」である。

国民の生活は苦しい。中学校のPTAなどでは以前から制服のリサイクルといふことを行つてきた。制服を買へない家庭は卒業生の不要になつた制服を再利用しようといふものである。ところが昨年あたりからリサイクルも集まらないといふ。知人どうしでリサイクルしてしまふ為である。なぜ菅直人といふ国民とは感覚が大きく懸け離れた男が出てきたのだろうか。

一月九日(日)「記者会見テレビ中継」
管直人の一月四日の記者会見は問題点だらけだ。
まづ、日本はアジアの国々から兄弟の国として手本とされてきた。今後は弟からエネルギーをもらふ。そのためAPECだ。そのようなことを言つた。日本は西洋化が行き過ぎて戦前は侵略戦争を起こし、戦後は経済摩擦を引き起こした。そして国内の人心も荒廃した。それなのに西洋化はよいことだとアジア各国も思つてゐるといふ勘違ひと、日本は兄で他のアジアは弟だといふその思ひ上がりをまず指摘しなくてはならない。
次に、それがなぜAPECと結びつくのか。APECはアジアだけではない。アメリカ、カナダ、ニュージーランド、中南米を含んでゐる。APECは国内の弱い産業を苦境に陥れ、強い産業は利益を更に増大させる。日本では変形終身雇用制と下請け構造と天下の大悪法である労働者派遣法のため強い産業の利益が国内に還元しない。

一月十日(月)「菅直人の本心現れる」
菅直人は次に硫黄島の遺骨が放置されて来たので収集すると言つた。放置したのは歴代自民党政権である。自民党を批判するよい機会ではないか。なぜ自民党を批判しないのか。ここに菅直人の本心が現れてゐる。自民党と組んで首相の地位にしがみつきたい。国民の生活なんかどうでもよい。「首相の地位が第一」なのである。
菅直人はもともと反米だつた。反権力だつた。反官僚だつた。それが首相になつたとたん豹変した。

一月十一日(火)「第二のロッキード事件」
菅直人は次に政治とカネを取り上げ田中角栄を例に出した。あの当時はロッキード事件を巡って日本中が揺れた。野党第一党だつた社会党には政権を担ふ力はなかつた。つまりあのときは長期に亘つた自民党政権を倒せるかどうかの騒ぎであつた。だからすぐに椎名副総裁が三木首相のことを「はしゃぎすぎ」と批判し、意地悪爺さんの役割を演じた。
今はどうか。長期自民党政権は鳩山政権の誕生と共になくなつた。あるとすればせつかく与野党が交代したのに、自民党と組んで長期政権を目論む根性の卑しい男がゐることだ。
ロッキード事件はアメリカの陰謀が疑われてゐる。昨年アメリカは譲歩しなければ鳩山政権が倒れることを見抜き実行した。菅直人はそれを見てさつそくそれまでの反米を捨てて仙石、前原など拝米新自由主義勢力と組んだ。今回の菅の変節こそ第二のロッキード事件と呼ぶにふさわしい。

一月十二日(水)「二重構造」
菅は次に痛みをわかち合つていただくためにと言つた。だつたらなぜ法人税を下げるのか。企業経営の大変なことは黒字にすることだ。莫大な黒字を上げてゐるところは製造業のように下請けや派遣を使うか、マスコミのように競争がないか、あとは新規参入を阻むか悪質な経営をするか国の保護下にあるところである。
それ以外の純民間ではボーナスをカットして何とか黒字にしてゐる。国庫の歳入が不足してゐるなら官僚の一時金をカットしてみろ。厖大な利益を上げる業界の法人税を上げてみろ。
二重構造を解消することなく消費税は絶対に上げさせない。国民は強い決意を持とう。悪徳マスコミに騙されてはいけない。

一月十三日(木)「菅直人の人生の目標」
菅は次に野党にはご協力をいただきたいと述べた。与党が二つに割れてゐるのに与党内に協力を頼まず野党に頼むといふこの異常な感覚には呆れる。菅直人の人生の目標は首相になることだつた。だから野党時代は反権力のふりをした。そして首相になるや拝米派と組み、官僚の言ひなりになり、自民党とも組もうとした。せつかくの民主党政権を自民党時代に戻そうとした。菅は議会政治の敵である。

一月十五日(土)「菅直人こそ『政治とカネ』の権化」
菅は党大会で『政治とカネ』の問題にケジメをつける年にしたいと述べた。政治は国民のためにある。私利私欲や上昇志向で政治家を目指す輩がゐるとすればそれこそ『政治とカネ』である。名誉はカネで買える。だから名誉欲と金銭欲は等価である。
民主党の仙谷前原グループはスタンドプレーが多く上昇志向が異常に強い。菅もスタンドプレーが多く上昇志向が異常に強い。こういふ連中こそ議員の歳費や名誉に群がる連中でまさに『政治とカネ』である。

『政治とカネ』は『政財官の癒着』、『拝米派の台頭』と並び自民党長期政権の弊害である。菅はなぜ今までの自民党政権を非難しないのか。それどころか民主党政権交代を骨抜きにした。菅こそ『政治とカネ』の権化と言つても過言ではない。

一月十六日(日)「自民党と公明党を支持」
自民党の山本参院政審会長が今回の内閣改造で入閣した与謝野氏について「個人的には最初から問責を出したい閣僚だ。委員会のたびに立ち往生すると思ふ」と批判した。同感である。与謝野氏は「民主党政権では日本経済は崩壊する」といふ本を書き、しかも自民党の比例代表で当選してゐる。自民党の石原伸晃幹事長と公明党の高木陽介幹事長代理も与謝野氏は議員を辞職すべきだと発言した。これも同感である。 私は最近、旧社会党左派寄りの発言が多いが、これは自民党と民主党菅仙谷前原枝野派が国の独立と国民の生活といふ本来の保守の政策を掲げないで新自由主義化したためである。
また私はこれまで選挙ではそのときの各候補の主張に応じて、社会、公明、民社、共産、新生、日本新、新進、自由、自民、日本新党などに投票してきた。自民党は長期政権だつたから国政では投票しなかつたが地方では投票した。
だから今回の自民党と公明党の発言は全面的に賛成である。地位やカネのために変節する者は醜い。菅直人がなぜ嫌はれるのか今回の騒ぎで判つた。菅は首相に就任するときに国民を財界と官僚とアメリカに売つた。変節漢である。変節漢直人と改名したほうがよい。変説菅でもよい。

一月十七日(月)「欺瞞だらけの消費税騒ぎ」
小渕恵三が首相になつて以来国債残高が急増してゐる。その前の橋本龍太郎の時代にも萌芽は見られるがこれは短期である。国債問題を論じるときに管直人はなぜ歴代政権を批判しないのか。特に小渕恵三の「世界一の借金王」といふ発言は許し難い。この発言を根拠に小渕恵三の遺産相続者に相続分の拠出を求めたらどうか。実際に拠出させるかどうかは別にして、それ位のことは言ふべきだ。
管直人の腹の中は見抜かれてゐる。野党と組んで長期政権を目指したいだけだ。皆が判つてゐるから野党は乗つてはこない。乗つたのは大臣病の男一人だけだつた。たちあがれ日本の平沼代表は与謝野について「よほど大臣になりたかつたのだろう。(入閣で)官邸に向かふ時の顔はにやけ、嬉しさ一杯だつた。」と批判した。
消費税を社会保障の目的税といふのは欺瞞だ。社会保障は政府の義務である。一般会計から支出すべきだ。

一月十八日(火)「新自由主義新聞と一体の菅直人」
鳩山前首相が今回の菅直人の改造内閣について「挙党態勢と言ひながら4人だけでやるなら、どうぞやつて下さいという気持ちになる」と強く批判した。四人とは菅、岡田、仙谷、枝野である。だいたい枝野は参議院選で敗北した責任を取り幹事長を更迭された。何でこんなすぐに返り咲くのか。この四人を見てゐると新自由主義といふ言葉がぴつたりである。

新自由主義を象徴する記事が朝日新聞に載つた。経済産業相の海江田万里が法人税の5%の引き下げでは足りず「さらなる引き下げが必要」と語つた。
更にシンガポールと会談した際に「日本が引き下げたと言つてはみたものの、向ふは十七%で少し気恥かしい思ひになつた。米国も下げるようだし、きちつと日本の企業が競争に残つてゐくための後押しも必要だ」と述べた。
外国を例に国内の政策を誘導しようとする者は偏向した者である。それは外国の都合のよい所だけを用ひるからである。シンガポールや香港を例にする者は更に偏向してゐる。どちらも都市国家で同じ文化圏が隣接してゐる。海江田が大臣をしてゐるとは日本も世界に対し気恥かしい。だいたいアメリカは引き下げの議論を始めようとしているだけで決まつた訳ではない。例へば「海江田は今年死ぬかも知れない」といふのと「海江田は今年死ぬようだ」といふのは意味が違ふ。前者はもしかすると当るかも知れないが後者は間違つてゐる。両者を混同したのが海江田である。

朝日新聞は海江田発言に続けて「海外の実効税率はG20の国々では、韓国が約24%、中国が25%、英国は28%、ドイツは約29%と低い。」と書いてゐる。
日本では派遣、偽装請負、下請けのせいで企業の利益が国民に還元しない。しかも新聞社など独占産業は景気がよくなろうが悪くなろうが利益を上げてゐる。海外の真似をするならこれらをまず改善すべきだ。朝日新聞が新自由主義なことは前に触れたが、この記事で確実となつた。

一月十九日(水)「海外流出を防ぐには経団連の解体と労組に失業者を加入させる」
企業の海外流出を防ぐために法人税を下げろといふ人がゐる。これは欺瞞である。企業が海外に流出するのは赤字を防ぐためである。黒字を拡大するためではない。その原因はプラザ合意による円高である。
円高を防ぐには経団連を解体することだ。経団連は地球が滅びるかどうかといふのに二酸化炭素排出にも反対してゐる。そして人減らしと海外進出を進めた。経団連は日本の癌である。
日本の労働組合は失業者を加入させないから失業者対策ができない。失業者を加入させるべきだ。つまり企業別組合は解体すべきだ。これで円高と失業が解決する。

一月二十日(木)「菅直人が退陣した後」
菅直人は自民党長期政権時代より悪い。鳩山政権が誕生したときのことを思ひ出してみよう。官僚や財界は慌てた。菅はどうか。官僚と財界の言ひなりである。民主党と自民党が同じ事を言つては戦前と同じになる。
菅直人の後を考えると、自民党内の拝米派と民主党内の新自由主義で新党を作らせるべきだ。あるいは自民党内の農村派と文化保守派で再編すべきだ。これで日本の政党は保守、新自由主義、国民の三党鼎立となる。日本には二党対立は合わない。といつて三党が直線に並んでもうまく行かない。三党が三角形を構成すべきだ。(完)


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