八百二十三 水谷修氏「夜回り先生、いのちの授業」(築地本願寺仏教文化講座)
平成二十八年丙申
三月二十七日(日)
築地本願寺に到着
昨日は築地本願寺仏教文化講座水谷修氏「夜回り先生、いのちの授業」を聴きに参拝した。築地本願寺の敷地内右側でフードフェスティバルが行はれてゐた。築地本願寺の主催ではなく、境内を貸しただけだと思ふ。境内で飲み食ひをすると、地面にこぼしたり食べかすが散乱するから好きではない。しかし銀色の小さな丸テーブルを囲んでお皿とアルコール飲料を楽しさうに飲食する人たちを見て、お寺に親近感を持つてもらふため、このような活動も良いことだと心を持ち直した。だいたい私からして会場でビールでも飲んでから講演を聴かうかと考へたくらいだつた。実際には飲まなかつたが。左側では芸能人三人による雑談(トークショー?)が行われてゐた。ここにも丸テーブルがあり、飲食する人もゐた。
三月二十七日(日)その二
水谷修氏が善い人だとすぐに判つた理由
今回は中央のパイプ椅子部分の前から15列目あたりに座つた。左側の正規の椅子の内側半分にロープが張つてあつたためだ。右側を見る方法もあるが、かなりの人が本堂最後尾に設置されたお賽銭箱の前に並び、礼拝する前を横切るといふ失礼なことはできない。
講演が始まり、まづ真宗宗歌の合唱。歌はない、或いは周囲に聞こえない小声の人の多いなかで、私は半径2m以内で最も大きな声で歌つた。模範門徒と映つたことであらう。
水谷修氏は登場するやまづ正坐して御本尊にきちんと礼拝された。今まですべての登壇者は一礼するだけだつた。これだけで水谷氏は偽善者ではなく立派な教育者だとよく判る。講演が始まつて最初の三分間でも、水谷氏は立派な人だと会場のすべての人が思つたはずだ。話は人格を表すといふ好例だつた。
三月二十七日(日)その三
講演内容
講演は次の内容だつた。聴いたときのメモに加筆すると
・皆さんと私(水谷氏)は生きる世界が違ふ。皆さんは昼間、私は夜の世界で生きる。25年前までは昼間の高校教師だつた。
・美しいものを見つける。朝起きて今までに花、鳥の声など美しいものを見つけましたか。
・昔は定時制は暴力団員養成所と呼ばれた。授業を始めようとすると、机の上に脚、花札をする生徒、シンナー、麻薬。今は違ふ。少子化でさういふ生徒の行く昼間校がある。今の定時制は海外から日本に来た家族、本当に昼間働く生徒。
・言葉ではなく行動で。不登校のときは家まで行つて夜中に授業をした。何日か続けると、来ないでくれ学校に行くよ、と云ひだす
・いいんだよ。過去を悔いた生徒には、過去のことはいいんだよと云ふ。
・1991年秋までは、真面目に働けば国、社会が報ひてくれた。バブル崩壊後は職場でいじめられ、それを持ち帰るので子供に影響。学校でいじめが発生。
・9割の子が学校、家庭で否定的言葉に遭遇。人の心はもろい。7%は強く夜の世界へ。
・いじめは親に原因。先人は10誉めて1叱ると云つた。今は10叱つて1誉める。
・いじめられる子の見抜き方。最初の授業は全員外に並ばせて一人づつ握手し目を見つめる。目を見れない子はいじめられる。あと公園で大きな声を出させる。できない子もいじめられる。さういふ子は近くに置いて作業を手伝はせ、少しづつ信頼関係を築く。
・心身が分離するのは日米英独の先進国だけで病んだ社会。アフリカでは朝から晩まで体を動かすから分離しない。体も疲れさせればよい。
・(水谷氏は)癌の手術5回。もうすぐ6回目をやる。
・日本はもうすぐ仕事が増へる(或いは日本が駄目になるだつたか、記憶があいまい)。病む若者の比率が10年で激増。
・心が病むと救ひを求める。
・包丁を三歳の子に渡さないのと同じで、携帯電話を子に与へてはいけない。あんな危険なものはない。
・人間は昼行性。夜は心が不安定になる。
・国内で1200万人が心を病む。治す方法を安倍首相に教へたい。午後9時に電気を止めればよい。
・リストカットは止めてはいけない。生きようとしてやつてゐる。
・臨床心理士は解体すべき。河合隼雄が文系に臨床心理士を作つたのは間違ひ。論理的な人はよいが少数で、それ以外は感情が優位だから駄目。トラに「あなたは猫だ」といくら云つても、ニャーと鳴かないのと同じ。
・精神科医も解体すべき。風邪を引いたからと云つてルル、パブロン(など四つの風邪薬の名前を出して)を同時に飲む人はゐない。ところが精神科医は日本だけ複合投与を認められてゐる。しかも長期に継続するし、効かないとだんだん量を増やす。
・相談者とは往復四時間歩きながら話す。体が疲れるから治る。
・Hな店をすべてこの世から無くす。般若心経を唱へた。
・宗教は力がある。人が敬い尊いものには力がある。宗教が生き残つたのは、人を救ふ力があるから。
・顔に卍、鳥居、十字架のどれかを書けばいじめられない。
・「あい」といふ生徒の死。夜の世界は哀れ。最後はエイズで亡くなつた。「約束」といふ書籍。
・八時三時運動を提唱。捨てられた子が夜の子に。八時と三時に皆が生徒を暖かく送迎。
以上のお話があつた。これほど(1)言葉と行動の一致した、(2)内容の深い、(3)面白い、(4)歯切れのよい講演は聴いたことがない。昨年、舞の海さんの講演を、今まで聞いた講演の中で一番面白かつたと表現したことがある。面白いが商売としての講演者といふ限界があつた。水谷氏の場合は行動者が講演した為、その限界がなかつた。
築地本願寺常例布教での木下明水師を笑ひあり涙ありの巧みな説法と称賛したこともある。水谷氏も笑ひあり涙ありの巧みな講演だつた。私は涙ありの話ができない。笑ひだけになつてしまふ。
プロの浪曲師や噺家なら経験しなくても笑ひあり涙ありの話ができる。木下明水師と水谷修氏は、実際の経験に基づいて涙ありの話ができる。私の場合はコンピュータを相手にするから涙ありの経験がない。(完)
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