六百三十四(乙)、伊藤元重氏批判、その四

平成二十六甲午
十一月十二日(水) 参加したきつかけ
昨日は午前半休を取り、ASIAN AGING SUMMIT 2014といふシンポジウムを訊きに行つた。午前中の五人の登壇者の中に 「資本主義の終焉と新たな社会システムの構築」といふ興味のある題があつたためである。残りの登壇者の一人に偶然伊藤元重 氏がゐた。その内容が劣悪なので久しぶりに伊藤元重氏を批判することにした。

十一月十三日(木) 座長、基調講演
まづ座長の小島明氏。日経新聞に1965年に入社後、69年に一年間英国ブリティッシュ・カウンシル招請研究生として英国マンチェ スター大学大学院に留学といふ人生の汚点があるが、それを克服し可も無く不可もない講演であつた。七十年代に二十一世紀に 入り、ポストキャッチアップが出来てゐないといふ話と、イノベーションの意味が日本では技術革新の意味なのに、世界(といふ名の 欧米)では技術革新によつて全体が変ることといふ話があつた。先程述べたようにこれらは不可ではない。

基調講演として三菱総研理事長の小宮山宏氏。経歴を見ると2005年から2009年まで東京大学総長といふ人生の汚点があるとは いへ、話の内容はまともでよかつた。2009年から現在まで民間にゐて汚点が中和されたのであらう。
とはいへ問題のなかつた訳ではない。産業革命以後は平均寿命が伸びたがそれは食事が理由で、だから庶民は若くして死ぬのに 貴族は長生きだつたと話した。この話は間違つてゐる。昔は伝染病で亡くなる人がほとんどだつた。昔ではない。我々の親の世代 まではさうだつた。兄弟が或いは級友が突然病気になり亡くなつた。さういふ話を幾つも聞いたことがある。判り易く説明すると、 例へば一年で三割が死亡する疫病が五年連続して流行したとしよう。二年目は七割、三年目で五割、四年目は三割五分が生き 残る。栄養状態で生存率は変るから貧富が平等ではないが、少なくとも小宮山氏のいふように庶民は若死して貴族は長生きした といふことはない。
小宮山氏のこの発言のどこが問題かといへば、だから西洋近代思想はありがたいといふ西洋崇拝に至る ことだ。講演会場で東京大学元総長にしてはすばらしいと思つたがやはり汚点を克服してはいなかつた。

十一月十四日(金) 増田氏の講演
講演1の水野氏に続き、講演2で日本創成会議座長、元総務大臣増田寛也氏が登壇した。内容が 良質だつたのでどのような人だらうとパンフレットの略歴を読むと大学卒業後に上級職で建設省入省。ここは汚点である。上級職 なんかで若くして課長になるとろくな人間にならない。増田氏も五年目に千葉県警に出向し交通指導課長になつた。しかし95年から 十二年間岩手県知事を務めた。選挙で県民に接する、県議会で野党の攻撃に合ふ。これらが汚点を克服した。
講演内容は、全国1799自治体のうち消滅可能性都市は896。北海道は男が出て行く。岩手は男ばかり。東京は若い男女が多い のに子供が少ない。晩婚化が原因。通勤時間が長く若い人は90分。
増田氏の優れたところは日本全体、特に地方の人口減に警告を発した内容だからである。

十一月十四日(金)その二 伊藤氏の講演、その一
講演3は伊藤氏で「超高齢社会に求められる経済のイノベーション」といふ題である。他の講演者四名が投影機で表示して説明する のに対して、伊藤氏は投影無しだつた。伊藤氏は大学卒業後すぐに米国ロチェスター大学に留学。この汚点を克服できるか見て みよう。
話の中身は(1)技術革新、(2)グローバル化、が大切といふものだつた。どちらも経済学者は関与しない。例へば技術 革新は技術者や経営者の行なふことだからである。つまり伊藤氏は演題とはうらはらに超高齢社会に求められることを何もやらない と述べたに等しい。
グローバル化について伊藤氏はまづ、地球はグローバル化には大きすぎるといふ。ここまでは同感である。 船舶や自動車、鉄道で物を輸送すれば燃料を消費する。地球温暖化の時代にあつて化石燃料の消費は許されない。しかし伊藤氏 の主張に疑問点がある。伊藤氏は距離のことしか言はなかつた。距離と同じに大きいのは文化の相違である。日本は明治維新以降 西洋の猿真似を急速に進めたため先の戦争の敗戦に至つた。戦後は経済大国になつたが国民の生活満足度は低い。非正規雇用 による国民の二分化にまつたく対策が取れてゐない。これらは文化の相違を考へずに西洋文明を流入させたことが原因である。

十一月十五日(土) 伊藤氏の講演、その二
伊藤氏は更にグローバル化について、しかし地球規模で動くものもあるといふ。ここは絶対反対である。一旦は地球がグローバル化 には大きすぎると言つておきながら次に前説を覆す。嘘つき野田が消費税を増税したときの発言に酷似してゐる。あのとき野田は 「国民におわび申し上げる、しかし」と続けた。国民にお詫びした時点で一旦可決した消費税増税を取り消す法案を再可決させるか 首相を辞任するしか方法はなかつた。それなのに野田は「しかし」と続ける。厚かましい男である。
伊藤氏の「しかし」は地球規模で動くものもありその一例として、日本の労働人口は減るから労働集約産業は国内では無理だといふ。 ここがまづ間違つてゐる。労働人口が減れば物の消費も減るから産業自体の縮小が可能である。労働人口が減つても人口の減り方 はそれより少ないといふのなら老人を65歳以上まで活用すべきだ。次に労働集約産業が無理なのはプラザ合意以降の円高が原因 である。労働人口の現象は関係ない。現に失業率はまだ高いではないか。
伊藤氏は引き続き、laborがworkerになり今後はplayerになるといふ。laborとは力仕事のことである。それがworkerになる過程 で機械の打ち壊し運動が起きたが今から見るとこつけいだといふ。playerについて伊藤氏は具体的には言はなかつたが、worker のときと同じように反対するのはこつけいだと言ひたいのであらう。しかし伊藤氏の発言は間違つてゐる。laborがworkerになると workerの生活は悲惨なものになつた。だから打ち壊し運動は当然である。その後、生産力が増へた結果として販売先を確保する ため植民地獲得戦争も起き長い年月を掛けて労働者も保護されるようになつた。しかし今のworkerの生活が豊かなのは自然破壊 と引き換へである。化石燃料の消費を停止し自然破壊も停止すれば豊かさは消滅する。伊藤氏はそんなことも判らないのか。

十一月十五日(土)その二 パネルディスカッションは時間がなく聞けなかつた
このあとパネルディスカッションがあり午後一時に終るはずだつた。会社には午後一時半には着けるから午前半休を取つた。ところ が講演が大幅に遅れてパネルディスカッションは聞けなかつた。なぜ遅れたかといふとまづ始まるのが10分遅かつた。つぎに講演 前の来賓挨拶が長かつた。特に厚生労働省厚生労働審議官なる人物が長くて不愉快だつた。来場者は講演を聴きに来たので あつて来賓挨拶を聞きに来たのではない。始まるのが遅いのだから来賓挨拶は短くすべきだ。そんなことさへわきまえずに長々と 話す。だから全体が遅れた。
だいたい官僚の発言は中身がない。しかも政治は政治屋の責任だ。なぜ官僚が発言するのか。(完)


元東京大学総長佐々木毅の駄論を批判伊藤元重氏批判、その五

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