二百七十七、松井保彦氏批判(その2、松井氏は中小労働者の敵だ)

平成二十四年
六月五日(火)「松井氏の書籍は悪質が過ぎる」
前にも二百五十一、松井保彦氏批判を特集したが、松井氏の著書は余りに悪質なので続編を書くことにした。許し難いのは中小はすねているといふ一言に尽きる。松井氏が直接言つたのか座談で誰かが言つたのか。後者だとしてもそれを載せた責任は重い。
私の経験からいけば中小だからすねたといふ人は一人もゐない。これからそのことを明らかにして、松井氏の反労働者性を明らかにしたい。それにしてもなぜこのような男が全国一般の委員長を務めたのか不思議である。そのことを明らかにすることは、日本の労働運動の問題点を明らかにすることでもある。

六月六日(水)「すねる人がゐるとすればその背景を知るべきだ」
大企業にもすねた人はゐるし中小にもゐる。松井氏が言及した時代にはさうだつた。その後、大企業は採用のときに共産党や社会党左派を排除するようになつた。特にプラザ合意の後は人手余剰の時代だからますますこの傾向が強くなつた。労働と引き換へに賃金を得るといふ雇用制度から見れば、この採用方法は間違つてゐる。一種の黄犬契約である。その行き過ぎから後には一芸のある人も採用するようになつたが、根本を変へない限りうまくは行かない。

中小企業では労働法違反、退職勧奨、嫌がらせ配転が跡を絶たない。もし中小にすねた人がゐるとすればそれが原因だと、なぜ松井氏は気がつかないのか。

六月九日(土)「中小企業の労働法違反、退職勧奨、嫌がらせ配転の原因」
人間の特定の能力は概ね正規分布に従ふ。ここで特定の能力といふ言葉を用いた理由は、人間の価値は一つの数値で測つてはいけない。一方で雇用側は一つまたは若干の数値に単純化したがる。ここにまづ資本主義の欠陥がある。
人間の特定の能力が正規分布に従ふ以上、平均以下の人間が半分は存在する。余裕のある企業では80%の従業員が達成できる標準を設けるが、中小では50%しか達成できない標準を定めて残りは嫌がらせ退職に追い込む。ソフトウエア産業のような下請け構造の業界に至つては長い年月にはもつと少数しか生き残れず残りは毎年少しづつ退職したり退職させる。
労働者がすねるのではない。経営側が悪いのである。松井氏はそんなことも判らないのか。

六月十二日(火)「労働者が悪い場合も多い」
労働者が悪い場合も多い。といつても普通の労働者ではなく、経営側に媚を売る労働者である。経営側の行為は或る程度理解ができる。経営責任があるからだ。一方で、労働者のくせに経営側に媚を売る連中は許し難い。
私が30代のころ勤めたコンピユータ専門学校は、教務部長は教員を使ひ捨てにして許し難かつた。しかしこの人は経営側だからまだ我慢もできる。この人は後に学校のカネを大量に横領して解雇されるがそれは後の話である。
私が今勤務する会社に数十年前に課長代理として勤務した男が、教務部長と東京工学院専門学校の同窓といふことで科の主任教員として引き抜かれた。この男は私に退職勧奨をしたがまだ我慢もできる。教務部長に言はれたことをそのまま実行しただけだからだ。もちろんそれでは管理職失格である。上からいはれたことをそのまま実行する連中は二番目に悪い連中である。一番悪いのは出世のため上に媚びる男である。栃木県の専門学校元教師から転職した男が出世しようと媚を売つたため大変な騒ぎになり、つひに準学校法人は倒産した。経営者は媚を売る労働者を重用してはいけない。
以上で判るように本当の労働者はすねてはゐない。経営に媚を売る労働者を重用すれば不愉快だから反撃することが、すねてゐるように見えるだけである。或いは経営に媚を売る労働者から見れば、まともな労働者はすねてゐるように見えるだけである。

六月十三日(水)「松井氏はなぜ大企業中心の連合を改革しない」
松井氏はなぜ大企業中心の連合を改革しないのか。特に許しがたいのは総評の五項目補強見解を連合は無視した。五項目補強見解のうち(2)『「反自民」「全野党の協力、共同闘争」』は無理になつたから取り下げもまだ判る。それ以外まで無視したのになぜ反対しないのか。派遣や有期雇用といふ悪質雇用が出てきたのも連合の怠慢が原因だ。

六月十四日(木)「自治労との合併」
総評全国一般は総評が解散するときに分裂し、連合、全労連、全労協に行つた。このうち連合に行つた本部とそれを支持する地本は後に自治労と合併した。もし全国一般が自治労への影響力があるのなら賛成である。そして自治労と全国一般が社会主義を目指すためなら賛成である。しかしどちらにも該当しない。
自治労が豊富な資金を背景に中小企業の組織化を行ふといふならこれも賛成である。しかし企業別組合は企業の収益で賃金が頭打ちにされる。自治労がそれを打開するため連合で反主流になつたとは聞かない。つまりこの合併は松井氏など全国一般の幹部がいい思ひをするのと、国政や地方自治体の選挙で自治労の組織内候補の票集めにしか役立たない。

六月十九日(火)「経営者と労働者」
経営者が利益に血眼になるのは十分に判る。私が勤務する会社も過去に二回倒産の危機があつたからだ。だから経営者が公私を混同しない限り労使関係は悪化しない。労使関係が悪化する原因は、経営者ではなく経営者におべつかを使ふ労働者と、労働組合にことさら反抗して会社に忠誠のふりをする労働者がゐることによる。経営者はさういふ連中を重用してはいけない。
松井氏は長く労働運動をしてきたからさういふことを知らなくてはいけない。連合に行つたことにより松井氏自身、経営者におべつかを使ふ立場になつたと疑ひたくなる。(完)


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