二百六十四、北海道大学教授山口二郎氏批判

平成二十四年
四月三十日(月)「東京新聞のコラム」
東京新聞に「本音のコラム」といふ600字の小さな欄がある。山口二郎氏が昨日小沢問題を取り上げた。極めて悪質なので指摘しよう。まづ
この裁判は、検察の強引な捜査と、検察審査会に対する情報操作の結果始まったものであり、無罪判決は当然だと私も考える。

ここまでは正しい。しかし強引な捜査と情報操作を批判することなく小沢批判へと向ふ。次の行で
これを受け、小沢氏が政治的に復権し、自由かつ華々しく政治活動を行うのを止める理由はない。

政治的に復権するといふことは、今までは奪権されたといふことだ。奪権を行つたのが菅直人である。そして小沢氏が権利停止の間に民主党は消費税増税だけを叫ぶまつたく異質な政党になつてしまつた。ところが山口氏はそのことを批判することなく
彼が検察権力に迫害され、民主党内でも主流派に迫害されたという被害者意識を持つことは当然かも知れない。

被害者意識といふ言葉は持つほうが悪いと誰もが思ふ。しかし小沢氏は被害者意識ではない。被害そのものである。加害者は既得権派(官僚、マスコミ)である。そして民主党内の拝米新自由主義派が既得権派に言ひくるめられてしまつた。山口氏はすぐ次の行で
しかし、だからといって怨念を動機に政権の転覆や政治のかく乱を図るというのは筋違いである。

小沢氏の主張は鳩山政権のときから一貫してゐる。それを覆したのが既得権派に負けた菅直人や野田ではないか。それを糾すのがどうして怨念なのか。山口氏の偏向思考には驚く。こんな男が北海道大の教授とは驚く。こんな男に税金を使ふ必要があるのか。

五月一日(火)「政党政治を否定するやからは菅直人と野田と山口二郎だ」
私が彼に望むことはただ一つである。(中略)マニフェストの順守や政権交代の原点に戻るというスローガンを政治的道具にしてはならない。

マニフエストを守らないのは、契約に違反して手抜き工事を行ふ悪徳業者と変はらない。ペテン師、嘘つき、詐欺師である。山口はそんな悪徳政治屋に手助けをするのか。政権交代の原点に戻らないといふことは、与野党が同じことをしろといふことだ。戦前の二大政党と変はらなくなる。
野田政権の足を引っ張って、結果的に「決められない政治」の惨状をさらに悪化させれば、政党政治を否定するやからを利するだけである。

国民をペテンにかけ政党政治を否定したのが菅直人であり野田である。そしてかういふやからを援護するのが山口二郎氏である。

五月七日(月)「五月六日のコラム」
自民党が四月の末に憲法改正案を発表した。私はこの案に反対である。しかし山口氏が五月六日のコラムに書いた反対理由とは正反対である。山口氏は「憲法を改正すれば理想の国ができるというのは、錯覚である」といふが、憲法を改正しなければ理想の国ができると考へることのほうがよほど錯覚である。錯覚だけでは済まされない。非正規雇用や失業者が街に溢れ、地球温暖化で人類は滅亡寸前である。地球温暖化は日本だけの責任ではないが、日本は欧米の猿真似で経済大国となることで、アジア諸国を猿真似に導いた。自身の排出量の10倍は責任がある。
自民党の改正案はまづ前文に反対である。「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち」とあるが、憲法に書いたから持つのではない。憲法に書かうと書くまいと存在する。だから「日本国は豊臣秀吉の時代と明治維新以降に海外に出兵したことを例外とし、歴史のほとんどを周辺国と共存してきた。吾等はこの伝統に従い、周辺国と平和共存することを誓ふ」としたほうがよい。但しこれは前文が必要な場合であり、前文はないほうがよい。
山口氏は現憲法の前文に書かれた「平和を愛する諸国民」にアメリカが入ると思ふか。 「人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚」を解説してもらいたいし、アフガニスタンやイラクでアメリカが独裁者を援助したことやベトナム戦争がこれに該当するのかも説明すべきだ。

五月八日(火)「ナショナリストの意味」
日本は豊臣秀吉の時代と明治維新以降を除き海外を侵略しなかつた。山口氏は「野党自民党を応援する奇特な支持者は、伝統的な意味でのナショナリストが多いので」と主張するが、日本の伝統は平和外交である。ナショナリストとは、帝国主義の時代にあつては海外を侵略する連中だが、戦後は経済や英語や西洋の猿真似で他国を侵略するようになつた。日本で反米感情が起きるのも国民の生活感情から出たもので、他国侵略や民族優位主義とは異なる。山口氏の拝米拝西洋の姿勢こそ西洋ナショナリストである。

五月十日(木)「主権者のマニユアル」
山口氏は「憲法は主権者たる国民が権力を動かすためのマニュアルである」と言ひ切る。そこには多数派になれば、そしてマニユアルに従へば何をしてもよいといふ恐ろしい思想を含む。更に多数派がマスコミに煽動され形成されることを無視してゐる。
国民は直ちに主権者になるのではなく、正しい政治を目指すといふ意志を持つことによつて主権者になる。だから業界や労働界などの組織票に左右される現在の選挙は間違つてゐる。山口氏はそのようには言へない。それは西洋の猿真似だからだ。西洋の猿真似をすれば必ず西洋より劣化する。先の戦争がいい例だ。猿真似帝国主義は本場の帝国主義に負けた。

五月十一日(金)「呆れた民主主義国の標準装備」
山口氏は「今の日本の政治制度は民主主義国の標準装備であり、制度が悪いから政治が駄目になったわけではない」と言ふ。山口氏はいつたいどこに目を付けてゐるのか。日本は長いこと自民党の長期政権だつたではないか。政権が交代する欧米とはまつたく異なる。それなのに「民主主義国の標準装備」とは呆れる。
だいたい明治維新以降、日本の政治がうまく行つたことはほとんどない。西洋の猿真似だからだ。「民主主義国の標準装備」と言へば聞へはよいが、「欧米列強の標準装備」である。だからと言つて普通選挙を廃止してよい訳ではない。国会議員が菅や野田のような上昇志向が異常に強い人間に占領されないように、長期計画で歳費を廃止すべきだ。これは短期に廃止すれば議員が困るといふ配慮である。選挙で業界や労働組合の推薦を禁止すべきだ。選挙で顔写真は禁止すべきだ。大手マスコミは解体すべきだ。
それとは別に、北海道大学公共政策学連携研究部は税金の無駄だから廃止すべきだ。

五月十二日(土)「定数不均衡問題の本質を見ない山口氏」
山口氏は次に「憲法を論じたがる政治家が真っ先に実行しなければならないのは、国会の定数不均衡の是正である。目の前の問題を棚上げにして高邁な理想論を語るのは、不誠実の極みであり(以下略)」と主張する。選挙が得票数で決まる以上、議員数は人口に比例したほうがよい。これは当然である。しかし定数是正は緊急を要する事柄ではない。2倍の格差があつたとしてもそれぞれが得票数で決めるからはそれほどの差はでない。かつての都市部の社会党または共産党、農村の自民党といふ支持傾向の二極化があれば、定数是正は重要である。今はさういふ傾向は少ないから定数是正より重用な問題がある。野田のように選挙のときと実際の政策が正反対なのは民主主義の破壊ではないのか、或いは検察が起訴を見送つたのに党員資格を停止するのは民主主義の破壊ではないのか、或いは既に結論を決めて100時間討論すればよいといふのは民主主義の破壊ではないのか、といふ問題である。

それはさておき定数是正問題の本質は国民の意思表示としての議員と、上昇志向人間の巣としての議員と、議員の持つ二面性である。これを解決するには議員無報酬が最終目標だが、得票数に比例して歳費を受け取るなど日本に合つた民主主義を創るべきだ。定数是正だけを叫ぶ山口氏は本質を見る能力が欠乏してゐる。

五月十二日(土)「山口氏は既得権守旧派の典型」
世の中は、長い期間を掛けて少しづつ起こる堕落と、短期間で実行される改革の繰り返しといふことができる( 百十七、動的社会科学のすすめへ)。ところが山口氏のコラムを読むと、現状を維持しようと必死になつてゐる。だから定数不均衡是正のように緊急を要しない、或いは是正しても政治の大勢には影響を与へない問題を取り上げる。
戦後は67年を経過した。民主主義もかなり垢が溜まつた。特に溜まつたのが大手マスコミと拝米矮小ニセ学者である。

五月十七日(木)「フルブライト奨学生」
山口二郎氏は二年間アメリカのコーネル大学にフルブライト奨学生として留学した。財界ニツポンといふ雑誌に二人のジヤーナリスト、藤原肇氏と本澤二郎氏の対談が載つてゐる。
藤原 ローズ・スカーシップという、英国帝国主義の支配者の番犬を育てるために、アメリカ人と英国のコモンウェルズの中だけから選んで、オックスフォードで教育している。それを真似したのがフルブライト奨学金です。日本人でも可成りフルブライトで洗脳されて帰ってきているのがいる(中略)
藤原 それにコロンビアとジョージタウンは、それぞれ5パーセントの特別が粋があって、声をかければ入れてくれる。小泉進二郎も、能力とはまったく関係なくコロムビアに入れた。
本澤 彼はたしか関東学院大学中退だったらしいですね。親(小泉元首相)が離婚したりして家庭が複雑だったり、いろいろ事情があったんでしょうが、とにかく勉強が大嫌いで、いってみればまともじゃなかったらしい。だいたい、政治家のセガレでできの悪いのはみなアメリカ留学だ。安倍晋三もその一人ですね。
藤原 それを暴露したのが霍見芳浩だった。民主党最高顧問の渡部恒三の息子の恒雄もジョージタウンで教育を受けている。
本澤 渡部恒三のセガレがジョージタウンですか。
藤原 そう。だから渡部恒三は、水戸黄門とかなんとかいって、徹底的に小沢一郎を叩く側についている。
本澤 渡部の小沢叩きはジョージタウンの流れですかー。

山口二郎の小沢叩きはコーネルの流れだつた。小泉進二郎の消費税賛成はコロムビアの流れだつた。


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