二千六百二十五(うた)車内放送(動画を含む)を聞いて
新春前甲辰(西洋発狂人歴2025)年
一月十二日(日)
一、先日、京浜東北線の南浦和行きに乗り、終着駅に着く手前の放送で「南行」の語を聞いた。これは懐かしい言葉である。今は「上り」を使ふ。京浜東北線は大宮から東京を経て大船まで行くから、「北行」「南行」が正しい言ひ方である。かつては、すべての車内放送がこの言ひ方を使った。しかし初めて乗る人は、「北行」「南行」は分からない。だから今は「上り」「下り」を使ふ。

二、数年前に、動画で青森発大阪行き「白鳥」の車内放送を聞いたことがある。そのとき感じたのは「ご承知おきください」の表現だった。これはよい表現である。
最近は「車内販売はありませんので、ご了承ください」を使ふ。乗客としては、了承なんかしないが売りに来ないから仕方なく買はないだけだ。
了承は目上が使ひ 承知する目下が使ふと辞書にある ご承知おきは目上への依頼とともに知るの意味 許諾するとは意味が異なる

反歌  乗客に了承するの強制はしてはいけないご承知おきを

三、昔は、接続の案内で「10時20分発、35分の待ち合はせです」と言ったが、今は待ち合はせ時間を云はなくなった。或いは、車掌が計算を間違へることがあるためか。それなら「10時20分発、この列車は9時45分にxx駅に到着予定です」と云ったほうがよくないか。なを乗り替へ列車が多数あるときは、到着予定は最初の二つくらいでよい。
腕時計持たない人がゐる上に 懐中時計鉄道の従事者以外持つこと僅か

反歌  時計類持たない人もゐる故に今の時刻を云ふは親切

四、本日たまたま、【車内放送】国鉄時代の特急「北海1号」(80系 ブラームスの子守唄 函館-札幌)を聞いた。気動車のオルゴールは「アルプスの牧場」だけだと思ってきたので、聴いてみた。このとき既に、待ち時間は案内しなくなってゐた。

五、本日改めて青森発大阪行き「白鳥」を見た。2000年なのでJR化の後だった。停車駅は青森を発車すると、弘前、大館、鷹ノ巣、東能代、秋田、羽後本荘、仁賀保、象潟、酒田、鶴岡、あつみ温泉、村上、坂町、中条、新発田、新潟、新津、東三条、長岡、柏崎、直江津、糸魚川、魚津、富山、高岡、金沢、松任、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、鯖江、武生、敦賀、近江今津、京都、新大阪、大阪とすごい。この動画も、車内放送が膨大だとして投稿された。(検索したら、駅名が大阪からのものしか見つからなかった。これを動画に合はせて青森から始まるやうに、コピー/貼り付けをしたが、かなり手間が掛かった)
到着時刻の紹介は新潟までで、新津から先は駅名のみになる。これは新潟で車掌が交代するためでもあらう。それより、もう一つの発見は、上野発の白鳥があった時代に、短期間だが尾久客車区だった。一年半で向日町運転所に移管された。今まで尾久配置の気動車は「はつかり」だけだと思ってきた。
上野行き特急白鳥 尾久配置一年半と 向日町二年半にてはくたかに その四年後に電車化と信越線から上越線へ

反歌  白(はく)鳥(てう)は哀しからずや上野行き四年間にてはくたかとなる
反歌  はくたかも哀しからずや電車化で長野通らず長岡経由
反歌  電車化も哀しからずや新幹線開通の後その名取られる
牧水の「白鳥は哀しからずや」の歌は、文系雑誌に投稿したときは「はくてう」と振り仮名があった。歌集では、それを「しらとり」と修正した。

六、最後に、名物車掌と云ふ題の動画を観た。特急ゆうづるで、青森を発車10分前に
発車をいたしますと、もう上野まで途中の駅で、売店をご利用になるやうなところは全然ありませんので、お弁当とかお茶でございます、お買ひ求めになります方、青森の駅でお願ひを致します。え、この駅を発車致しますと、もう途中では、どこの駅も、買ふやうな駅はありません。え、上野の到着は明日の朝6時35分でございます。

この車内放送に感心したのは、自分の言葉で話してゐる。しかも分かりやすく話してゐる。昔の車掌は、運賃の規則や駅名、線名に詳しくないと務まらなかった。だから車掌の上位職に、乗客専務車掌(と後には車掌長)があった。ベテランが勤務すると、このやうな放送ができるのだらう。
今はタブレットで検索や発券ができるから若い人が多くなった。すると訓練されたとほりの放送しかできない。昔、情報処理健保組合の健診センターへ行くと、マイクを使ふ最初の説明が頭に入らなかった。意味を分からず、単に文章を読むからだ。

七、小学生のころは、急行「アルプス」に乗ると「乗務掛」の腕章を付けた人が車内改札に来て、発券の必要があるときは、乗客専務が来た。昭和五十年代に車掌長の職位が出来たあと、浦和車掌区に乗客専務の腕章を付けた人が何人かゐて、通常の車掌と同じやうに京浜東北線に乗務してゐた。(終)

(追記1.13)鉄道の話題に、別産業の健保組合を取り上げたのは、これまでの人生で一番と云っていいほど頭に入らなかった。昨年、東海道新幹線で熱海など近距離旅行を何回か行ったが、一回分かりやすい車内放送があった。帰りの上りで、注意事項のあとや、駅名の後に、ひと言或いは間を入れるのが理由だったと思ふ。きちんと記録すればよかった。一般論として、早口ではいけないが、ゆっくりだと思はれてもいけない。

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