二千三百四十四(うた)高橋是清の参謀本部廃止論
甲辰(西洋未開人歴2024)年
五月二十一日(火)
デイリー新潮のホームページに
軍国主義の元凶「参謀本部」の廃止を唱えた直言居士がたどった末路

が載った。高橋是清についてである。
是清が原敬内閣の大蔵大臣になって約2年が経過した。(中略)政策提案を、(中略)書き上げると、早速印刷に回した。
タイトルは『内外国策私見』である。全部で400字詰め原稿用紙17~18枚分、引用を除けば6000字ほど(以下略)

是清は二・二六事件で暗殺されるが、事件は、陸軍内部の皇道派と統制派の争ひであり、参謀本部廃止論を過去に主張したから暗殺された訳ではない。また、暗殺の直接の原因は、日銀総裁、蔵相、首相などを歴任し、皇道派から腐敗政治と看做されたのだらう。『内外国策私見』は
一、対中国要求の緩和、欧州大戦中に最後通牒(つうちょう)をもって中国に突き付けた対華二十一カ条要求であるが、これが欧米において「日本は軍国主義」と喧伝(けんでん)される要因になっているので改めなければならない。
二、参謀本部の廃止。帷幄上奏権を持ち、統帥権によって内閣から独立しているのは、ドイツの制度を模倣したものであって、ドイツが負けて参謀本部が解体された今、五大国にこんな制度を持つ国はない。
(中略)
三、農商務省を廃止して、農林省および商工省を設置すること。
四、文部省を廃止すること。小中学校の経営監督は地方自治体に任せ、その地方に応じた教育をほどこすべきである。また公立大学はその特典を廃止し、私立大学と平等に競争するようにしなければならない。

ここで注目すべきは、参謀本部がドイツの猿真似だった。真似をすると、元のものより劣化する。小生が欧米猿真似は駄目だと主張する根拠はここにある。今の日本は民主主義の猿真似だが、結局は政権交代に失敗し、お友だち不公平と裏金を阻止てきなかったではないか。
さて、参謀本部を維持する方法もあった。陸軍大臣は現役武官制を廃止し、陸軍大臣に参謀総長の任命権を与へる。本来はそのはずだが、三長官(陸相、参謀総長、教育総監)の人事は三長官の合意で決める慣例が出来てしまってゐたため、変になった。そして二・二六事件の後は、退役させた皇道派の将官の就任を阻止する名目で、陸相の現役武官制が復活してしまった。
四つの具体策の前に、この記事は次を載せる。
軍国主義を奉じたドイツとオーストリアは欧州大戦に敗れ去り、正義と人道を標榜(ひょうぼう)する英国、米国、フランスが勝利を収めた。
今後五大国の一角として日本が真面目を発揮しようとするのであれば、我が国も正義と人道に重きを置いて、列国から誤解されるようなことがあってはいけない。
日本の制度文物はドイツに模倣私淑するものが多く、日清、日露戦争と勝利をあげて世界を驚嘆せしめた結果、我が国の実情をよく知らない者の中には、日本は「第二のドイツ」であると呼ぶ者さえおり、こうした誤解はどうしても解いていかなければならない。

これは完全に間違ってゐる。第一次世界大戦は、植民地をたくさん持つ国どほしの帝国主義戦争だった。たまたま英米仏が勝った。その後、世界大恐慌が起こり、植民地を持つ国はブロック経済を取ったため、持たない国は大変なことになった。そして第二次世界大戦が起きた。日本は、昭和の大恐慌があり、持たざる国の側だった。
この記事は、第二次世界大戦については触れないが、ここまで見ないと、米英仏が正しく、日本は悪いと云ふ悪質な偏向に陥る。もう一つ付け加へると、民主主義は経済がある程度豊かではないと、維持できない。
陸軍の派閥争ひ醜きは バーデンバーデン密約で長州閥から権力を奪ふことではうまく行き しかし内部が対立しつひに日(火)の本国を滅ぼす

反歌  皇道と統制の次は拡大と不拡大で分かれ道へと
拡大派は、陸軍省の杉山陸相、田中軍事課長、参謀本部は武藤作戦課長、永津支那課長。不拡大派は陸軍省では柴山軍務課長、参謀本部は多田次長、石原作戦部長、河辺戦争指導課長。
東條はこの当時は満洲軍総参謀長で中央の争ひには加はらなかったが、陸相から首相になって日華(当時名は北支、拡大後は日支)事変を対米英仏蘭戦争に拡大したのだから、歴史上では最大の拡大派となった。(終)

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