二千二十一(和語のうた)かんなみ仏の里美術館訪問記
壬寅(西洋野蛮歴2023)年
六月四日(日)
明日の仕事が入らなかったので、かんなみ仏の里美術館を訪問することにした。赤羽駅のみどりの窓口へ行った。ここを利用するのは初めてだ。自宅近くの駅にある「話せる指定席券売機」は三回使ったので、今回は変化を付けた。切符を買ふところから、旅行は始まる。窓口は二つあり、列が六組くらいだ。二人の組が三つくらいだった。
認知症気味のお婆さんは、時間が掛かった。ほかは、定期券(またはSuica)払ひ戻しが三人、列車遅れによる払ひ戻しを受けようとして110分だから払ひ戻しにならないと云はれた人が一人。列車遅れは、JRのずるいやり方だ。
小生も三十一年前に、寝台特急「あけぼの」で遅れに巻き込まれた。車内放送で、東北新幹線への乗り換へを誘導されたが、それだと110分遅れで払ひ戻しにならない。そのまま寝台列車に乗り続けて、車掌から証明をもらったのか何も無くても新幹線に乗車しなかったことが証明できるのか覚えてゐないが、無事特急券を払ひ戻すことができた。みどりの窓口では、新幹線に乗り換へる筈だと云ふので、そのまま乗り続けたことを説明した。乗り換へを誘導の後は普通電車に抜かれるなど待ち時間が多かったが、無事上野駅に着線した。
乗る為の手形を買ひに行くことが 旅の始まり 新しい試みも入れこれも楽しみ

反歌  函南の仏の里はひと月も前に調べてこれも始まり (そのときの特集へ)
反歌  調べるは旅の楽しみ我が心野原山川森駆け巡る

六月五日(月)
仏の里美術館は十時開館だ。駅から三十分歩く。東京駅では、七時五十七分のこだま号が間に合ふが、函南駅か美術館前で待たなくてはならないので、八重洲側に途中下車した。JRバス乗り場の切符売り場及び待ち合はせ空間を見たあと、店はまだ閉まった商店街を南端まで歩き、戻りながら新しくできたバスターミナルへ行った。新しくできたものの、JRは別だし他にも乗り場があるやうだ。これでは間違へて乗り遅れる人が出るだらう。さう云へば、JRの切符売り場は、他社のバスターミナルはわかりません、当社バス利用者以外は待合所を利用しないでくださいと云ふ表示があった。
東京駅を八時二十七分発のこだま号に乗り、仏の里美術館へは十時ちょうどに到着した。小生の前に三名老人がゐて、受付が今ボランティアの解説が始まったところだと云ふ。小生を含め六名で、解説を聞いた。
北条時政の長男宗時がこの近くで戦死したため、時政が願主となった阿弥陀仏が国指定重要文化財に指定されたとの解説があった。貼り紙の解説にもあった。
頼朝は舅時政巻き込みて 平と戦始めるも 石橋山で負けた為北条宗時命を落とす

反歌  宗時の為に作ると云ひ伝ふ仏様には新らし館
脇侍二体も重要文化財だ。薬師如来は平安時代で、阿弥陀仏やその脇侍より古い。しかし県指定有形文化財に留まるのは、阿弥陀仏と脇侍は實慶の作だ。十二神将の説明もあった。
展示室の入口に、兜とその他吹き流しなど(ひな祭りの三人官女や五人囃子に当る)が飾ってある。仏様にお見せする為、地元の人たちが飾るさうだ。本日は月遅れで端午の節句だ。また、展示室では今でも桑原薬師堂当時と同じく、講が開かれるさうだ。
かんなみの仏の里は人の里 長きとし月里人が守り伝へて今の世に至る

反歌  桑原は乗り合ひ車無き為に歩きて着くも寂れない里
反歌  里人の仏を護る心こそ形(かた)無き財(たから)文(あや)へと化(か)へる
二番目の反歌について説明すると、今は仏像を町に寄贈して年月が浅いから、住民の関係意識が高い。しかし年月が経てば、無関係と思ふやうになるだらう。それを防ぐために、里人と仏像の関係や行事を函南町指定無形文化財とする。これにより、今の関係を将来も維持することができる。

六月六日(火)
昨日の続きを記すと、函南から小田原まで在来線で戻り、昼食を買った。今回は酒を買はなかった。先日の小旅行で酒を飲んだためだ。新幹線の車内で昼食を済ませたあと、新横浜で在来線に乗り換へた。菊名から横浜まで歩き、二つ前に住んだ一軒家と、三つ前に住んだ賃貸マンションの、それぞれ近くを散策した。
菊名より 元住む家とその前の家の近くを歩く時 暑さでかなり疲れ出て 上り下りを避けるため 馬の背と呼ぶ尾根道とめがね橋経て鶴見へと着く

反歌  みそ年の前に移りてなつかしくだが少しづつ変はる驚き
鶴見から東京駅まで乗った。往きも地下街に寄ったが閉店前だった為、帰りにも寄った。今回は通三丁目(旧都電停留所)の地下までを往復した。かつて東京駅に行くには、都電40番に乗り通三丁目で降りた。40番が廃止の後も、20番臨時系統が通三丁目まであった。通三丁目から東京駅まで当時は地上を歩いたが、今は冷暖房完備の地下街を歩ける。
乗り降り場東みやこは 商ひや食べ飲む店が土の下 新たな街は夏冬知らず

反歌  暑さ無し寒さも無しはこの星が暑さ滅びるその引き換へに(終)

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