千九百九十六(うた)「人生を変える知恵 比叡山のやさしい人間学
壬寅(西洋野蛮歴2023)年
四月二十三日(日)
図書館で「良寛」を検索したところ、「多田駿 伝」に続いて、この本が検索された。「まえがきに代えて」に天台座主なる人が、昭和五十六(1981)年にローマ教皇が来日し日本の各宗派を集めて話したことと、昭和六十二(1987)年に比叡山宗教サミットを 行なったことを書く。かう云ふ偽善は嫌ひなので、この本は読まないまま返却しようと一旦は思った。
偽善の理由をかつては、固定思想(宗教)を混ぜると長所が消失すると考へた。今は、悪魔の思想である単純唯物論即ち資本主義とリベラルに対し、固定思想(宗教)が連合して反対しないからだと考へる。
しかし、小題を読み、中身を頁読み(行読みより更に粗い)をしたところ、幾つか役立つ記事があったため、紹介をしたい。まづは稲森和夫さんと天台座主の対談で、天台座主が
よく多くの人が仏教は「悟り」だといわれのすが、(中略)その「悟り」を活用するのが宗教であって、「悟り」とは自己の修養のためにあるあるということなのです。

先ほど、「天台座主なる人」と書いたが、なかなかどうして、実に慧眼である。
次に、筑波大学名誉教授なる人が
三十八億年前に最初の生物が誕生したと考えられており(中略)一度も途切れなく続いてきた貴重な命である(以下略)

自殺しさうな人を説得するにはよい情報だ。しかし三十八億年間続いた遺伝子を持つ細胞は、次々に生まれ変はる。つまり遺伝子が尊いのではなく、その組み合はせで一つの個体となったことが尊い。こんな反論を云ふのは、だったら人間は他の生物を滅ぼす地球破壊を止めろと主張しないためだ。
次に、京都大学こころの未来研究センター教授が
デカルト以来、西洋の近代は、物質と精神をきちんと分ける二元論からはじまりました。(中略)しかし日本の場合、「もの」と「こころ」と「たましい」が、互いに入れ子のように食い込みあっています。

これは大賛成だ。だから日本では、政権交代ができないし、労働組合がJR総連みたいにごますり組織になってしまふ。
次に、叡山学院院長で比叡山塔頭住職が
燃えるような熱いものを持って生きている青年が、私は大好きです。(中略)吹き上げたら火山のようになります。しばらくすると固まって溶岩になってしまって、それを守ってしまいがちですが、宗教家一人ひとりマグマであるべきです。いつでも爆発して、新しい時代に相応するようなエネルギーを放射しなければなりません。

これはよい話だ。唯一意見が異なるのは「(中略)」には「偉大な宗教家はマグマを持っています。」があった。偉大な宗教家がマグマを持つのであって、マグマを持つ人が偉大な宗教家になる訳ではない。それを勘違ひして、偉大な宗教家ぶる人が出ると困るので省いた。
次に、東京工大准教授の
生きる意味はオーダーメイドです。(中略)生きることにワクワクする。(中略)そうすれば、おのずとオーダーメイドの生き方になっていくのです。

これもよい話だ。次に比叡山延暦寺居士林所長の
良寛さんに学ぶ現代の生き方

なるほど、この本が検索されたのは、この記事が理由だった。居士林は在家向けの修行施設だ。
実際にその地で暮らすお婆さんに良寛さんとはどのような人だったのか?と尋ねると、「三日も一緒にいたら弟子にしてほしくなる人」、「二言、三言でもしゃべればついて行きたくなるような徳を持った人」という答えが次々と返ってきました。これには私も驚きまして(以下略)

昭和五十四(1979)年頃の話だ。一方で
僧侶でありながら(中略)説法もしなければ経も読まない。

これはどうか。僧侶の乞食に応じれば在家は功徳を積むことができる。これが在家の基本だ。在家が乞食に応じなければ、功徳を積ませるため説法が必要になるが、さうではないのだから説法は不用だ。経を読まないとあるが、坐禅はした。それを書かないと片手落ちだ。また、経の声と木魚(別の仏具だったかも知れない)を敲く音が毎日聞こえたと云ふ書き物もあるので、経は読んだと思ふ。また経を読む理由は、本当は釈尊の教へを実行すべきだが難しい。だからせめて釈尊の言葉を読むことにしようとするのが読経だ。読むとご利益があるとする考へには反対だ。
次に清水寺貫主なる人の
今の世の中は物を粗末にする傾向にあったり、世界的な環境破壊の進行など、様々な問題が山積しています。そのなかで日本人というのは、日本という島のなかだけで物事をとらえています。

前半は賛成だ。それなのに後半は、西洋野蛮文明こそ環境破壊の根源であることを無視した。この本が出版されたのは、今から十四年前。既に地球温暖化が問題になった。
次に、和田秀樹さんの
以前から(中略)学力低下の問題について警鐘を鳴らしてきました。(中略)インドなどでは、小中学校で詰めこみ教育をすることでコンピュータソフト開発などで大きな成果が出ている(以下略)

これはどうか。まづ西洋式教育が合ふ人かとどうか。西洋式教育には文系と理系に分けることも含まれる。科目もある。人それぞれ合ふ科目と合はない科目がある。所謂学力についても優秀な人は詰め込みが合はないし、適度に優秀な人は合ひ、それ以下の人も合はないだらう。目的もある。受験の為、ではやる気が出ない人が多いのでは。
梅原猛さんは
宗教心の衰えは、日本において強いのです。明治に近代化するときに廃仏毀釈をやりました。(中略)結果として神さまも殺してしまったわけです。

これは同感だ。仏だけではなく神も殺した。
良寛で検索すると現れた 比叡山での仏道に依りて人生変へる智慧 広い分野の人々がそれぞれ語るそれぞれの道

(反歌) 悔やまれる明治維新で行ひた神仏分離僧侶妻帯(終)

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