千七百五十八(和語のうた) 『中国と戦争すれば「米軍敗北は必至」という事実を日本メディアが伝えぬ理由』を読んで
壬寅(西洋野蛮歴2022)年
六月一日(水)
Mag2ニュースのホームページに
中国と戦争すれば「米軍敗北は必至」という事実を日本メディアが伝えぬ理由

が載った。
バイデン大統領は台湾有事の際に軍事介入を行なうことを明言しましたが、そもそも米軍は中国人民解放軍を打ち負かすことが可能なのでしょうか。(中略)ジャーナリストの高野孟さんが、アメリカ国内の専門家の間では台湾危機における米軍の敗戦予測はほぼ常識となっているとし、彼らがそう判断する根拠を列挙。さらにこれらの「常識」が日本で報じられない理由を明かしています。

アメリカ国内の常識が日本で報道されないのは危険だ。
28日付「ニューヨーク・タイムズ」論説欄で米スタンフォード大学のフリーマン国際問題研究所のオリアナ・マストロ研究員は(中略)これまでに参加した10件以上の米中戦争のゲームや机上演習で、米軍は、中国軍を撃退することができずに、多大な損失を被りながら敗退したと指摘。

具体的には四つあり
第1に、(中略)20年間におよぶ軍の近代化を通じて中国は今や世界最大の海軍を保有している。それに比べて米国が台湾の紛争に投入できる船舶は遥かに少ない。また中国のミサイル部隊は洋上の船舶に目標を定める能力を持っており、米国の戦力投入の主な手段である空母を壊滅させることができる。
第2に、米国は世界最先端のジェット戦闘機を保有しているが、それらが台湾海峡で無給油で作戦行動できる圏内には日本の2つの基地〔嘉手納と横田〕しかない。それに比べて中国は台北から500マイル以内に39の空軍基地を持つ。
第3に、(中略)米軍部隊に先制攻撃を仕掛ける(中略)場合、日本にある主な米軍基地と空母がミサイル攻撃の対象となるだろうが、これに対しては米軍がいかに訓練と経験を積んでもほとんど役に立たない。
第4に、米軍は長い距離を超えて戦力を投入しなければならないので、(中略)中国は米軍の輸送司令部のネットワークをサイバー攻撃により撹乱し、また衛星を打撃して通信、ナビ、目標設定、指令制御を妨害するだろう。それに対して中国側は、本拠地にあってより安全な光ファイバー回線のようなネットワークを活用できる……。

かういった予想は
かなり行き渡っているもので、例えば米ペンタゴンに直結するシンクタンク「ランド・コーポレーション」が2015年9月に出した報告書「米中軍事スコアカード」では、台湾海峡危機の場合、中国の対米空軍基地の攻撃能力や対地戦闘能力が2017年にはやや優勢となり、南シナ海紛争の場合の中国の対基地攻撃と対地戦闘の能力は同年には拮抗すると分析していた(本誌2015年12月14日付No.815参照)。
この報告書では、例えば2017年の予測として、中国が108ないし274発の中距離ミサイルを沖縄の嘉手納米空軍基地に集中的に発射し、2本の滑走路にそれぞれ2個所、直径50メートルの穴を空けられた場合、米軍の戦闘機が飛べるようになるまでに16~43日、大型の空中給油機が飛べるようになるには35~90日もかかることが明示されていた。これを見て、ジョゼフ・ナイ元国防次官補は「もう沖縄と日本本土の米軍基地は要らない」とまで言った。

或る国ですべてを決めずこれからは多くの極(きは)み調(ととの)へ和む


六月二日(木)
記事は続き
あるいは2018年には米議会事務局が作成した台湾危機についての分析では、(中略)米中が台湾を巡って戦えば米国が「致命的な敗北を喫する」可能性があると結論していた。
こうした予測は、専門家の間ではすでにほぼ常識となっているが、日本のマスコミではほとんど語られることがなく、それは専ら米軍に頼って日本の安全を確保しようとする自民党政権の趣旨に合致しないからである。

最大の問題点は、日本のマスコミが報道しないことだ。ドイツが同盟国日本に知らせずロシア(当時はソ連)と戦争を始めたり、日本が真珠湾を攻撃した直後にドイツのモスクワ攻略が失敗したことと重なる。その後も日本国内では戦勝に沸いた。
付け加えれば、マストロ研究員は、バイデンがウクライナの教訓を台湾にも横滑り的に適用して、プーチンがあれほど世界から孤立して酷い目に遭っているのだからさすがの習近平も台湾に手を出すのをためらうだろうという印象を作り出したがっていることについて、「ウクライナと台湾は違う」と釘を刺している。
それは当たり前で、ロシアとウクライナは(中略)他国同士の関係であるのに対し、中国と台湾は「1つの中国」の中の国内問題であり、しかもそのことを1979年の国交正常化以来、米国の歴代政権は戦略的曖昧さを以て包装することで容認してきていて、大義名分の立ち方が天と地ほども違う。さらに、中国はロシアとは比較にならないほどの経済・軍事大国であり、貿易額の大きさや「経済制裁」への耐久力という点を考えても世界中が争いたくない相手である。
バイデンは、勝てもしない戦争を仕掛けて台湾を苦境に落とし込み、しかも口先だけで騒いでも実際にそれを助けに行くことができないという無様な姿を晒すことになりかねない。そういう無責任な行いは避けるべきだというのがマストロの提言である。

同感である。アメリカは他国の死傷者数は眼中に無いらしい。
或る国は代はりに戦行はせ死の商ひで儲け続ける
(終)

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