千五百六十九(和語の和歌) 日経の記事『「アートは知性で見るもの」 異なる価値観学ぶ近道』
辛丑(2021)
四月二十六日(月)
日本経済新聞のホームページに
「アートは知性で見るもの」 異なる価値観学ぶ近道

と云ふ記事が載った。
文化庁のワーキンググループで気になる発言をする男性がいた。いわく「ART(アート)は多様な知性で見るもの。感性だけで見るものじゃないんです」。
男性の名は石山徹、36歳。2013年に日本大学大学院総合科学研究科で、美術の脳科学・心理学の応用研究をテーマに博士号を取得した。

石山さんは
「ピカソやモネのようなFINE ART(ファインアート、純粋芸術)は厳然たる学問分野で、(中略)一定の表現様式や知識、ルールがある」

西洋と東洋では、高次元になるにつれ文化の違ひが大きくなるさうだ。掲載された図を文字化すると
西洋高次東洋
・個人主義・関係主義
・分析的思考・包括的思考
・原理・起源を重視・実利・実用性を重視
学問求道
ファインアート(美術)共通項クラフト(工芸)
石山さんは
「ファインアートは欧米の評価軸と思考回路を学ぶのに最適な教材だ。日本との違いも比較しやすい」

更に
石山によると、ピカソが20世紀で最も重要な画家といわれるのは、①西洋の美術表現テクニック②西洋の当時の最先端の哲学③アフリカの原始美術(プリミティブアート)の力強さ――の3つを融合・体系化し、人類の起源であるアフリカから西洋の最先端のアートまで広く取り込んだ芸術様式を作り出したためだ。古代ギリシャから考えることが一般的だった西洋美術の起源をアフリカに遡り、世界規模の美術を作り出した。

このあと、日本文化を世界へ開くケーススタディがあるが、これは西洋人がすべきことだ。日本人は、日本文化のごく一部が西洋人に取り入れられると歓喜するが、そんなことで喜んではいけない。日本人がアルファベットを使ふからといって、喜ぶ西洋人は一人もゐない。日本人がアラビア数字を使ふからといって、喜ぶアラブ人は一人もゐない。
この理論の使用法として
石山は絵を描くのが上手な人とそうでない人との「描画能力」の違いを体系化し、教育システムを開発した。しかし、日本は欧米に比べて「文化芸術」の社会的地位が相対的に低く、利用機会が少ない。
地位を高めるには「文化芸術に関心が薄い〝外野の人〟にその意義を理解してもらうことが重要だ」(石山)。文化芸術に興味もなければ、さして好きでもない人たちが、それでも「社会のためには重要」と考えるようにならなければいけないという。

具体的には
実際に欧米では文化系の趣味を持つ人は認知症になりにくいといった医学調査や、美術館やコンサートなど様々な文化活動に参加している人は、学歴や貧富の差に関係なく人生の満足度が高いといった研究が進んでいる。(中略)あるいはまた「経営者の卵」を多数生み出すような総合大学で、「ファインアートを教養講座として教える。アートで起きたイノベーションのスタイルがビジネスなど他の分野とも共通であることを事例を通して説明する」。

それより更に重要な事がある。アジアと欧米の違ひが判らずに猿真似をした結果、七十六年前の敗戦に至ったし、戦後はほとんど政権交代がない。政治屋の世襲率は異常に高いし、企業別労働組合は異常だ。
欧米のやり方を取り入れるときは、アジアに合ったものにするために、この理論を応用してほしい。
にしひがし 思ひのわざに 違ひあり それが解れば 学びの助け
(終)

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