千五百六十(和歌) 連絡をし易くするまでは上司の責任
辛丑(2021)
四月十八日(日)
人格異常とも云ふべき人(労働争議外伝へ)を見て、歴史のお家騒動はかう云ふ人が起こすと気付いたことを前に書いたが、もう一つ気付いたことがある。ああ云ふ人には皆が、機嫌を損ねる情報を伝へなくなる。そもそも話をしたくない。
連絡と 相談し易く するまでは 上司の任務 そのために 必要なのは 人間性だ

(反歌) 環境が 出来たあとの 連絡は 部下の任務だ 給料のうち

四月十九日(月)
報告と連絡と相談をまとめて、報連相(ほうれんそう)と呼ぶことがある。昭和五十七(1982)年に中小証券会社(今は消滅)が社内向けに云ったが、昭和三十五(1960)年頃から愛知県知多郡の食堂チェーンが使ってきたので、こちらが元祖とする説もある。
報告は上司(または業務の依頼者)にするが、連絡と相談はそれ以外の人にする場合を含めるかどうかで定義が二つに分かれる。
今から十五年ほど前に、新入社員の成果発表会で、報連相をきちんとすると発表した人がゐて、それは立派な心掛けだ。発表の後に、一人づつ質問や講評の時間があり、誰も手を挙げないと沈滞の雰囲気になるので、私が手を挙げた。
相談は上司にばかりすると忙しくなるし、他に詳しい人がゐることもある、と述べた。私は、場を盛り上げるために質問したりする。今回も同じ状況だから、誰もが私の発言を好意的に受け止めた。
ところが一週間ほどして、或る男が勤務時間中に内線で、すぐ来てください、と素っ頓狂な声を張り上げる。私とこの男はどちらも平社員だし(或いは私がマネージャーだったかも知れない)所属が違ふから、理由も云はず呼びだすのは異常だ。
別の階のその人の席に行ったところ、報連相は間違ってゐると云ったので謝罪文を出してください、と興奮して云ふ。報告は上司にすべきだが、連絡と相談は別の人にすべき場合があることを幾ら説明しても理解しない。
きっと誰かに、あの発言で謝罪させろと云はれたのだらう。一週間経過したので、最初何の話かまったく分からなかった。延々と議論が続くので、見かねた周りがなだめて収まった。
連絡と相談は誰にするのかで定義が二つに分かれるし、そもそも六十年前に知多半島の食堂チェーン、または四十年前に今は消滅した中小証券会社の言ったことを、今でもありがたがるとは驚く。
報告は 上司に対し すべきだが 連絡および 相談は 他に適切な 人がゐる 時と場合で 選択をせよ

(反歌) パソコンに 電子メールが 現れた 報連相は 時代遅れに
(反歌) 報連相 たくさん人を ccに 入れがちなので 注意を要す

四月二十日(火)
この男は、次の人事異動で部長になった。私とは別の組織だから何とも思はないし、部長と云っても部下はゐない。或る時、その男が中途で入社した人を私に紹介する場面があり、バツが悪さうにしたが、私は何事も無かったやうに行動した。
その男はまもなく退職した。あの事件が原因かも知れないし、この男の大学の先輩がこの男と同じ外資系コンピュータメーカーから来て前年まで一年間東京事業本部の本部長だった。この当時は、本部長を一年交代で輪番みたいにすることが流行った。翌年はもう転職し、この男も後を追ったとも考へられる。
本部長になった男は「かんかん」と云ふ聞き慣れない語を多用した。感じて考へることださうだ。この語は実に場違ひだった。
(1)会社の業績が悪いのは、感じて考へないことが原因ではなく、他に理由がある。
(2)「かんかん」と変な語を使ふと、聞く人はそれで集中力を消費するから、他のことがおろそかになる。
(3)「かんかん」を実行しても、評価されない。
このうち(3)は重要だが、そのまま指摘したのでは嫌だらうから「キックオフミーティング」で部長やGMが計画を発表しますが、計画が実行されたか評価したほうがいいですよ、と進言した。
会社の業績が悪い理由はまさにこれで、計画が実行されたかは無関係に、たまたま売り上げや収益が上がれば「よかったね」、たまたま悪かったら冷遇や退職勧奨。そのため膨大な人が会社を去った。事業部長(当時の会社売り上げの八割を占める)が退職したし、天才営業と呼ばれた人も去った。これでは中長期の業績が伸びない。(終)

労働争議外伝 日本の宗教を叱る

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