一四三、東京湾沿岸三題(中谷巌氏、浜松町、有楽町)

平成二十二年
十一月十三日(土)「産業交流展」
産業交流展という中小企業の展示会が有明の国際展示場で開かれ、私の勤務する会社も出展した。都庁や東京商工会議所などの主催である。中央ステージで中谷巌氏の講演を聴いた。95%は賛成だが5%異なる部分があるのでそれを明らかにしたい。
その前に、この展示会は会場にBuild up! TOKYOと大きく書かれている。これはやめてもらいたい。例えば韓国の展示会に「ソウルを築き上げよう」と日本語で書いたりはしない。そんなことをしたら国内は大変な騒ぎになる。
日本だって同じだ。これでは講和条約締結前と変わらない。

似たような例に今開催中のAPECがある。閣僚会議の写真を見てみよう。なぜ
APEC Japan2010と全員の机の前に書くのか。開催地は日本だ。日本語で書き、下に小さく英語で書くならまだわかる。一番いいのは参加国すべての言語を書くことだ。

十一月十四日(日)「中谷氏の講演」
中谷氏の講演の要旨は次のとおりであった。
・マッカーサーが日本の弱体化を図った。歴史、地理、道徳を禁止した。歴史では民族の強いところ、弱いところを世界中が教えているのに日本は教えなくなった。

・民主主義に反対する人はこの会場にはいない。政府に何を期待するか聞くと弟一位はいつも景気対策。そして財政赤字になる。
・為替レートは貿易収支で決まるのではない。円高の原因はアメリカがじゃぶじゃぶの金融政策をしている。
・アメリカの学部の学生で日本の講義受ける人が多い。理由は日本の漫画を読んだ。日本の漫画の主人公は性格がよい。西洋は二枚舌。
・市場万能主義には裏がある。或る証券グループ。世界の従業員の平均年収が七千万円。役員ではなく従業員の平均が。普通の人は情報がないから株で勝てない。
・欧州は多くの民族。負けた民族は昔は奴隷。今は下層階級。日本は弥生人が少しずつ入ってきて縄文人と仲良くやった。日本は異民族に征服されていない唯一の先進民族。
・一四九二年のアメリカ大陸発見までヨーロッパは暗黒で遅れていた。六六人のスペイン兵で征服。伝染病でインディオの九割が死んだ。金銀がスペインに入ってきた。次にオランダ、そしてイギリスに産業革命。
・白人中心は十八世紀、十九世紀以降。インド、中国が延びて五百年ぶりに世界が変わる。
・中南米からインド、中国と植民地にして、一つ小さな国が残った。一ひねりだろうと思ったがそうではなかった。

・西洋はエリートと支配される階級。
・サッチャーが江戸時代は暗黒だったと言ったのと、マッカーサーが戦前は駄目だったと言ったのは同じ。TPPに参加しないと遅れるというのも同じ。日本は参加しなくても困っていない。
・イギリス人は二枚舌、三枚舌。アメリカ大陸のイロコワ族に武器を与え他の部族を亡ぼさせて最後にイロコワ族を亡ぼした。日英同盟を結んだとき、イギリスはロシアに勝ちたかったが自分で戦争をするのは嫌だった。日本はイロコワ族として利用される、とロンドンでは噂された。
・原爆はユダヤ人虐殺より悪い。原爆で日本はやはりイロコワ族だった。
・一九四五年西洋はついに日本をやっつけた。しかしソ連、中国が出たので、日本を駄目な国にするのをやめて支援した。ソ連が崩壊して日本は失われた二〇年となった。
・一九四五年から一九六八年で世界第二の経済大国に。階級社会だから労働は苦役というのが西洋。中国も。
・日本は現場の人たちのやる気が高い。派遣やパートはそれを壊した。大企業も一九八〇年代まではやっていたが、それ以降監視する側とされる側になった。


十一月十五日(月)「日本は階級社会か」
中谷氏は、西洋や中国は異民族の征服があったから階級社会だが、日本は弥生人が少しずつ入ってきたから階級社会ではない、という言い方をされた。ここは疑問である。
例えば江戸時代には城下にすむ上級武士と、農村に住む郷士がいた。郷士は降伏した旧大名の家臣団のことも多く、この場合は階級社会である。明治維新後の農村の地主と小作農の分離も「あゝ野麦峠」の舞台も階級社会であろう。戦後の大企業は階級が一時期消えたが、派遣労働や下請け労働者などやはり階級はある。
私は資本家と労働者の階級闘争をあおっているのではない。だから同時進行中の日本における社会主義の道・平成版でも、階級闘争ではなく国民感情の発露を重視している。
それでは何が違うかというと、これも同時進行中の東條英機方式か石原莞爾方式かということに至る。日本だけが特殊で西洋や中国と対峙するのか、それともアジアの一員として西洋と対峙するのか、という違いになる。

十一月十六日(火)「西洋文明がアジアに合わない理由」
西洋文明が日本に入った結果、人心は不安定となった。二番目に弱肉強食社会となった。それは労働者派遣はアメリカでは合法だという悪徳経営側の言葉に表れている。二つの文明が混在すると強者が自分に都合のいいように取捨するようになる。何より重要なことは西洋文明は地球を亡ぼす。ここに日本は西洋文明と対峙する必要がある。アジアの一員として行動する必要がある。

戦前は帝国主義の時代だから軍事力しか方法はなかった。しかし今は平和力で対峙が可能である。

十一月二十四日(水)「日本永住アメリカ人の音楽バンド」
中谷氏の講演を聴いた日の夕方六時半ごろ浜松町の或るビルの脇で日本永住アメリカ人音楽バンドが演奏をやっていた。英語の歌がほとんどだが歌と歌の間の日本語の話が優れている。音楽はアマチュアの上位程度と見た。しかし日本語の話の内容はへたなお笑い芸人よりうまい。このグループが日本語で作詞作曲した歌も披露した。日本の伝統も取り入れている。私は即座に贔屓になった。一番前の席に座っていたしファンクラブに入ってもいいと思ったくらいだった。しかし心に引っ掛かることが二つある。一つは宣教とパンフレットに書かれている。キリスト教の宣教なら反対はしないがこのグループの歌に愛を歌うだとかが多い。退廃した日本で愛を歌うと更に退廃する。本当に宣教なのだろうか。もっと重要なのはグループ名が英語である。片仮名ならまだ許容できるが完全な英語である。このグループの演奏を念のため昨日もう一回聴いてみた。

十一月二十七日(土)「よさこい祭り」
よさこい祭りにこの音楽バンドが出演するというのでわざわざ聴きに行った。よさこい愛好団体が中越地震のときに義援金のチャリティーで始めた催しで、その後も毎年地元福祉団体に寄付を続けている。だから地元の区議会議長がまず挨拶をした。区というのは東京では市に当る。ここが他の政令指定都市とは違う。
次にこのバンドが出演したが、グッドモーニングなど挨拶が英語である。日本語を話せるのになぜ英語で話すのか。それで日本人が喜ぶとでも思っているのか、と言いたいが喜んでいる日本人も多かった。ここに日本の文化政策、戦後教育の欠陥がある。
よさこいという日本の伝統の冒頭にアメリカバンドが出演するのは日本文化の首根っこをアメリカに押さえられている。このグループの宣教とは拝米を伝えることなのだろうか。今でも疑問に思っている。

十一月二十九日(月)「日本音楽の復活」
日本語を話す外国人は優遇すべきだ。だからこのバンドについても最初は好意的に見ていた。
西洋音楽は有益と有害の両面を持つ。私は有益が多くなるように仕向けたいが今は有害が多い。日本音楽を復活するにはまず民謡と浪曲である。
浪曲について言えば、木馬亭に出演する若い女性浪曲師に高い声を無理に出す人が多い。練習のときならよいが観客の前でああいう声を出すのは不謹慎である。高い声が出ないなら低く節を変えればよい。浪曲協会は観客を増やすために若い人への指導をきちんとしてほしい。

十一月三十日(火)「有楽町」
数日後、夜七時に有楽町の法律事務所に行った。私の件ではなく別の組合員の労働争議の件である。七時まで時間があったので駅近辺を散歩した。有楽町から新橋にかけては屋外の飲食店も多数あり庶民的な街だ。都心にまだこのような庶民的な街があったとは驚く。「有楽町で逢いましょう 」という歌がはやった時代から続いているのだろう。
それに比べて最近の繁華街はよくない。ニューヨークと変わらない。欧州の大都市には庶民の香りがする。アメリカの物真似には成金の輝きしか見えない。東京は繁華街も住宅街も庶民の香りを取り戻すべきだ。


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