千四百二十五 3.続「信濃のコロンボ」、4.「JIN-仁- レジェンド」
庚子(仏歴2563/64年、西暦2020、ヒジュラ歴1441/42年)
第一部 続「信濃のコロンボ」
四月十二日(日)
「信濃のコロンボ」はその後、問題のある演出はなくなり、内容に芸術性が出て来た。面白さも出て来た。先週は、所轄署の刑事が署長に、忙しいし県警から来た連中は邪魔だから新しい事件に回しませうと進言するうちに、既に新しい事件に向ってしまふところが面白かった。今週は、コロンボと署長が同時に同じことを云ひ、県警本部でもコロンボと刑事部長が同じことを云ふところが面白かった。
「信濃のコロンボ」は年に1作品か2作品が制作される。長い間に進化が見られる。
四月十五日(水)
「特捜9」と云ふ番組に中村梅雀が出演すると聞き、先週試しに観た。殺人現場にたまたま居合はせた、特捜班と中村梅雀が演じる警視庁広報課主査。梅雀は川底から遺留品の腕時計を発見し、広報課は捜査担当ではないからからと、特捜班に手渡す。
事件解決後に、里見浩太朗が演じる警視総監が梅雀に、かう云ふ部下と仕事がしたいだろ、と班長を命じる。それにしても「信濃のコロンボ」で里見浩太朗、中村梅雀の組み合はせがそのまま平行移動した。これは楽しみだ。
と云ふことで本日夜九時から第二回を観たのだが、これが肩透かしだった。事件が解決したあとに梅雀が登場し、私は捜査はしません、机の上に私物を放置しないように、とだけ言った。
実際の組織ではあり得ない。管理者はまづ部下との信頼構築が大切だ。これはドラマだから許される。そのことが判らない人が真似をするとパワハラになるから、真似をしてはいけない。とは云へドラマだから、今後の展開が楽しみだ。
里見浩太朗と中村梅雀が平行移動したのには驚いたが、番組が別だからまだよい。里見浩太朗が「水戸黄門」で助さんから黄門に人事異動したときは、もっと驚いた。
四月十九日(日)
今日の午後は、「信濃のコロンボ」と「JIN-仁- レジェンド」が同じ時刻に放送のため、どちらを観るか迷ったが、「信濃のコロンボ」にチャンネルを合わせた。「JIN-仁- レジェンド」は見逃し配信で観ることにした。
「信濃のコロンボ」は、円熟の域に達する安定した制作で楽しい。見終ったあと、インターネットで驚く記事に遭遇した。何と、四月二十七日に「新・信濃のコロンボ」が放送され、中村梅雀はコロンボから刑事部長に人事異動する。
里見浩太朗の「水戸黄門」と同じ現象が起きた。
四月二十二日(水)
「特捜9」の三回目を観た。中村梅雀は途中で僅かに登場し、殺害現場に落ちてゐた写真の切れ端と冷蔵庫内の写真について「鑑識も忙しいから、事件と関はりのないものは依頼しないやうに」とだけ言って帰宅する。
おそらく班員のやる気を削ぐことばかり続けて、最後に特捜班を捜査一課9係に復帰させるか同程度のことが起きて、めでたしめでたしとなるのだらう。しかしテレビを観る人には我慢の限度がある。私は今回で観ないことにした。
「特捜9」のファンなら見続けるだらう。私はもともと特捜9は1シリーズで1回または2回しか見ない。今回は3回まで見た。
四月二十五日(土)
女優の岡江久美子がコロナウィルス肺炎で亡くなった。その追悼のため、岡江の出演した過去のドラマを放送し、「新・信濃のコロンボ」は延期になると発表された。
インターネットに載った別の上方によると、各テレビ局はスタヂオが3密のため撮影ができず、過去の番組を再放送し始めたさうだ。
第二部 「JIN-仁- レジェンド」
四月十八日(土)
今日は「JIN-仁- レジェンド」と云ふテレビドラマを観た。時代劇なのに医療ものだ。テレビドラマのほとんどが刑事ものか医療ものと云ふ法則は、ここでも適用された。脳外科医が江戸時代に紛れ込み、頭に怪我をした武士を助け、馬に蹴られて頭に大怪我をした女性を助け、江戸のコレラ騒ぎでも活躍する。
脳手術で植物人間になった同僚でもある婚約者と表裏一体で話は進む。坂本龍馬と緒方洪庵も登場し、これは優れたドラマだ。
主人公は、歴史を変へてはいけない、と気にしたが、歴史を変へても現代社会に影響は出ない。まづ時間を移動したとしても、自分の周囲は変化しない。つまり移動しないのと同じだ。
これだとドラマが進まないので、変化するとしよう。この場合、時間の変化は将棋倒しを考へると判りやすい。将棋の駒が順番に倒れる動画で、ある時代の世の中を変へることは、動画の途中の或る一瞬で余分に将棋を倒したり、将棋とは別の碁石なり花札を画面に写すことだ。一瞬違ふ画面が写っても、その前後は元の動画で影響を受けない。
しかしそれだと原作者は、話を膨らませることができない。だからタイムスリップの小説やドラマでは、今の世に影響すると設定する。
「神は乗り越えられる試練しか与へない」を頻繁に話す。この時代なら神仏と云はないか。もう一つ「国の為、道の為」がよく出てくる。これはよい言葉だ。「国の為」だけだと狭い。「道の為」だと広すぎる。両方揃ふと中和する。
四月二十日(月)
第二回は見逃し配信で観た。小説や劇画でタイムスリップものが、ときどき現れて人気を博す。理由は、その時代を生きた人たちに対する観る人の優越感だ。もし未来に迷ひ込み、皆から馬鹿にされ続ける内容だったら、人気は出ないだらう。
だから「JIN-仁」は人気が出た。しかしそれだけではない。テレビドラマでは、植物人間になった婚約者と主人公の対比が、それに拍車を掛けた。更に、劇伴(BGM)が優れる。
四月二十五日(土)
三回目を観た。芸術性が高く、優れた作品だ。前回、花魁は遊郭の主人に不信を持ってもよいのに、さうならない経緯を自然な流れで示したことに感心した。梅毒と云ふ遊郭の悲惨さも描写しながら、描く、その平衡感覚にも感心した。
ここがNHKの大河ドラマとの違ひだ。NHKは話を膨らませるだけの目的で遊郭の話を入れた。
四月二十六日(日)
今までは第一期で、四回目から完結編に入る。テレビドラマでは第一期のあと続編の予定はなかったが、一年半後に完結編が制作された。
第四回は、観る前の期待が大きかったため、期待外れ感が強かった。パソコンを操作しながらのテレビになってしまった。
坂本龍馬は久坂玄随と出会ったのだから救出すべきだった。坂本龍馬が自由に出入りするのに、久坂玄随だけが切腹するのは変だ。
佐久間象山を大怪我から一旦は助けたのだから、そのまま生かしてほしかった。佐久間象山がゐれば、幾らでも興味深い話を創作できたのに、残念だった。
火事で怪我をした町民より西郷隆盛を優先させるのは変だ。砒素騒ぎと牢獄は大袈裟だ。
今回は大味が目立った。このやうな場合、どうせ創作なのだからとあらすじを見捨ててしまふ。佐久間象山が短期間未来に行った話は面白かった。橘咲が南方仁の結婚の申し入れを断るところも面白かった。面白かったのは、この二つだけだ。テレビ局が第二期(完結編)の制作に躊躇した理由が判る。
第三部 二つの番組のどちらを選ぶか
五月二日(土)
本日は「JIN-仁- レジェンド」の第五回だ。川越藩に呼ばれる話はタイムスリップとは別の話だが、往復で出会った少女が瀕死の重傷になった話は、治療しようとすると仁の体が消えてしまふ。これは関係があるから、退屈することなく、最後まで見ることができた。
坂本龍馬の暗殺を止めようとすると頭痛の起きる話と、龍馬の船中八策の九番目に仁の提案で保険の話が入った。これは、よい話だ。
本日がよかったので、明日は二つの番組のどちらを観るか迷ふことになった。
五月三日(日)
本日はまづ「信濃のコロンボ 遠野殺人事件」を観て、終了後に「JIN-仁- レジェンド」の残りの一時間を観た。「信濃のコロンボ」は、森林整備機構と云ふ架空の独立行政法人で、無駄な林道を作る計画、予算の不正を指摘する、社会派の内容でよかった。定年間際の岩手県警刑事が、本部長賞を受賞できてよかった。
終了後に観た「JIN-仁- レジェンド」第六回は、仁と咲が病気になった経緯が判らず、しかし脳から摘出された胎児のなぞ、タイムスリップで登場人物と背景が少し変化するなぞ、咲やその他の医師たちのその後が明らかになってよかった。
五月四日(月)
見逃し配信で、「JIN-仁- レジェンド」第六回の全体を観た。仁の頭痛は、歴史を変へようとすると起きることから、脳腫瘍へと発展した。咲は、官軍と彰義隊の戦闘で流れ弾に当たり、感染したものと判った。
テレビで第二期を放送しないと、胎児のなぞ、土佐弁のなぞ、薬をポケットに入れた謎が解けないので、壮大な話の流れが完成した。テレビ局が最初の発表で第二期の予定はないと云ったのは、TBS開局六十周年として放送するためではないか。
タイムスリップしても歴史を変へてはいけないことと、咲が病気から回復したら皆が仁を知らないこと、各層で歴史が少しづつ異なることは、このドラマの優れたところだ。
咲はタイムスリップした訳ではないのに、皆が仁を知らないのは、写真が消えたり助けた人がまもなく亡くなるのと同じで、歴史の修正力だ。
坂本竜馬が暗殺されたあと、西郷隆盛が竜馬のやうにはできないから自分のやり方でやると言ったのは、西郷の歴史的評価を下げない優れた方法だ。
仁友堂は順天堂がモデルだ。発祥が佐倉ではないなど、仁友堂は架空の名称ではあるが。咲のお兄さんに勝海舟がフランスへの国費留学の話をする場面を観て、順天堂との接点を一つ思ひ出した。
昨年、在日ミャンマー人のお寺に用事が二つあり、一つ目と二つ目の間が一時間半ほどあるので本堂で待ってゐた。いろいろな人たちが出入りするのに遭遇するのは楽しい。
その中に、在日ミャンマー人の中高生くらいの生徒にアンケートを取る学生がゐた。終了後に話を伺ふと、ミャンマーから順天堂大学に国費留学し、公衆衛生の調査をしてゐるとのことだった。国費留学だから、ミャンマーでもトップクラスなのだらう。(終)
追記五月十日(日)
信濃のコロンボ18最終回「越天楽が聴こえる」を観た。被疑者が自殺しコロンボと刑事部長が辞表を提出し、しかし背後で操る大物が殺人教唆、自殺教唆で逮捕され、二人は首の皮一枚で繋がる、最終回に相応しい内容だった。
本日までの「JIN-仁-」をインターネットで観て、鑑賞記外伝(その一)(その二)に追記した。
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