千三百九十九 松本晃さんを批判
己亥、基督歴2019+3α年、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
十二月二十八日(土)
松本晃さんのこれまでの主張には、一抹の不安を残しながらも、賛成してきた。ところが、今回の主張はよくない。それを指摘したい。12月21日の日経新聞電子版に載った。
僕は「会社というのは厳しく、温かくなければだめだ」と思っています。

ここまでは同感だ。プロなんだから厳しくなければいけないが、しかし出来ない人には暖かく指導し、それでも出来ない人には違ふ職場に移動させるなどしなくてはいけない。ところが松本さんは
会社は稼ぐための組織ですから、社員への要求も当然厳しくなります。応えられない場合、出て行ってもらうこともある。それが「厳しく」です。

「稼ぐための組織ですから、社員への要求も当然厳しく」となると、公益法人や役所は稼がない組織だから、厳しくなくてもよいことになる。そんなことはない。プロである以上、公益法人や役所の職員も厳しくなくてはいけない。松本さんの主張は極めて低級だ。
その代わり頑張った社員には、活躍に見合う給料を払い、待遇もよくする。それが「温かく」です。

成績のよい社員の待遇をよくすることは、経営政策だ。こんなものは「温かく」でも何でもない。成績のよい社員の待遇をよくすることは、それ以外を差別することだから、これも実は「厳しく」だ。
僕は成果主義が100%正しいとは思っていません。でも成果主義を否定する経営者は、どうやって人を評価し、選別しようというのでしょうか。結局、個人的な好き嫌いになってしまうんです。そんなことを続けていたら、会社は必ず悪くなります。会社がもうかるようにするには、一定の問題があると分かっていても成果主義にせざるを得ないんです。

これは1/3賛成、2/3反対だ。数値には成果以外の要素が入るから、それを考慮した数値を開発すべきだ。判り易く云へば、成果主義はよいが結果主義は駄目だ。
松本さんは、成果主義が100%正しいとは思はないと言ひながら、問題点を補正するでもなく、成果主義と云ふ名の結果主義を採用した。結果主義を採用しても半分以上の人はうまく行くだらう。しかし半分以下の人は、たまたま周囲の状況が悪かったなどで会社を去ることになるかも知れない。半分以下だから会社の業績にはあまり影響しないが、それでよいのか。
これは松本さんではないが最近読んだ記事で、ドン・キホーテの経営方針も成果主義で、近くに競合店ができただとかは一切考慮しないさうだ。ユニーを完全子会社にしたが、退職者が続出してゐると云ふ記事だった。ユニー側従業員への説明会で、40代の処遇についての質問に、40代の管理職はほとんどゐない、役員はゐるが、との回答だった。店長は30代だからだ。そのため名門意識の強いユニーは退職者が続出したと云ふ。
松本さんの主張を聞いて、この話を思ひ出した。

十二月二十九日(日)
前職の会社で成功した研修制度も取り入れました。やり方はほぼ一緒で、新入社員をいきなり米国の研修施設に送り込み、6週間、徹底的に解剖や医療機器について学ばせます。帰国した瞬間から一人前の営業として活躍できるようにするためです。もっとも前職の会社のように「研修中の試験に落ちたら即座に『クビ』」とまでは、しませんでした。その辺りは甘かったわけですが、制度としては大きな成果を上げました。
いきなりアメリカの研修施設に放り込まれても、慣れるだけでも六週間掛かる人もゐることだらう。即座にクビではないのは「甘かったわけですが」ではなく、当然のことだ。
記事の始めに戻ると
前職の(会社名略)で僕がつくり上げた組織は、大学でいえば体育会でした。(中略)体育会は、目標を決めて突っ走る組織です。

目標を決めて突っ走るには、無理をしてはいけないと云ふ前提が必要だ。目標だけを決めると、員数合はせに陥る。本来は無理をしてうつ病になったら、会社は大損害だ。ところが嫌がらせで退職させることができれば、会社は大儲けだ。松本さんの主張は、日本で労働運動がきちんと機能してゐないことの悪用だ。

十二月三十日(月)
会社の組織は、代表取締役、役員、管理職、従業員に至る階層構造だ。松本さんは、まづ代表取締役に対してこのことを云ふべきだ。役員、管理職に言ってもよい。
ところが今回の日経新聞電子版では、従業員に言ってゐるとしか考へられない。「社員への要求も当然厳しく」「出て行ってもらうこともある」「研修中の試験に落ちたら即座に『クビ』」がそれを表す。
代表取締役、役員、管理職に云ふべきことを、従業員を対象に言った。これは問題だ。次に、基準を厳しくすると、付いて行けない人の割合が増える。世の中には怠慢な人、不誠実な人、自分勝手な人などがゐるから、1%くらいの脱落者が出ることは、仕方がないかも知れない。
厳しくすれば、5%、10%、20%と増える。さすがに50%になれば、労働組合騒ぎになるが、20%だと見逃がされることが多い。「多数決を取ってみろ」「皆が君は仕事が出来ないと言ってゐるぞ」とブラック企業なら言ひかねない。否、40%でも少数派だ。
私が、一人でも脱落者を出したら駄目だと主張する理由は、ここにある。職種変更で対応すべきだ。勿論、怠慢な人、不誠実な人、自分勝手な人などがゐるから、本当は脱落者が出ることも仕方がないのだが、それを云ふと、松本さんのやうな主張の人は、大手を振って大手町を歩くことだらう。あ、間違へた。大手を振って「出て行ってもらふ」と主張をするだらう。(終)

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