千三百九十八 テレビ小説「あまちゃん」の功罪
己亥、西暦2019、ヒジュラ歴1440/41年、紀元2679年、仏歴2562/63年
十二月二十三日(月)
朝のテレビ小説「あまちゃん」は、三陸鉄道の北リアス線(当時。今はJR山田線の沿岸部分が移管され、南リアス線と統合しリアス線)をモデルにした「北三陸鉄道」と、岩手県小袖海岸の「北限の海女」を舞台に、従来の視聴者層を超えて大変な人気になった。
私なんかは、放送が開始された最初の二か月くらいは番組を知らず、新聞のコラムや芸能欄に「あまちゃん」「じぇじぇじぇ」が登場するので、ずいぶん下品な表現だと顔をしかめたものだった。
後に朝のテレビ小説だと判り、試しに観ると面白い。今まで見逃した分を含めてすべて観た。とは云へ、見る人をはらはらさせながら最後に逆転する手法がだんだん判ってくると、面白さは半減した。
それでも最後まで楽しく観ることができたのは
(1)劇伴(ドラマの中の音楽)が優れる
(2)小袖海岸の大自然
(3)温かい人間関係(悪い人や憎まれる人がゐない)
の三つだった。

十二月二十四日(火)
放送された二年前に東北大震災があった。番組では誰も犠牲者が出なかった。これは小袖海岸の集落は高台で死者が少なかったためだが、久慈市では560人が亡くなり、これは100人に1人だ。岩手県全体では6200人、宮城県では12000名。
犠牲者のゐない筋書きは、ドラマを軽薄にした。大震災は最終回の少し前だったので影響が出なかったが、番組の中間だつたら、視聴率が大きく落ちただらう。
それ以上に問題なのは全国に、被害が少なかったと間違ったメッセージを送った。被災地が忘れ去られてしまった。

十二月二十八日(土)
大河ドラマ「いだてん」が、大河史上最悪の視聴率に終った。「あまちゃん」と同じメンバーが多いのになぜだらうか。スポーツ報知によると、58作中でワースト記録が五つもある。
(1)最速1ケタ視聴率転落 第6話
(2)最多1ケタ視聴率 全47話中42回
(3)連続1ケタ視聴率 42週連続
(4)単独回・歴代最低視聴率 3・7%
(5)期間平均・最低視聴率 8・2%

これは当然で、「あまちゃん」で人気が高かった三つの理由を忘れてしまった。特に、登場人物どほしの人間関係が冷淡で表面的なのと、悪人が努力もせず巧いことやって有名な落語家になるなんて駄目だ。「遠山の金さん」「水戸黄門」「暴れん坊将軍」で悪人が栄えたら、視聴率は激減するだらう。
「いだてん」の視聴率が最低だったので、「あまちゃん」に飛び火した。「あまちゃん」だって視聴率が飛びぬけて高かった訳ではなく、従来観た人が観なくなり、観なかった層が観ただけだと云ふ。
しかし「あまちゃん」の視聴率は2010年から2018年までの18作の中で9位だから、平均値だ。それに比べて「いだてん」は、歴代で最低だ。
「あまちゃん」の功は、能年玲奈が芸能事務所から干され、テレビや映画にまったく出演せず、芸名まで「のん」と変へなければならなかったことと、マスコミがそれを報道しなかったことだ。芸能界の汚なさがよくわかった。
「あまちゃん」の罪は、津波の被害を軽く印象付けてしまったことと、制作、原作、演出など関係者に慢心が生まれた。
津波の犠牲者は帰ってはこない。しかし三陸海岸を旅行して復興に協力することができるし、大仏を参拝して回向することができる。復興工事は急速に進む。完成する前の三陸海岸を訪問する最後の機会だ。(終)

「マスコミとJR東日本の横暴を許すな106」「NHKとJR東日本の横暴を許すな108」

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