千百九十六(モリカケ疑獄百五十五) マスコミの安倍批判は貴重だ
平成三十戊戌
九月十六日(日)
マスコミに一時悪いときがあった。かつての自民党対革新勢力の構図が崩れて、批判対象が無くなってしまった。しかしマスコミが復活した。安倍と云ふ批判対象が現れたからだ。
国会でモリカケ問題が取りあげられると、安倍の支持率は大きく下がる。暫くすると元に戻る。安倍を首相から引き摺り下ろすには、モリカケ問題をどんどん反復するのがよい。
二番目に、安倍の政策は経済産業省崩れの男が筋書きを描き、これは国民の幸福とは正反対であることを主張する。三番目に、安倍周辺の三人組が傲慢だ。四番目に、貿易問題でアメリカとの関係が終焉するが、安倍の輸出産業偏重では乗り切れないことを指摘する。

今回は三人組を取り上げよう。文春オンラインによると
9月3日の産経新聞。この日、週明け月曜の1面は、
「総裁選 はや不協和音」
だった。

中身は
《下村博文元文部科学相、西村康稔官房副長官、萩生田氏の主導権争いが起きたからだ。》
と3名の名前を書いていた。産経は主導権争いの具体例も書く。
《3氏がそれぞれ首相官邸に多数の案件を持ち込んだため、首相の京都入りの日程調整がつかなくなり、地元で動員をかけていた西田昌司参院国対委員長代行を激怒させた。》

翌日の読売新聞は
《もっとも、巨大組織にはきしみも生じている。細田派内では合同選対発足前に、事務総長の下村博文・元文部科学相と西村康稔官房副長官、萩生田光一幹事長代行の3氏が別々に会合や事務作業を行ったため、他派閥の議員からは「統率が取れていない。総裁選後の人事で要職を得たいがための猟官運動だ」と不満の声が上がっている。》

その二日後の日経新聞は
《(前略)政策論争より内向きの忠義立てや猟官が目立ってしまうようではさびしい。》
とチクリ。さらに、日経に登場した安倍首相インタビュー(9月4日)を念頭に置いてこんな言葉も。
《「3年で雇用と社会保障の改革を進める」。安倍首相は本紙に述べた。これまで放った矢の行方も見えませぬ、とお友達なら諭してもよさそうだが、党内にものを言えない空気が漂っているのだろうか。》

文春オンラインの論評も
これを読むと本当のお友達とは何か? と考えさせられる。あの3人は「首相周辺」だが本当の「お友達」ではないのだろう。いかに首相に気に入られるかという発想だけが源なのだろう。そこを日経は皮肉った。

文春オンラインの論評は、「首相周辺」の傲慢な言動にも言及する。
・「総裁選は党員や党所属議員ら限られた人にしか投票権がない。一般人にも届くような討論会をしても仕方ない」(首相周辺)※ 朝日8月22日
・党内では「石破氏を支持した議員は今後3年間、首相から徹底的に冷遇される」(首相周辺)※読売8月4日
・首相周辺は語る。「総裁3選後のレームダック(死に体)化を防ぐには、相手候補を壊滅させるくらいの圧勝しかない」※読売7月26日
いかがだろうか。「首相周辺」の強すぎる言葉。行間から伝わってくるのは虎の威を借りる狐の姿である。


九月十六日(日)その二
傲慢はまだある。読売オンラインによると
「石破氏応援なら辞表書け」…農相に「圧力」か

の見出しで
斎藤農相(石破派)は14日夜、自民党総裁選を巡り、「安倍首相の応援団の一人から『石破氏を応援するなら(農相の)辞表を書いてからやれ』と言われた」と明かした。千葉市で開かれた石破氏支持の党員集会で語った。斎藤氏は「圧力は良くない。首相の発想とは思わないが、そういう空気は打破したい」と訴えた。

安倍の周辺はどこまで傲慢なんだ。

九月十七日(月)
次は産経ニュースに載った短文の記事だ。
安倍首相の指示全文

の見出しで、本文は
北海道で震度6強の地震が発生したことを受けた安倍晋三首相の指示の全文は次の通り。
一、早急に被害状況を把握すること
一、地方自治体とも緊密に連携し、政府一体となって、被災者の救命・救助などの災害応急対策に全力で取り組むこと
一、被害の拡大防止の措置を徹底すること

これは誰に出した指示かが書いてない。産経ニュースは産経新聞のホームページだが、新聞本体より安倍偏向がひどい。新聞は偏向が酷過ぎると売り上げが減るから、最近は改善された。その分がホームページに凝縮された。ホームページは偏向することばかりを考へるから、誰に出したか入れ忘れたらしい。11日経過した今でも未修正のままだ。
自衛隊ヘリコプター墜落のときにも指摘したが、判り切ったことを言ってはいけない。今回は内閣府の防災担当に指示したのだらう。それは「政府一体となって」で判る。今回も判り切ったことや、無駄なことを言ってゐる。
まづ「早急に被害状況を把握すること」は当り前のことだ。もし担当部署がまったく動かないなら指示を出さなくてはいけない。しかしそんな筈はないではないか。
次に「地方自治体とも緊密に連携し」とあるが、「連携し」と「緊密に連携し」は、政府と地方自治体の責任範囲、意見が異なった場合の調整に影響を与へるのかどうか。
「政府一体となって」とあるが、このことを云はないと一体になれないのか。まあ人事権を握られて忖度ばかり繰り返すと、「政府一体となって」と云はないと他部門と連携はできない。
「全力で取り組む」とあるが、云はないと全力で取り組まないのか。「被害の拡大防止の措置を徹底」とあるが、被害の拡大防止と救援部隊の巻き添へ防止の優先度に影響を与へるのか。既に被害を受けた人の救出と拡大防止はどちらを優先するのか。

これらは防災担当部署や地方自治体が、普段からやってゐる。安倍がいちいち口出しをすることではない。余分に口を出すと、その対応に時間を取られるから、その分遅くなる。安倍は担当部署の報告を聞き、進言があればそれの調整に専念すべきだ。
災害まで自分の功績にしようとする。実にあさましい。トップに向かないタイプだ。そんな根性だからお友だち優遇ばかりをやる。

九月十八日(火)
9月12日の西日本新聞によると
政府の所得関連統計の作成手法が今年に入って見直され、統計上の所得が高めに出ていることが西日本新聞の取材で分かった。調査対象となる事業所群を新たな手法で入れ替えるなどした結果、従業員に支払われる現金給与総額の前年比増加率が大きすぎる状態が続いている。補正調整もされていない。(中略)専門家からは批判が出ており、統計の妥当性が問われそうだ。

これについて
誤差に対しては、経済分析で統計を扱うエコノミストからも疑義が相次いでいる。大和総研の小林俊介氏は「統計ほど賃金は増えていないと考えられ、統計の信頼性を疑わざるを得ない。報道や世論もミスリードしかねない」と指摘。

これについて厚労省は
増加率が0・8ポイント程度上振れしたと分析するが、参考値を公表していることなどを理由に「補正や手法見直しは考えていない」(担当者)としている。

国民は数値にだまされてはいけない。

九月十九日(水)
産経ニュースによると
安倍晋三首相、鹿児島で「平成の薩長同盟」を演出 「反安倍」鎮めた森山裕氏に論功行賞

と云ふ見出しで
9月の自民党総裁選で連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)が、正式な出馬表明の舞台に選んだのは、森山裕国対委員長の地元の鹿児島県だった。森山氏は先の通常国会対応で尽力し、「反安倍」に傾きそうだった石原派(近未来政治研究会、12人)を首相支持でまとめた。山口県選出の首相は森山氏への返礼の意味も込めて「平成の薩長同盟」を演出したともいえる。

薩長の演出により、多くの反発が起きることに気付かない。だいたい不人気大河ドラマ(≒排水路ドラマ)の視聴率は11%程度だ。安倍の考へることは、本当に低級だ。

九月二十日(木)
AERAdotに
文書が明るみに出した 加計学園と首相官邸の“関係”

と題する記事が載った。
朝日新聞取材班が、森友学園、加計学園問題報道の「中間報告」として、『権力の「背信」――「森友・加計学園問題」スクープの現場』(朝日新聞出版)を出版した。

で始まる。本文は
加計学園問題では、愛媛県今治市が公開した文書で、市の企画課長や課長補佐が2015年4月、「獣医師養成系大学の設置に関する協議」を目的に首相官邸を訪問したことがわかっていた。自治体の課長らが一大学の学部新設の件で首相官邸を訪問すること自体が異例なことだけに取材班はここに注目した。だが、面会の相手が官邸のだれだったのかは、その時点では確定的にはわかっていなかった。

この本は面白さうだ。(終)

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