千百三十六(その百十六) 「忖度」を悪い意味にしてしまった安倍
平成三十戊戌
五月六日(日)日本経済新聞の記事
安倍は「忖度」を悪い意味にしてしまった首相と云ふことで、歴史に悪名を残すだらう。流行語大賞にも選ばれた。悪い意味の「忖度」を使用した記事を紹介したい。日経電子版を引用すると
「忖度」しない経営人材を育成 三菱商事社長
と題した記事で
「一般的に多くの人は、(中略)どうしても上司のいうことを『忖度(そんたく)』する力に傾きがちです。しかし、『イエスマン』を評価してしまう人は経営に向いていない。(以下略)」
残念なことにイエスマン三人を閣僚に集めて、特区をごり押しした人が現れてしまった。こんな男は首相に向いてゐない。
五月七日(月)毎日新聞の記事
次は昨年12月29日の毎日新聞ホームページに載った記事だ。
<大学設置審>「加計、新設条件満たさず」 複数委員が認識
と題して
複数の委員が毎日新聞の取材に応じ、「獣医学部新設の前提となる4条件を満たしていない」との認識を示した。(中略)1人は「本来なら来年度も再度審査すべきだった。時間切れになった」と語り、来春開学の日程が優先されたことを示唆した。
記事は更に
設置審は教育課程や設備が大学設置基準に適合しているかを判断し、4条件は審査の対象外だが、委員の一人は「最初から4条件を満たしていないと思った。『他大学にできないことをする』というが、このカリキュラムでできるのかとの疑問があった。(以下略)」と話した。
設置審は翌年春の開学に間に合うための通常の認可期限となる8月末、加計学園の計画について判断を保留し、修正を求めた。この委員は、修正後の計画も「熟度が高くなかった」とし、「時間切れで認可になってしまった。本来なら来春に再度、審査すべきだと思った」と話した。
こんな出鱈目な忖度審査は、政権交代とともに取り消すべきだ。それとは別に特区は目的と実体が一年目から異なってゐるのだから廃止すべきだ。
五月八日(火)産経新聞の記事
次は1月3日の産経新聞ホームページの記事だ。
2018年問題…大学曲がり角 少子化直撃、定員割れ4割/統廃合が加速
と題し、まづ前文は
少子化に伴う18歳人口の減少が続く中、今年は関係者の間で、大学進学者が減少に転じると予測される「大学の2018年問題」が注目の的だ。(以下略)
本文は
(前略)昭和63年に計490校あった国公私立大は現在約780校にまで増加した。ただ、18歳人口が減少モードに再び入る平成30年以降は、本格的な統合・縮小期に入りそうだ。
獣医学科は定員が人数調整機能を兼ねるから、新設すれば濡れ手に粟で失敗しない。全国で大学が氷河期を迎へるのに、お友達と云ふだけでうまい汁を吸ふ。そんなことは許されない。お友達の経営する大学こそ真っ先に統合・縮小し、全国の手本となるべきだ。
五月九日(水)ダイヤモンドオンラインの記事
同じく1月にダイヤモンドオンラインは慶應義塾大学経済学部教授金子勝さんの主張を載せた。
モノ作りの現場を蝕み産業を滅ぼす「日本病」の正体
と題し、大手製造会社における無資格者による品質管理やデータ改ざんを取り上げ、1990年代の銀行不良債権の問題先送り、経営責任と担当官庁の監督責任を問はなかったこと、福島第一原発でも同じだったことを指摘する。そして最後に
森友学園・加計学園問題に見られるように、国の統治機構を動かしていく立場の人間たちまでもが、公共精神を失う状態に陥ってきたために、無責任体制がよりあからさまになってきているように見える。
政策や経営の失敗の責任を明らかにすることをためらわず、そのうえで、世界で進む技術進歩の方向性を見極め、大胆な産業戦略を立てることが求められている。
と結論を出した。
五月十日(木)日経BizGateの記事
日経BizGateと云ふページにマッキニーロジャーズのアジア太平洋代表パートナー岩本仁さんが
森友・加計問題...忖度は戦場なら悲劇
と題して昨年12月27日に記事を書いた。
名門企業の品質不正に揺れた2017年。国会では森友、加計両学園の問題で官僚の過度な忖度(そんたく)があったと野党が追及した。商工組合中央金庫の不正融資では第三者委が「過大なノルマに現場が声をあげることができない」問題を指摘。元官僚トップを推戴する経営陣への忖度がガバナンスを揺るがした。もしこれが戦場なら悲劇を生む。上層部の顔色を伺うことで地位を保った将校により旧日本軍が払った代償は余りにも大きい。
との前文に続き、本文は
現場が忖度をして言うべきことを言わなかったり上司の歓心を買うことばかりしたりする。「軍隊こそ上下関係絶対で横行しているのではないか」と誤解する人もいるかもしれないが、実際はその正反対だ。
ビジネス経験が長い元軍人から、こんな批判を聞いたことがある。「なぜビジネスの世界では会議で意見をはっきり言わない人が多いんだ」。日本企業の話ではない。欧米企業であっても、元軍人の目からみれば奥歯に物が挟まった言い方のビジネスマンが多いのだという。彼は続けてこう言う。「戦場では命がかかっている。言うべきことを言わないなんてあり得ない」。(中略)命を失っては昇進どころではないからだ。
記事は、企業合併の実例の最後を次のやうに締めくくった。
若いリーダー候補生に組織融和を考える経験を積ませた方が良い。将来さらに上の階層でマネジメントを担うようになった時、(中略)部下に忖度させてしまうような上司には育たないはずだ。
政界には閣僚、党役員、官僚に忖度させてばかりの男がゐる。(完)
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