千九十六 山折哲雄さんの三冊の書籍
平成三十戊戌
二月二十二日(木)「あなたの知らない空海と真言宗」
山折哲雄さんの著書を三冊図書館で借りた。まづは「あなたの知らない空海と真言宗」で、これは有益な本だ。空海と真言宗については、川崎大師の法要に参加したり講演会を聴きに行ったりしたが、ご利益宗教、秘密主義の宗教との疑惑を脱することはできなかった。今回この本を読んで合点が行った。
二月二十五日(日)
この書籍の優れたところを紹介しようと思った。しかし再度読み直すと
当時の大学には貴族の子弟しかおらず、エリート官吏として出世に箔をつける意味しかなかった
彼が目指したのは(中略)私度僧と呼ばれる山林修行者の道だった。
あるときは(中略)吹雪にあって苦しみ、またあるときは(中略)断食修行などを重ねた
語学力に加えて膨大な留学費用が必要だった。(中略)空白の七年間にも鉱物採掘に関わる山林修行者と接触し、彼らから留学費用の提供を受け、その見返りとして中国から最新の採掘・精錬技術を持ち帰るという約束があっても不思議ではない。(中略)空海は鉱物採掘に携わる渡来人から中国語を習っていたと考えられる。
など一章(二ページ)に一つづつ重要なことが書いてある。とうてい全部を紹介できるものではない。これだけ内容が濃いと190ページの小さな本ではあるが、真言宗ファン、空海ファンになることは間違ひない。
二月二十五日(日)その二「柳田国男が言いたかったこと」「能を考える」
「柳田国男が言いたかったこと」は正しくは「これを語りて日本人を戦慄せしめよ 柳田国男が言いたかったこと」だが題に入れると長すぎるので短くした。この2冊は「あなたの知らない空海と真言宗」の翌年に出版された。1年しか違はないのに、この2冊は読んでも頭を素通りしてしまった。
そのことを敢て書いたのは、前回の山折さんの感想に書いた「意味のある話がなかった」と同じ現象が今回も起きて、今でもあのときと同じ現象が起きたことが新鮮だった。
二月二十八日(水)追加の三冊、「あなたの知らない法然と浄土宗」
「あなたの知らない空海と真言宗」が良かったので、「あなたの知らない法然と浄土宗」も良いだらう。さう思って読んだところ頭を素通りした。これは山折さんが悪いのではなく、浄土宗が悪いのでもない。末法に入ったと信じられて、鎌倉仏教は三学が単純になった。
三月三日(土)「さまよえる日本宗教」「日本の仏教を築いた名僧たち」
「さまよえる日本宗教」は山折さんが雑誌などに執筆した小片を集めたもので、各章、各節は独立してゐる。第一章第一節の内村鑑三は何回も転職し何回も流浪した。読後の感想は明治はさう云ふ人でも活躍できる時代だった。否、昭和60年辺りまでさう云ふ時代が続いた。
「日本の仏教を築いた名僧たち」は、第一章の日本に伝はるまでの歴史で、ゴーダマ・ブッダについて上座部の記述がまったく無いのは不満だ。しかし15行しかないので省いたのは仕方がなかったのか。
役小角についても記述したのはよいことだ。最澄について具足戒を捨て大乗戒にしたものの
12年間の籠山(ろうざん)をはじめ厳しく修行させると定めた。
実質的には具足戒を捨てたわけではなく、具足戒が堕落したので新しい形式に改めた。後には大乗戒も貴族家の座主や僧兵など堕落する。(完)
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