　福田恆存

千八十　西部ゼミナール(福田恆存、大相撲、西部さん追悼)
平成三十戊戌
一月二十日(土)
本日の西部ゼミナールは、次の話があった。
福田恆存の「言論はむなしい」の意味は判らないが、日本は１億２千万人ゐるから幾ら執筆、講演しても変化がない。
massは大衆と訳すが誤訳。正しくは大量。
modernは模型が流行する社会。
古代はローマ、現代はアメリカ。
偏差値が高ければ高いほど、有名大学を出れば出るほどmass化する。それはパターン化されるため。
相撲問題は、ガチンコ教が出てきたため問題になった、説教されたのにすぐパソコンを操作すれば殴られるのは当たり前、リモコンを壊さうとしたが叩きつけるところが無いので頭に叩いた、冗談だが。

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一月二十一日(日)
偏差値が高ければ高いほど、有名大学を出れば出るほどmass化する。それはパターン化されるため。は現在の緊急課題だ。
明治政府は、維新戦争経験者で構成された。云はば実務家だ。ところが時代が経つと、特に軍部はパターン化された人間ばかりになった。そして最後は自滅した。
戦後の高度成長の時代は、民間の成長が著しく公務員は給料が低いため、実務型の人ばかりが活躍した。しかしプラザ合意(とバブル崩壊)の後は、パターン化された人間ばかりになった。特に悪いのが「規制緩和だ、市場主義だ」と叫ぶ連中で、経済産業省脱落組に多いことが獣医学部特区問題で明らかになった。
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一月二十一日(日)その二
西部さんの貴乃花への悪口は気になる。私は貴乃花親方を支持する。最初は貴乃花親方の頑なな態度に賛成ではなかったが、多くのマスコミが貴乃花を異常なくらい批判するので、これらは相撲協会の息が掛かった記事だと判った。それから貴乃花支持になった。
私は西部さんと同じで相撲には見世物の要素もあると考へる。しかしモンゴル勢の部屋を超えた野合は異常だ。またガチンコの親方が出た以上、それを見捨ててはならないと考へる。相撲協会もこれまでガチンコを推進してきたのだから、今更路線を変更すべきではない。
ガチンコでありながら白鵬のやうな乱暴者を出さない規範が、昔からの文化だとすることが保守思想ではないだらうか。

一月二十一日(日)その三
妻が数分前に帰宅して西部さんが自殺したと云ふ。インターネットで検索するとそのとおりだった。勿論驚いたが、心配はしてゐない。
今から十数年前に国会図書館で西部さんの著書を読んだとき、死ぬときの方法は考へた(或いは書いた、周りに言った)とあるので、私は自殺を３０％予想した。残りの７０％は入院中に維持装置を止めてくれと近親者から病院に伝へると予想した。

私が心配しないのはそれが理由ではない。藤井さんと云ふ雑誌の後継者もできたし、佐伯啓思さんは西部さんの思想のよい部分を引き継いだし、国会議員の西田昌司さんもゐる。
唯一の心配は、東京ＭＸテレビの放送を今後どうするのかだけだ。

一月二十二日(月)
西部さんは、昔からの習慣を軽視し、代はりにフランス革命以降の保守思想を尊重した。だから自殺することを選択肢に入れることを躊躇しなかった。
しかし多くの人は昔からの習慣を重視し、これを私は文化と呼んだ。昔からの習慣では自殺は悪いことだから。
西部さんはかつてカタカナ語交じりの日本語を使ひ、最近になってこれを改めた。死ぬときの方法も改めたかと思ったが、駄目だった。西部さんは講演で得たお金や私財を使って保守思想を広めようとする一生だった。稀有の思想家だった。(完)

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