百十八、長期政権下の野党議員は逮捕されるのも仕事のうち
平成二十二年
一月十六日(土)「石川知裕議員逮捕」
石川知裕議員が昨日逮捕された。新聞やテレビは大変な騒ぎである。
石川議員は昨年北海道の十勝で行われた中小労組の交流集会に挨拶に来られた。だから最大の応援をしなくてはならない。
まず民主党はあわてる必要はない。戦後長期に亘り自民党が政権を独占してきた。政権交代こそ野党の任務であった。しかし自民党は財界と組んで豊富な資金を懐に入れてきた。そのようななかで野党が資金を集めるのは大変である。
昨年政権を獲得したとはいえ、長期野党時代の政治資金で逮捕されたのだから、これは政治家の仕事の一部である。民主党はなんら恥じる必要はない。このことを堂々と国民に訴えるべきだ。
一月十七日(日)「逮捕するしないは警察、検察の胸三寸」
一昨年、麻生首相(当時)の豪邸を見に行くツアーで逮捕者が出る事件があった。最初に地元の渋谷警察署から、私邸の前では五名ずつ分かれて歩くように指導されていたが、行く途中で逮捕された。
そのときの様子がユーチューブで放映されて視聴ランキングの上位になった。新聞でも大きく報道された。警察の発表では参加者が暴力を振るったということだったが、実際には私服の警視庁公安幹部が「公妨だ」と叫ぶや警察官が参加者の手や足を抑えてそのまま連れて行った。あれで公務執行妨害だと道路を歩いているだけで逮捕されかねない。新聞に多くの識者が「行き過ぎだ」と述べていた。
昨年は、品川駅前の京品ホテル争議でピケ隊が強制排除される事件もあった。テレビ局の中継車や新聞社が多数来て大変な騒ぎだった。ピケ隊が排除され記者会見も終わったのちに隣のレストラン街の大きいビルの広場で、私服警察数名が新聞記者らしい一人を椅子に座らせて何か話していた。私が立ち止まって後ろから見ると、公安幹部らしい人がこっちをにらみつけ肩を怒らせて向ってきた。私は一寸立ち止まっただけなのでそのまま歩き続けると、その公安幹部も戻った。あのときずっと立ち止まっていたら、そしてテレビや新聞が注目する事件ではなかったならば逮捕された可能性がある。
制服の警察官は別にして、公安や検察は国民からかけ離れた組織である。
今回の石川議員事件は、報告書不掲載なんだから逮捕は行き過ぎだ、という識者の意見も多い。何よりも国会開催直前、民主党党大会直前の逮捕は不自然である。
一月十八日(月)「サッカーの試合に例えるとよく分かる」
サッカーの試合で、ゴールキーパー(石川議員)の力が及ばず一点とられたとしよう。このとき取られたチームは、ゴールキーパーをチームから出て行ってもらおう(党離脱)だとか連盟から除名してもらおう(議員辞職)と考えるはずがない。相手チームから一点取り返せ、と奮起するはずである。
日本航空の法的整理問題では、自民党政権化の昨年6月に日本政策投資銀行が融資した670億円が焦げ付くことになった。国民負担となる。民主党は自民党長期政権下で生じた政官癒着と日米癒着を徹底的に攻めればよい。
一月十九日(火)「自衛隊の将校も怖れる内務官僚」
私が二十五年ほど前に務めていた会社に、自衛隊の将校を定年退官し再就職した人がいた。体格が立派だが温厚な人格者であった。三島由紀夫事件のときにはちょうど市谷駐屯地に勤務していて、「あのときは大変な騒動だったよ」と述懐しておられた。
会社の休憩室で昼休みに皆でテレビを見ていると、中曽根康弘が首相に決まったというニュースが放送された。
それを見た自衛隊元将校が、「中曽根は内務官僚だからなあ。内務官僚は怖いよ。」と語った。中曽根は戦前に内務省に入ったのち短期現役制度で海軍主計中尉となり、戦後は内務大臣官房事務官、香川県警務課長、警視庁警視監察官を歴任し国会議員となった。
戦前に、陸軍の参謀本部と海軍の軍令部は政府とは独立の組織であった。戦後の警察の公安委員会と検察庁の法務省からの半独立は、これらとよく似ている。そればかりではない。自民党長期政権の弊害で、官僚組織全体が政治から半独立の組織となってしまった。
一月二十日(水)「検察が公平ではない根拠」
官庁ではこれまでに天下りや特定団体への発注や最近では天下り隠しということまでがさかんに行われている。これらの事実こそ官庁が公平ではない何よりの証拠である。
今回の石川議員の逮捕について、検察側から「石川議員が一回行方をくらました」「小沢幹事長が碁をやったり酒を飲みに行ったりした」とその理由がマスコミに話されている。これらの発言こそ逮捕するかしないかが検察の胸三寸にあることを示している。
検察が公平だという意見は間違いではない。合法な人は起訴しないからである。そして検察が公平ではないという意見もまた正しい。
国民は検察の両面性に気がつかなくてはならない。マスコミに踊らされないよう注意が肝心である。
一月二十一日(木)「今こそ官僚組織の洗濯を」
戦前に参謀本部と軍令部が政治から独立していたのは、当初は意味のあることであった。時の首相が野党党首の選挙区で演習を行わせるようなことは防がなくてはならない。しかし他から干渉されない組織は官僚化する。戦前の軍部がいい例である。
検察は外部から人の入らない密閉組織である。このような組織にいると自分の出世のことしか考えなくなる。自民党長期政権で垢のたまった官僚組織の洗濯は民主党の使命である。
一月二十二日(金)「新聞の世論調査は無視すべきだ」
多くの国民は、在宅は軽罪で逮捕は重罪だと幻想している。しかし麻生首相(当時)の豪邸を見に行くツアーのように逮捕されても起訴されないこともあるし、在宅でも起訴され実刑となることもある。
逮捕された直後に、各新聞社が一斉に世論調査を発表したが、その手際のよさには驚く。本来は検察側と小沢氏側の双方の言い分を聞き、法律専門家の意見も参考にしながら答えるべきだ。それなのに逮捕というニュースが流れた直後に電話で質問する。その結果鳩山首相の支持率が何%だと言っても、まったく意味がない。
意味があるとすれば、新聞がどれだけ偏っているかを示している。世論調査の結果と質問項目から各新聞がどれだけ偏っているかを調べるとおもしろい。
一月二十三日(土)「捜査開始のきっかけを明らかに」
検察はどういう経緯で鳩山首相と小沢幹事長の二つの案件の捜査を開始したのか。類似した違法が他にもある場合に、その案件を選んだ経緯は重要である。これを明らかにしない限り、検察は公平とは言えない。
一月二十四日(日)「旧運輸省担当官の犯罪」
昨日の神奈川新聞には次の記事が載った。
- 「それじゃあ少ない。80万人にしろ」
年間18万人と報告したとたん、旧運輸省の担当官は不機嫌になり、やり直しを求めた。1993年に開港した福島空港。日本航空OBの楠見光弘氏は、建設計画が持ち上がった際の需要予測で、”捏造”を強要されたことを苦々しく思い出す。
- 楠見は「それは無理です」と反論したが「おまえは頭が悪いのか。とにかくそう計算しろ」とすごまれた。
- 実際の利用客は80万人をはるかに下回り、日航は2009年1月に撤退した。
- 空港が一つできると保守管理などの関連会社が10社程度作られ、役所OBが天下っていく
民主党は、自民党長期政権下のこれら政官癒着をどんどん是正すべきだ。日航の債務超過問題では、旧運輸省の官僚から退職金の返納を求めるべきだ。民主党が攻撃する番である。
昨日は元外務事務次官が「通過・寄港も事前協議の対象に含まれる」と嘘の答弁をしていたことも明らかになった。これも民主党はどんどん活用したほうがいい。
一月二十五日(月)「名護から始まった波動を全国に」
名護市長選に基地反対派の稲嶺進氏が当選した。ここに至るまでずいぶん妨害があった。まずは鳩山首相と小沢幹事長への捜査、駐米日本大使の発言とそれを大々的に報道した新聞、石川議員の逮捕、昨日はイノウエ議員の「米の忍耐には限界」発言もあった。日本も遠慮なく「日本の忍耐にも限界」と言い返すべきだが、その前に稲嶺氏が勝利した。
自民党長期政権下で日米関係は今や世界で最も異常な外交関係となった。今回の勝利こそ、異常な外交を是正する好い機会である。名護から始まった波動を全国に広げようではないか。
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