九百八十八(その十一) 日本農業新聞に載った正論
平成二十九丁酉年
六月十七日(土)
今回の獣医学部騒ぎは、これまで何回も指摘してきたやうに、お友達濡れ手に粟商法が諸悪の根源だ。ところが読売新聞と産経新聞は安倍内閣妄信の立場から、濡れ手に粟商法を何としてでも正当化しようと岩盤規制に穴を開けるだの獣医は不足してるだのと、筋違ひのことを並び立てる。これらは安倍首相への妄信或いは盲信以外の何物でもない。
私だって安倍内閣が消費税増税を延期したことと、七十年ぶりの憲法改正をすることを支持してきた。しかしお友達濡れ手に粟商法は絶対に許してはならない。前川前事務次官への個人攻撃も絶対に許してはならない。だからこの件に限り安倍内閣に反対してきた。この姿勢こそ本当の安倍政権支持になる。

読売新聞と産経新聞の主張がどれだけ間違ってゐるかは、日本農業新聞にも載ったので、これを紹介したい。

六月十八日(日)
記事は
産業動物獣医師の偏在という課題をどう解決するのか、本質の議論がなされずじまいだ。(中略)開設を目指す岡山理科大獣医学部は定員160人。全国16の獣医系学部と学科を合わせた定員数930人の2割に当たり、開設されれば全国最大となる。(以下略)
農水省によると、全国の獣医師数は14年に3万9000人。同省は「全体として不足しているのではなく、地域や職域に偏在がある」と分析する。犬や猫など小動物診療に当たる獣医師が4割と最も多く、牛や豚など産業動物の診療に従事する公務員や団体などの獣医師は約2割にとどまる。
ここまで同感だ。日本農業新聞は産業動物の獣医師を増やす立場だから、「約2割にとどまる」と表現したが、これは小動物に比べて少ないと云ふ意味で、診療に従事する獣医師は6割に留まることに注目する必要がある。ここが人間の医師との違ひだ。次に産業動物の獣医師について
地方に獣医学系大学を開設すればこうした課題を解決できるかというと、単純ではない。14年8月に開かれた国家戦略特区ワーキンググループの議事録にも「地方に獣医学部があっても、必ずしも地方に獣医師が増えるわけでない」との意見が残る。
議事録によると、文科省は獣医学部のある全国の16大学を都市型(札幌、東京、名古屋、大阪近郊)と地方型に分け、入学率と就職率を分析。地方では、所在地以外の地域から入学し、他地域に就職する傾向が見られたとして「地方の場合は卒業生がその地域に定着するかというと、必ずしも高くない」と指摘している。
問題点はここだ。愛媛に獣医学部を新設しても地元ではなく全国から入学し、卒業後は全国の大都市に移動する。それが判ってゐながら、四国の家畜水産業を振興させるふりをしてお友達濡れ手に粟戦略をごり押しするから、私はこの案に全面対決することにした。
最初は安倍首相批判は避け、二番目に加計さんへの批判は避けた。しかし前川さんへの個人攻撃に及んで安倍政権との全面対決に至った。

六月十九日(月)
記事は次の結論で終る。
獣医師といえば多くの人がペット診療を思い浮かべる。畜産業すなわち食を守るという、重要な職業であることを認識しない獣医学生もいる。大学教育を通じ、社会的な意義や職業としての面白さを学生に伝えることが重要だ。志を持った学生を地方でつなぎとめるには、(以下略)
以下略の部分には、給与や勤務形態の待遇改善が必要なことが書いてある。私の子は獣医学科なので我田引水になるといけないので省略した。畜産業の獣医の待遇を改善するには農業者の収入を増やす必要がある。農業者の収入を増やすには円高をプラザ合意以前に戻す必要がある。円高をプラザ合意以前に戻すには輸出産業の意識改革が必要だ。
会社が事業を行ふ理由は一つには組織(従業員を含む)の維持のため、二つには社会貢献のためだ。ところが日本では役職と身分が未分化のため出世競争になる。そして組織の維持をはるかに超える活動となる。これが円高を誘発し農業など基本産業を阻害する。
特区、特区と九官鳥みたいに叫ぶ連中はそこまで考へてゐるのか。やたらと特区を新設したらますます円高になるではないか。そもそも今回は四国の畜産水産業の振興に名を借りた濡れ手に粟商法だから論外だ。

六月二十一日(水)
ここで話を変へて、読売新聞の記事を紹介しよう。内容から京都版と思はれる。記事は
世は空前の猫ブームだ。アベノミクスならぬ「ネコノミクス」という造語が生まれ、関連グッズや写真集が売れる。だが、府内では昨年度に908匹が殺処分されるなど、流行の背後には飼い主のモラルを巡る根深い問題がある。今年5月に開設2年を迎えた府と京都市が共同運営する「京都動物愛護センター」(南区)を訪ね、殺処分はどうすればなくせるのか、考えてみた。
で始まる。本文に入り
同センターでは、職員の獣医師が1匹ずつ薬を注射して安楽死させる。手のひらに載る子猫は、注射後、あっという間に動かなくなる。機械での処分より猫の苦痛は少ないが、獣医師の精神的負担は大きい。
 「1日20~30匹を処分することも。動物を助けるために獣医師になったのに、なぜこんなことを、と思うこともある」。同センターのある獣医師は、苦しい胸の内を打ち明ける。
地方自治体の獣医師は不足してゐる。それは前にも書いたが、地元の動物病院で勤務医を募集するところと契約して、週に2回臨床をするなど採用側は努力しなくてはいけない。そもそも猫の殺処分は獣医師が行ふ必要はない。知事、副知事、市長、副市長、府議会議長、市議会議長が交代で行ったらどうか。注射のやり方は獣医師が教へるから心配ない。(完)

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