八百二十五の三 国立大学の存在意義と、ゼロ免課程の存在意義

平成二十八年丙申
四月二十三日(土) 子供に使ふ教育費用
親が子供に使ふ教育費用と、子供の偏差値に、強い相関関係があることは教育関係者の常識になつてゐる。上の子の場合、中学は公立で、塾は学費の安いところを選んだ。だから高校は進学校ではなく、大学入試で一浪することになつた。
私は予備校を幾つか回り、この予備校がよいと推薦したが、ここは絶対に駄目だと云つた別の予備校の手続きを済ませた後で云はれたため、私は関はることができなかつた。その学校は成績上位者の学費が割引になる。上の子は八割引きで、妻が選んだのはそれが理由だつた。この予備校だと国立は無理だと予想したところ、しかし私立に合格できた。
国立だつたら下宿が可能、私立だつたら自宅通学。これが我が家のできる上限だつた。それにしても上の子の同期生やその兄弟は金持ちが多い。二浪、三浪や、獣医学科に入学した後で医学部に入り直した人までゐる。

四月二十四日(日) 国立大学だと標準家庭
下の子の入学した大学では学生生活調査が発表されてゐる。それには親の年収帯が載つてゐて、私は丁度中間のグループだつた。私立大学で獣医学科のようなところは親の年収が高く、私は最下位のグループだ。国立大学だと私が中間になる。
下宿で私立大学に進学させられる親はそれほど多くはない。首都圏に住むと気が付かないことがある。地方では自宅から通学させることのできる私立大学で子供に合つたところは少ない。ここに全国の国立大学の存在意義がある。下の子は高校の競技を続けたいので、教育学部でもサークルの強いところを選んだ。サークルの同学年は皆、同じでほとんど県外ださうだ。下宿なら国立、自宅通学なら私立。さういふ家庭は多い。

四月二十五日(月) 全国だと標準家庭、首都圏だと下位
私の年収帯(定年前)が中間グループといふのは全国レベルの話で、首都圏で見たら中の下になると思ふ。かつては東京も庶民が住む下町と、少数の人の住む山の手に分かれた。だから社会党、共産党推薦の美濃部革新都政が誕生した。しかし今では下町にマンションが乱立し、庶民の町は消滅寸前だ。
首都圏にもかつて埼玉県安行の植木の町、川口の鋳物の町、城南から横浜に掛けて京浜工業地帯、近隣の農業地帯と全国と変はらなかつた。諸悪の根源はプラザ合意で、あれ以降、首都圏と全国に格差がついてしまつた。
首都圏は私立でも下宿できる親が多いのだから、私立大学の多くを全国移転すべきだ。そして移転した大学は残留した大学より優秀になることを義務付ければよい。或いは残留した大学は補助金を無しにすればよい。

四月二十八日(木) 該当学科卒業生の就職先
上の子は国立大学を第一志望にしたから、私は四年前その大学の説明会に参加した。農学部の教授が、入学するときはその学科の卒業後の就職を考へたほうがいいと、そつと教へてくれた。この教授は親切で正直な人だ。
これが私立だつたらかうは行かない。受験者を一人でも多く増やせ、受験料で一人当たり幾ら儲かるとばかり営業に走る。卒業生の就職先はブラック企業だらうと離職率の高いところだらうと無理やり押し込む。そして就職希望者の就職率100%とパンフレットに大きく書く。うつかり、うちの学科は就職が大変ですよ、ブラック企業ばかりです、なんて云つたらその教授は退職勧奨など大変なことになる。
余談だが、今から三十五年くらい前に、第一勧業銀行南浦和支店で十年物の長期国債を購入しようとした。一番利率がよいためだが、担当の男子行員が長期国債は止めたほうがいいですよといふので、それなら何がよいか質問すると、五年ものの中期国債を指さした。そこで中期国債を購入した。今なら、こんなことを云つて逆に金利が長期低迷したら長期国債のほうがよかつたことになり、訴訟騒ぎになり兼ねない。だから今はそのようなことは絶対に云はない。プラザ合意以降に西洋の悪習が次々と流入する前の良き時代とも云へるし、プラザ合意以前のすべての産業に余裕のあつた時代とも云へる。この行員は優秀な人なのだらう。ふと、大学教授の発言にこの行員を思ひ出した。

五月一日(日) 学科に関係する就職先の比率
ゼロ免課程は、教員免許の取得を卒業要件としないだけで、実際は教員免許を取得する学生は多く、教員希望者で教員に採用される比率は、教員免許必須課程と変はらない。教員希望者より企業や公務員を希望する学生が多いことを考慮しても、この数字は立派だ。
ここで全国の国公私立大学で学んだ学科と関係する職種に就職する学生の割合はどの程度なのか調べる必要がある。法律や文学や経済を学んでコンピュータ業界に就職する人の数が膨大なことからも、結果の予想はつく。例へば法学部の場合、司法試験に合格したり、企業や官庁の法務担当となることは、学科と関係した職種に就いたことになる。しかし単に公務員になつたといふのは駄目だ。文部行政や厚生行政を専門とする訳ではないのに事務職として就職したためだ。労働監督官なら関係する職種と云へるが。
ゼロ免課程の学生が学んだ課程を生かした職業に就職する比率は、全国の国公私立大学で学科と関係する職種に就職する学生の比率よりかなり高いのではないだらうか。私は前から、社会人全部が教育者にならなくては駄目だと主張してきた。石原莞爾の書籍を読むと石原も同じことを云つてゐる
この逆も云へる。教育に詳しい人が教員以外の立場で社会人が教育者として行動するにはどうすればよいかの見本を示す。そのためにもゼロ免課程は必要だと思ふ。

五月四日(水) 就職する職種の開発まで考慮して学科を設定すべきだ
近年、奨学金を返せない人が出てゐる。卒業後に正規雇用に就職できなかつて人のうちの一部だ。偽善だけが取り柄のシロアリ民進党が対策として給付型を提案するが、これには反対だ。一番よいのは日本最悪の既得権集団である連合を解体することだ。しかしシロアリ民進党に出来る訳がない。
二番目の方法として奨学金は大学を連帯保証人にすべきだ。卒業生が返せない場合は、病気など理由のある場合を除き大学が連帯する。これで大学は本気で就職に取り組むだらう。私が六年間教へた都立特別支援学校では、就職コンサルタントといふ予算上は東京都教育庁に所属する方が企業を回つて就職先を開発するとともに、学校に常駐し生徒を指導した。そして卒業生の就職率は毎年、ほぼ100%(就職を希望しない生徒がゐるため)を達成した。
教育学部のゼロ免課程は今年限りで廃止が決まつてゐるが、就職コンサルタントが活動すれば新しい人材を世に送り出す課程になつたのではないかと惜しまれる。(完)


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