六百三十九、オリンピック選手育成機能としての各大学の体育会(その一)

平成二十六甲午
十一月二十四日(月) 社会人チームの代替
たまたま或る大学の体育会系の部と縁があつた。その部はオリンピック選手をこれまで育成してきたのでまづその部と競技について興味を 持つた。次に日本全体の各大学、その他の競技についても調べると大学体育会は奥が深い。その内容をこれから紹介したい。

かつては企業が高卒の選手を入社させて社会人選手として育てる役割を果たした。しかし企業に余裕がなくなり、手放すところが多くなつた。 例へば我が家の近くに東芝の女子バレーボール合宿所があつた。近くの道路に高校バレーボール部と書かれた観光バスが停車してゐる のを見たこともある。しかし十五年前に廃部になつた。その後を調べると複数の企業から出資された資本金を元手に自立したチームとなつた。 選手は東芝よりチームの運営会社に出向を経て移籍した。経営は順調に進展し昨年はVリーグで準優勝した。
企業が育成機能を減少させるなかでこのような成功例もあるがほとんどはチームを解散させてしまふのだらう。併せて高学歴化が進み大学 体育会は企業チームの代替を果たすようになつた。しかし大学によつて体育会は千差万別である。

十一月二十四日(月)その二 全国大会上位でないとスポーツ推薦では入れない
私の下の子は中学、高校と顧問の先生に恵まれたこともあり、或る競技を続けた。高校二年のときはその先生が転勤になりかなり苦労を したが、部長も務めて県大会のシード権も獲得した。ここまでやるには学校で練習が終つた後に県立体育館に行つたりスポーツセンターに 行つたりしてその努力は見事なものだつた。その分、上の子に比べて学業の成績は悪かつたがこれは問題ではない。
或る国立大学が県内の高校を招待する試合にも参加しそれなりの順位だつた。国立大学にはスポーツ推薦が無いが、私立にはあるので 調べてみると全国大会で上位何番以内に入らなければいけないものばかりである。うちの子は県大会だからその上の地方大会で上位に 入り、更に全国大会で上位に入る。さう云ふ成績を出すにはよほど練習をしなければ駄目なのだらう。

十一月二十五日(火) オリンピック出場者数
オリンピック選手の出身(あるいは在学)大学を調べたところ、インターネットで次の数値を見つけた。直近のロンドン大会とその四年前 の北京大会である。
ロンドン大会選手数
日本体育大学22
日本大学12
早稲田大学11
明治大学10
xxx1大学10
順天堂大学7
拓殖大学7
筑波大学7
天理大学7
北京大会選手数
日本体育大学25
筑波大学16
早稲田大学16
日本大学15
法政大学15
東海大学9
xxx2大学9
順天堂大学7
同志社大学7
人数が同じ大学は五十音順に並べた。チームで出場する同じ競技の選手が多い場合はXXXにした。もしその大学がオリンピック選手数 を宣伝するのであれば売名行為として批判しなくてはいけない。今回大学の意志とは無関係に集計したのでxxxxにした。一つ目のxxx1 は十人中六人がホッケーの選手、二つ目のxxx2は九人全員がホッケーの選手である。

十一月三十日(日) 日本体育大学
日体大のホームページを調べると学友会が学生と教職員を会員として組織され、総務部、運動部、応援部、厚生文化部、サークル同好会 がある。運動部には四十の部、厚生文化部は五つの部、サークル同好会は十八の同好会・研究会・サークル・クラブ・チーム、準公認団体 として九つの同好会・研究会・サークル・クラブがある。
1.運動部はオリンピック選手を含む大学上位の部である。
2.厚生文化部は普通の大学の文化部とは異なり研修部、家政部の二つが 活動し、放送部、英会話部、写真部の三つは休部中である。研修部は体操、バスケットボール、ダンス、バレーボール、サッカーを練習する 教員採用試験対策コース。家政部は生け花で希望が多ければお茶も習ひ女性十名。
4.サークル同好会も普通の大学と異なりすべてが 体育系でアルテイメット・チーム、基礎スキー研究会、準硬式野球部、インラインホッケークラブなどあまり知られてゐない競技である。しかし大学 の選手権では国内上位である。
5.準公認団体もすべて体育系である。
体育大学のため学友会が学生と教職員を会員として組織される。ここが日体大の特長であらう。

十一月三十日(日)その二 日本大学
日本大学は日本大学保健体育審議会に所属する運動競技部が三十二、大学本部学生支援部に所属する文化団体連合会が十三と 同じく大学本部学生支援部に所属する体育団体連合会が六、そして十五の学部に所属する多数の学術、スポーツ、文化、音楽の団体 といふ三種で構成されてゐる。
日大の保健体育審議会はホームページが充実し「スポーツ日大」といふ頁を見ると、競技部一覧、 体育施設、学生寮について詳細に説明が為されてゐる。「スポーツ日大について」には
日本大学が輩出してきたオリンピック選手は、これまでに延べ400人を超え、現在も約1,800人の学生が日本大学保健体育審議会の 各競技部で、寮生活を送りながら、競技と勉強の両立を図り、“日本大学から世界”をめざして日々研さんを積んでいます。

とある。総合体育館と寮が世田谷区八幡山にある。体育館は重量挙げ、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、フェンシング、 空手、剣道が使用する。球技場は地下一階にあり、その他の競技の練習場は地下二階と地下三階にある。地下一階がトレーニング室の 部分は体育館の屋根に高さを合せて一階と二階があり、一階には歯科診断室とメディカル診断室が入る。前者は月曜日、火曜日、水曜日 17時〜20時にマウスピースの作成を行ひこれは重心(運動軸)を安定させるとともに集中力を高め精神的にリラックスさせ、後者には 高気圧カプセルがある。隣接して学生寮がありここは体育館使用各部のほかに弓道、自転車、体操、スケート、サッカーの各部が使用する。
稲城に総合グランドがありラグビー部とサッカー部が使用する。寮は戸田市笹目にもあり卓球部、射撃部、バドミントン部が使用する。以上 に含まれない各部は個々に練習場、寮を持つ。

日大は学部数とその偏差値から大学名を高めることは有意義であり保健体育審議会の施策は正しいと思ふ。一方で或る競技で高成績を 収めた或いはオリンピック選手を何人輩出したといふ実績が、大学名を上げることには役立つても各学部の名声を上げることには役立つて ゐない。十五の学部があり三十二の運動競技部があれば、競技と関はる研究をすべての学部が多数できるはずである。例へば文理学部 英文学科が海外の大学スポーツ実績を簡単に調べるシステムを研究したり、生産工学部が選手の意識を持続するシステムを研究するなど 無数に考へられる。全国大会で好成績を収めたりオリンピック選手を輩出したときは、各学部がそのことに貢献した研究を併せて大々的に 発表し、各学部の偏差値向上に役立たせるべきだ。
私は偏差値で大学の序列を決めることには反対だが、世の中がそれで評価する以上、スポーツを利用して全学部が偏差値地を向上させ 十年以内に日東駒専からMARCHに仲間入りしMARCHNと呼ばれるようすべきだ。

十一月三十日(日)その三 早稲田大学
早稲田大学にはスポーツ科学部がありスポーツ推薦或いはスポーツ自己推薦の高校生はここにほとんどが入学する。スポーツ推薦は各 運動部がスカウトした高校生、スポーツ自己推薦は高校生が早稲田を志望した場合である。しかし後者も全国大会出場と高度である。高校 の成績が平均3.5以上は早稲田としては低い。
スポーツ科学部は一年次の学費が170万円で一番高い。最初は体育会各部の大学補助費を学部が負担するため高いのかと思つたが、 人間科学部が169万円、教育学部数学科が169万円でそれが原因ではなささうだ。
スポーツ推薦80名、スポーツ自己推薦40名、一般入試100名。 センター試験のみ50名、センター試験と一般50名、センター試験と競技歴 50名。370名中170名は競技歴に関はつた入学である。さういふ学部はあつてよい。このような学部は学業と競技を両立させやすい。ただし 卒業後も選手となるか体育関係に就職しないと不利である。インターネットの評判書き込みを読むと早稲田全体の偏差値を下げるから廃止 しろといふ極論もあるが、私はこの意見に絶対反対である。偏差値の低い体育系学部の多いなかで早稲田といふ高い偏差値と相乗効果で 二回連続大学三位をもたらした。その新事業意欲には心から賛成する。


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