六百十三、労働組合OBとの歓談
平成二十六甲午
九月十四日(日)
今との著しい相違
昨日、組合員OBを主に対象にした歓談の場を定期的に開かうといふ打ち合はせがあつてOB三人が集まつた。
その後、昔の話に花が咲いた。当時は自分の争議が終ると他の組合員の争議に積極的に参加した。専従のS書記長
は団交に一回出るだけであとは我々がやつた。そんな話も出た。その活気がなぜなくなつたのだらうか。一つは
全労協全国一般東京労組を脱退したからだ。労働組合から解決金センターになつてしまつた。もう一つは専従が
三人に増えた。これで団交や労働委員会は専従の仕事といふ分業が進んだ。
当時はS書記長に批判もたくさん言へた。そんな話もあつた。
九月十六日(火)
解決金センター
かつて解決金の10%をカンパしてもらつた。その根拠としてお金を落として戻つてきたときは10%を謝礼に払ふ。
それと同じださうだ。この説は今回初めて知つた。その後、カンパは15%になり、消費税増税後は17%である。尤も
他の労組で中小非正規の解決金は額が少ないから20%貰ふといふ話もあり、それに反対ではない。
反対ではないが「解決金をこれだけ獲得するのにこんなに執行部や組合員が労力を費やした。だから団交や抗議集会
に今後も参加したり場合によつては主導してください」。これが一番よい。二番目は「これだけ費用が掛かつたのだから
例へば八年六ヵ月の組合費を前払ひし、組合員でゐてほしい。もちろん次の就職先でその間に労働争議になつたときは
全力で解決するよ」でもよい。しかし分裂前のS書記長(当時)は絶対に嫌だらう。自分の争議を抱えない人が組合にゐると
うるさい。私は副委員長のときも今の書記長のときも組合員や相談者とは対等に接するから誰も反感は持たない。しかし
役員のなかには威張る人や不誠実な対応をする人もゐる。
或るOBから組合のやつてゐることは非弁活動だといふ話もあつた。かつての抗議集会を伴ふものは労組活動で法律
(弁護士)事務所は絶対にやらないから非弁活動ではない。しかしA副委員長が倒れた後は抗議集会がまつたくなくなつた。
唯一組合が絡んだのは首都圏ネツト抗議行動に私が午前半休を取り参加した一回だけである。
九月十七日(水)
他の集会
一人のOBは、先日参加した抗議行動は行つてみたら中核派主催で公安が周りを囲んでさかんにメモを取つてゐたといふ
話をした。労組を引退しても抗議行動には参加する。これはよいことである。そこに今の人たちとの相違を感じる。大学紛争
世代なのだらうか。
我々もよく名前を知る或る労組に中核派が一人入り込んだ。そんな話もあつた。一番よいのはセクトに加盟しない人である。
二番目によいのはセクトに加盟しても労組に来たら労組の一員として活動する人である。悪いのはセクトの意向で活動する
人で、他の団体の意向で活動するとその組織に所属してゐないのと同じである。所属しない人が所属したら組織が破壊される。
九月二十日(土)
年齢と労働運動
或るOBからは委員長が高齢でも頑張るのは偉いと組合内では言はれても世間はさうは見ないのではないかといふ話があつた。
世間では五十五歳あたりで役職定年、六十歳で定年、その後は再雇用といふ会社が多い。七十代後半で委員長を続けると弊害も
多い。私は高齢の人には更に活躍してほしいといふ気持ちはある。これは日本全体で世代の引き継ぎがうまく行つてゐないことが
原因である。戦前が偏向した社会だとすれば、戦後もマッカーサに洗脳された偏向した社会である。それでも社会党総評ブロックが
安保条約反対や米帝国主義反対を掲げた時代は、一方の保守派も伝統思想を持ち、それが拝米の抑止力となつた。
今は社会党と総評はなく、西洋猿真似の自民党だけが目立つ。だから高齢者にはいつまでも活躍してほしいといふ気持ちはある。
気持ちはあるが弊害も目立つ。例へば数か月前に、うちの労組に好意的な労組の大会には来賓として出席したほうがよいですよ
と私が言つた。すると組合名は届けたものを使ふのが当り前で勝手に変へるなら抗議すべきだといふ話になつたから、それは
裁判が終る前の話で今は敗訴してこちら側が名称を変へたのだから意味がないと言はうとしても話を遮りいつまでも同じ話が
続くので、それなら全国ネットを脱退しますか、と私が言つたら脱退はしないといふことで収まつた。
結局そこの組合にはメッセージを送つて済ますことになつた。次に別の組合の大会もある。うちの労組は他の団体と関はる役員と
組合内に留まる役員の考へに大きな隔たりがあり、これは将来重大な影響をもたらす。例へば外に出るとほとんどの組合旗は赤
である。ところがうちの組合では赤は変な思想の団体だと勘違ひされるから使ふなと主張する副委員長がゐる。それを解消するため、
土曜の大会に別の副委員長に参加することをお願いし私は了解されたと思つた。しかし次の会議のとき無理だといふ話で、それは
私も専従ではないからよく判る。代はりに誰か出席するかメッセージを送るか決めるのがよいが、うちの労組はへたに提案すると
口論になつたり怒鳴り合ひになる。また怒鳴り合ひになるのは嫌だから何も言はず
そのまま大会の日にちは過ぎた。
九月二十一日(日)
解決金の話
うちの労組が分裂した翌年辺りの財政が苦しいときに、ごく短期間だが専従者の給料に解決金歩合制を採用したようだ。ようだといふのは私も
よく知らない。私が歩合はよくないと言つたところ、いやあれは向ふ側に戻つた前書記長がやつたことだといふことで一見落着した。本当にさうか
は判らないがそのほうが円満に収まるのでさういふことにしてある。組合財政が厳しいから専従者の給料を一時歩合にしたのだらうといふこと
で非難すべきものではない。
歩合制は短期ならよいがそれ以上続けるのはよくない。労働組合は労働条件の向上を目指すべきで退職条件ではない。勿論あんな会社には
戻りたくないといふ人は多い。さういふ人の意向は尊重すべきだが歩合制といふことになると職場復帰を目指す闘争を退職に持つて行くことに
なりかねない。
分裂前に専従で分裂後にメンタルヘルスの活動をしてゐる活動家が前に別の角度から同じことを言つてゐた。一度解決金で退職すると新しい
職場でも解決金で退職すればいいやとなつてしまふ。これだと本人のためにならない。これも正論である。(完)
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