三百六十、労働組合は、総資本対総労働の心を持てば組織問題はすべて解決する


平成25年
二月三日(日)「総資本対総労働」
労働組合を運営して行くと、いろいろな問題に突き当たる。しかし「総資本対総労働」の心を持てばすべて解決する。しかしこのことをいふと左派と言はれる人でも驚くことが多い。私が、社会主義を目指すためではないといふと半ば安心する人が多い。
「総資本対総労働」は労働組合が組織を運営するためのものである。決して政治を目指したものではない。そもそも人間には事業性とでもいふべきものが心底にある。民間企業で、会社が倒産するくらいのストライキを始めたとする。数週間もすると仕事をしたほうがよいのではないかと思ふようになつてくる。かつての総評から民間労組が次々と脱落したのは、この心理によるところが大きい。だから政治を目指して労組を運営してはいけない。
公営事業や公務員は事業性の心理が働かない。おそらくは上層部も事業意識を持たないためであらう。

二月五日(火)「組織分裂」
うちの組合は数年前に分裂騒ぎを起こした。別の労組と事務所を統合し不動産管理、労働運動、労働研究の法人を作り将来は連合、全労連、全労協に次ぐ第四極にしようといふ構想が原因である。今でも疑問だがそのような法人を作る理由が判らない。資本側は取引き企業間で出向がある。労働側はないから力量に大きな差があつて負ける。だから私は単産の総会で労組どうしで執行委員を出向させたらどうかと提案した。これにもつとも反対したのが事務所を統合する相手の労組の委員長だ。あまりにはつきりと「やりません」と断言するから単産の会長がとりなす発言をしたほどだつた。
執行委員の出向には反対して事務所の統合はなぜ進めるのか。この法人から給料をもらはうとする人達がゐたのではないかと今でも思つてゐる。或いはマスコミに騒がれてまた有名にならうとしたのではないか。総資本対総労働の心を持てば、そんな人達は出ないから分裂は避けられた。

二月八日(金)「企業別組合と連合と」
企業別組合が全労働者への波及も狙つて賃上げを要求するといふのは、かつての国民春闘である。ところが今は違ふ。数年前に電機連合幹部が非正規雇用を使はないと国際競争力を維持できないと発言し、世間から批判を浴びたことがある。企業別組合はシロアリ集団と化してしまつた。
シロアリ集団の集合体がニセ労組シロアリ連合である。だから消費税増税のときはシロアリ民主党に圧力を掛けて増税をごり押しした。かつての共産主義か社会民主主義かで路線対立のあつた時代には、社会民主主義の主張は一旦は正しかつた。社会党は永久に野党だつたからだ。しかし社会民主主義を目指す社会党右派と民主社会主義を目指す民社党の、それぞれ支持労組が合併するとなぜ野田派や前原派と同じ新自由主義になるのか。
日本のすべての労組は総資本対総労働を取り戻すべきだ。これは社会主義革命が目的ではない。労組が本来の目的を失はないためである。

二月十五日(金)「解決金カンパ」
合同労組は組合費だけで運営するのは難しい。うちの組合の場合は労働争議で解決金を得た場合は給料でもらつたとした場合の所得税+住民税程度の額をカンパとして組合に収めてもらふことにしてゐる。ところが解雇や退職勧奨で組合に相談に来て、本人も退職したいが会社への恨みもありこのままで済ませられないといふことで退職金に解決金を上乗せし円満退職といふことがよくある。
解決した組合員は解決するや脱退することが多い。少しは義理で残留すればいいのにと呆れることもある。退職金は一定額まで無税だから僅かのカンパでも損をしたといふ気持ちになるのかもしれない。解決金カンパ方法は分裂前からうちの組合で採つてきた方法だが、組合のほうも解決金カンパが目的の組織になりがちである。だから昨年の全国の労組の集会のときに「示談屋になつてはいけない」といふ意見が他所の組合から出され、それはまつたくその通りである。うちの労組が全労協に所属してゐた時代に、労働運動ではないといふ批判もあつたし、全労協を脱退し連合に加盟したのもそこに根本の原因があると私は思つてゐる。分裂後は連合を自然脱退の形になり無所属である。
労組に留まれるか示談屋になるかの違ひは総資本対総労働を保てるかだうかしかない。これが三十年間労働運動と係はつてきた私の結論である。

二月十六日(土)「組合員どうしのトラブル」
たまたま或る友誼組合の事務所に行つたときの話である。新卒で就職し数年といふ社員がパワハラ退職勧奨で前から相談に来てゐた。今、就活者の間で流行語のブラツク企業といふやつである。何回も団体交渉を行ひ会社も非を認めて円満退職の代はりに解決金を払ふことになつた。本人も金額には満足した。ところが和解文書に謝罪の言葉がないといつて怒り出し別の組合員とあわや乱闘といふところを皆で止めて事なきを得た。私も「組合員どうしなんだからやめよう」と止めた。
労働者どうしが対立してはいけない。総資本対総労働の気持ちを常に持つべきだ。さうすれば解決金からカンパを出すときも損をしたとは思はないし組合も本人のために最大限の努力をするはずだ。一番よいのは円満退職ではなく職場復帰を第一目標に掲げることだ。本人もこんな会社には二度と戻りたくないといふ気持ちがあらう。しかし違法な退職勧奨は許さない。さういふ闘いの最前線に立つことが総労働のためになる。(今回の話は個人を特定しないやう状況を少し変へた。)

二月十七日(日)「組織運営二段階論」
組織を運営するときに収入より支出が多いと、いつかは破滅する。だから支出より収入を多くすることは組織に取り必須である。しかし収入が多くなつても今までの方法を続けることが多い。本来はここでカンパに頼る方法を少なくすべきだ。もちろん退職希望者の金銭相談も来るものは拒まずで受け入れるべきだが、我々は総資本対総労働だから困つた労働者は見捨てず相談に乗るのだといふことを承知させ加入させる必要がある。
本来、個人加盟労組は最初は運営が大変だから昔の地区労などが応援すべきだ。全国各地では平和センターなど名前を変へながら自治労などが応援してくれることも多い。労組の組織率を上げるために有効な手段ではあるが、カネの援助だけだと自立できない。人の応援や相談者を回したり、執行委員を出向し合ふなども必要である。このようなことをするにはすべての労組が総資本対総労働の気持ちを復活させる必要がある。(完)


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