三百十六、竹中平蔵は御用学者だ

平成24年
十一月十日(土)「竹中氏の無意味な論説」
日経BPネットに竹中平蔵氏の「比較優位の産業が海外流出する深刻な空洞化」といふ記事が載つた。日本の経済学者は欧米猿真似で何の役にも立たないことが改めて判る。竹中氏は冒頭で
「日本の貿易赤字の原因は、円高やユーロ危機、資源輸入増ということ以上に、産業空洞化が大きい。民主党政権の経済失政が続く限り、産業空洞化は加速して、国民はデフレに苦しむことになる」
と書いてゐる。まづこの書き出しからして失格である。日本の貿易赤字は円高で製造部門が海外に移転し空洞化した。円高と空洞化は一体である。それなのに円高と空洞化と両方を挙げてゐる。しかも円高は今に始まつたことではない。プラザ合意で昭和60年代に発生した。
更に重要なことがある。日本の企業は製造部門が海外に移転したのであり、日本企業が消滅した訳ではない。だから経常収支は相変はらず膨大な黒字である。財務省の昭和六十年以降の「国際収支状況」を見れば一目瞭然である。この膨大な黒字をどう解消するか、或いは黒字を解消しないならどう国民生活を守るかを、経済学者は考へるべきだ。

十一月十二日(月)「貿易赤字は歓迎すべきだ」
判りやすく言へば東京芝浦電気或いは王子製紙、十条製紙が都内の芝浦、王子、十条の工場で稼いでゐたとする。自民党長期政権の弊害で首都圏に人口が集まりすぎた。だから三社は工場を北海道から九州の各地に移転した。当然東京の製造利益(さういう用語が経済学者の間にあるか不明だが、猿真似御用学者のことを調べるのは時間の無駄だから論じない)は赤字になるが本社が東京にある三社の経常利益は増大する。そんなことは誰でも判るのに、猿真似御用学者は赤字だ、赤字だと騒ぎ立てる。それに引つ掛かつて新自由主義を奉じるのが野田、前原、岡田、その他のシロアリどもである。

十一月十八日(土)「外国企業が日本に進出するのは現状ではよいことではない」
「いくつかの主要な日本企業は、本気で中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)生産や販売の拠点を移すことを考えている。場所が中国であれ日本であれ、企業活動にとってマイナス要因を多く抱える国からは、どんどん企業が去っていく。一方で、企業にとって魅力ある国には、世界中から企業が集まっていく 」
世界中から企業が集まるかどうかは円高かどうかで決まる。だからプラザ合意以降の円高を解消すべきだ。ところが竹中氏は経常黒字は放置して制度だけ変へれば魅力ある国になると思つてゐるらしい。だから野田のように消費税を上げて法人税を下げるシロアリ嘘つき政治屋が出現する。
海外の企業が集まるのはよいことではない。かつては日本の慣習を守つた。今はハゲタカフアンド方式の経営をするし英語、英語と騒ぐ。日本に進出するなら日本語を習得すべきだ。更に悪いことに外資系を渡り歩く低質な連中がゐる。私の勤務する会社が17年近く前にサイベースといふ当時世界第二位のデータベースの日本法人と取引した。今は不明だが当時は「日本サイベースの連中は寄せ集めだ」と社内で噂したものだつた。日本法人の経営陣が一斉に解雇されるといふ事件もあつたがその前だつたか後だつた。一斉解雇の理由は判らないが「あれは日本の商習慣を理解しないアメリカ本社が悪い」といふ意見が有力だつた。
中小企業ではもともと将来のことは判らない。一方で大手は定年まで雇用するから人間の流動が少なく外資はあちこち渡り歩く連中の寄せ集めになる。日本で雇用の流動化といふと改善すべき大手は影響せず、中小は悪化する。中小を現状固定して大手を流動化すべきだ。これで外資も寄せ集めではなくなる。そして日本に進出する企業は日本語の使用と日本の習慣の遵守を守らせるべきだ。世界から企業を集めるのはそれからでも遅くはない。

十一月二十三日(金)「竹中氏は平衡機能を考へない」
本来は貿易はないほうがいい。国内で完結すべきだ。欧州は全体で一つの国である。それは言語を見れば判る。欧州の言語はハンガリーやフインランドの例外を除けば、ゲルマン系、ラテン系、スラブ系の違いはあつても文法や発音は同じである。アジアは異なる。欧州はもともと全体で一つの国なのだからが貿易は当然である。まづアジアが真似をする必要はない。
しかし明治維新以降は貿易を拡大したから、まづ現状維持すべきだ。ここで円高なのは経済の平衡作用である。本来は企業の海外進出は認めるべきではない。すると国内産業はブレーキが掛かり円安になる。海外進出もこれまで進めてきたから現状程度は認めるべきだが、これ以上認めないよう新しい流れをアジアから作るべきだ。
日本の経済学者は欧米猿真似だからアジアから独自の流れを作り世界に広めやうといふ意識が欠乏してゐる。
「本来なら日本国内にとどまって、多くの雇用を生み出し、高い給料を払ってくれる比較優位の産業(製造業など)が海外へ出て行ってしまっている可能性がある。」
プラザ合意以降の円高では、企業は収益を減らすか賃金を減らすかしかない。中小零細の純民間では人減らしやボーナス削減で既に行はれてゐる。ところが大手は業界内社会主義若しくは企業内社会主義が達成されてゐるからニセ経営者とニセ労組が既得権を手放さない。だから企業は存続のため海外移転を与儀なくされる。
竹中氏は国内に留まり多くの雇用を生み高い給料を払つてくれると主張するが、それは無理である。少数を雇用し高い給料を払ひ残りの業務は非正規雇用で帳尻を合はせるしかない。だから国内に留まつても円高の原因は続きそれでゐて国内の不均衡は拡大するからよいことがない。

十一月二十四日(土)「経済学者のすべきは円高をプラザ合意以前に戻すことだ」
経済学者が今すべきことは円高をプラザ合意以前に戻すことだ。そんなことできないといふだらう。この程度のことができないようでは学者の資格がない。まづ残業を禁止すべきだ。二番目に労働者が希望する場合を除き非正規雇用は禁止すべきだ。三番目に下請けを禁止すべきだ。四番目に企業内労組は禁止すべきだ。これだけやればラザ合意以前に戻せるのではないのか。
ところが竹中氏は投稿の最後に
鉱物性燃料の輸入も増えていく。今後も日本の貿易は弱含みが続くと見るべきだろう。
と締めくくつてゐる。経常収支の黒字幅を減らすのはよいことではないか。黒字が増へると円高が進む。それなのに黒字増大のみを主張する理由は、竹中氏は純民間ではないからだ。私学とは言へ大学教授は公務員と同じだ。経済の不況の影響を受けない。円高のほうが海外に行つたときに得だし、海外の文献も安く購入できる。国内の生活も輸入品で贅沢ができる。
日本経済をよくするには、すべての経済学者の給料を失業者や非正規雇用を含めた労働者平均月収にすることだ。さうすれば彼らも必死に考へるだらう。文部科学省に認定された大学といふ権威にすがる限り、日本の経済学者は御用学者のそしりは免れない。(完)


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