二百八十一(甲)、平成十六年の勞基法改正(小宮山洋子批判、その三)

平成二十四年
六月十日(日)「解雇理由の条文化」
平成十五年まで労働基準法に載つてゐた解雇制限は、30日前までに通知するかその分の平均賃金を支払へといふものだつた。これは解雇の手続きを定めたものであつて解雇の自由を認めたものではない。ところがこの条文をかざし法律に詳しくない労働者を解雇する経営者があとを絶たなかつた。
平成十五年に解雇条件を明文化することになり、それは最高裁の判例に沿ふといふ触れ込みであつた。ところが最初の案は解雇が不当な場合は労働者側に立証責任を負はせるものであつたので、民主党などの努力で使用者側に負はせるといふ最高裁の判例に戻すことができた。このとき自民党など与党は衆議院、参議院ともに過半数を維持してゐたので、民主党などの努力は多大であつた。
このとき有期雇用についても契約期間の延長などが併せて行はれたが、このときはそれほど問題にはならなかつた。

六月十一日(月)「有期雇用は原則禁止とせよ」
本当の有期雇用はあり得る。イベントの要員などである。ところが今は有期雇用を常用雇用の代はりに使ふ悪徳企業が現れた。これは許し難いことだ。有期雇用の期間中に労働組合に加盟したらおそらく次回の更新はされないだらう。或いは次回の更新時に、今回限りで更新しないといふ条文を契約書に入れられるだらう。
残念だがこのような条文を入れられて契約満了となつた労働者の裁判が相次いだが、みな敗訴した。そのような契約書に署名捺印したといふのがその理由だ。つまり有期雇用者は労働運動ができない。黄犬契約を結ばされたに等しい。小宮山は参議院で民主党が少数派であつても、平成十五年の民主党の活躍に倣ひ有期雇用を原則禁止までもつて行くべきだ。

六月十二日(火)「有期雇用企業を公表せよ」
厚労省は有期雇用を繰り返す企業名と該当する労働者数を公表すべきだ。厚労省の公式の立場は有期雇用の繰り返しは違法ではないし悪徳でもないといふことだ。だつたら違法ではなく悪徳ではない企業名を事実として公表するのに何の問題があるか。
民主党は少数野党だつたときの活動を取り戻すべきだ。

六月十四日(木)「派遣と有期雇用」
昭和六十年に労働者派遣法といふ天下の大悪法が成立した。電機労連(現、電機連合)が社会党に圧力を掛けたと当時言はれた。このころ大企業労組の隠しベアも問題になつた。富士通労組は電機労連委員長藁科の出身組合であり、連合(当時は全民労連、その前は全民労協)会長の竪山は東芝労組出身で電機労連の前委員長だつた。その連合結成直前に日本中のすべての労働組合の模範とならなくてはいけない富士通労組が「富士通は他の(電機の)組合から『富士通さんはウルトラCがあるから』とうらやましがられる」と隠しベアを職場委員会で公然と言つてゐた。
そのようなときに成立した労働者派遣法と、そのようななかで結成された連合の実体を小宮山は知つてゐるはずだ。もし「知りませんでした」といふのなら東電の輪番停電のときの蓮舫と同じでお粗末すぎる。女性の政治家でも故市川房枝氏や現職では北海道の工藤仁美議員のように立派な人もゐるが、どうも最近の特に野田派前原派の女性議員はお粗末な連中ばかりである。
労働者派遣法より更に悪いのが今国会に提出された有期雇用法案である。小宮山は朝日新聞ではあるまいし偽善言辞ばかり吐いてないで少しは民主党の厚労相らしく振る舞つたらどうか。

六月十六日(土)「悪徳社長」
平成十五年の労働基準法改定のときに最初の案が変更されたことについて、私が勤務する会社とは別の或るソフトウエア会社の社長が「最初の案だつたらクビにできた技術者が何人もゐた」と残念がつた。ソフトウエア業界といふのは本当に悪質な業界である。採用するときはどんどん採用して客先に放り込み、返品(実際にこの業界ではこの用語を使ふ)されて次の放り込み先がなくなると退職させる。三十五歳定年説は本当の話である。かつては高収益産業だつたから間接部門や自社製品開発に回せたが、今はその余裕がなくなつた。
平成十五年は自民党政権だつた。厚労相や官僚の発言では最高裁判例に沿つたといふのが最初の改定案だつた。ところが労働側の立証責任は最高裁判例ではなく、修正に修正を重ね可決されたものが本当の判例で、そのためこの業界ではぬか喜びする悪徳経営者が続出した。

六月十七日(日)「民主党は野党時代の民主党と社会党を見習へ」
社会党は万年野党だつた。しかし国会ではがんばつた。日本は世界で一番成功した社会主義国と言はれるところまで持つて行つた。民主党は野党時代の民主党、社会党を見習ひ労働者派遣と有期雇用を必要のある場合のみ、そして労働者が希望すれば正規雇用にすることを最終目標に、とりあへずその方向に向かふべきだ。(完)


小宮山洋子批判、その二
小宮山洋子批判、その四

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