二千六百四十三(朗詠のうた)本歌取り、萬葉集巻第十九
新春前甲辰(西洋発狂人歴2025)年
一月二十九日(水)
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あしひきの山坂越えてゆき更る年の緒長くしなざかる越にし住めば大君の敷きます国は都をもここも同じと心には思ふものから語り放け見放くる人目ともしみと思し繁しそこ故に心和ぐやと秋付けば萩咲きにほふ石瀬野に馬だき行きてをちこちに鳥踏み立て白塗の小鈴もゆらにあはせ遣りふりさけ見つつ憤る心の内を思ひ伸べ嬉しびながら枕づく妻屋の内に鳥座結ひ据ゑてそ我が飼ふ真白斑の鷹

同じく長歌で
あらたまの年行き更り春されば花のみにほふあしひきの山下とよみ落ち激ち流る辟(さき)田の川の瀬に鮎子さ走る島つ鳥鵜飼ともなへ篝さしなづさひ行けば吾妹子が形身がてらと紅の八入に染めておこせたる衣の裾も通りて濡れぬ

反歌の表示なし  紅の衣にほはし辟田川絶ゆることなく我れかへり見む
あしひきの山坂越えて越の国 萩が広がる石(いは)瀬野と 激し水落ち辟(さき)田川 四年豊かな草木山川

反歌  辟(さき)田川ところ分からず石(いは)瀬野は或いは高岡石(いし)瀬の辺り
四年は国司の任期。次は
大船(ぶね)にま梶しじ貫きこの我子を唐国へ遣る斎(いは)へ神たち

外(そと)国へ妻と娘が旅に出る事なき祈る斎へ神たち

次は
そらみつ大和の国は水の上は地(つち)行くごとく船の上は床に居(を)るごと大神の斎へる国そ四つの船船の舳(へ)並べ平けく早渡り来て返り言(こと)奏(まを)さむ日に相飲まむ酒ぞこの豊御(み)酒(き)は

反歌  四つの船はや帰り来(こ)としらか付く我が裳の裾に斎ひて待たむ
そらみつの空飛ぶ船は地(つち)の上走るが如く だが地(つち)は暑くなり過ぎ壊れる如し

反歌  地(つち)からは油を汲まず燃やさずに生き物すべて永らへる星
次は
大宮の内にも外にもめづらしく降れる大雪な踏みそね惜し

大宮と与野と浦和の見沼沿ひ大雪積もり真白き筋に


一月二十九日(水)その二
巻第二十へ入り
百隈の道は来にしをまた更に八十島過ぎて別れか行かむ

百(もも)曲がり鋼の道で鹿児島へ船で八百波奄美の島へ

特急はやぶさで西鹿児島まで、船で沖永良部島と奄美大島まで行ったときの回想。
防人(むり)に立たむ騒きに家の妹(いむ)が業るべきことを言はず来ぬかも

先の戦防人として亡くなるの人々敬ひ国の行く末

防人の歌が美しいのは、貴族が閑に任せて花鳥月を詠ふのと異なるからだ。
ひな曇り碓氷の坂を越えしだに妹が恋しく忘らえぬかも

はがね道碓氷の坂の赤き色高き橋見る 乗り合ひの窓より既に使ひ終はりて

反歌  はがね道碓氷の坂をぎざぎざのかみ合はせにて昔登るも
次は
いざ子どもたはわざなせそ天地の堅めし国そ大和島根は

いざ子ども風暖めるな土掘るな海を汚すな生き物消すな
(終)

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