二千二百五(和語優勢のうた)「鶴の一声」か「バカの一声」かは、取り巻きで決まる
新春前癸卯(西洋未開人歴2024)年
一月七日(日)
コンピュータ専門学校の教師をしてゐたときに、卒業生を求人する企業から、たくさんの資料が送られて来た。その中で記憶にあるのは二社だ。一社は、社長の挨拶に「ちょっとエッチです」とあった。あちこちの学校に送るから、印刷会社で製造した立派な冊子である。思ふに、ちょっとエッチな人は「普通です」と云ふだらう。ものすごくエッチだから「ちょっとエッチです」と言ったのではないか。
もう一社は、社長の写真映りが極めて悪かった。龍之介の物語「将軍」に、次の一節がある。
「露探か?」
将軍はかう尋ねたまま、支那人の前に足を止めた。(中略)後にある亜米利加人が、この有名な将軍の眼には、Monomania じみた所があると、無遠慮な批評を下した事がある。――そのモノメニアックな眼の色が、殊にかう云ふ場合には、気味の悪い輝きを加へるのだつた。

この文章を思ひ出すほどだった。小生が後にこの会社へ転職するとは、まったく予想しなかった。因みに直接本人に会ふと、眼光は普通だ。よほど写真映りが悪いのだらう。
小生が専門学校教師を辞めて一年ほどして、ソフトウェア業界はひどい不況に陥った。求人票を出した企業の半分は倒産しただらう。会社の特長は、社長がちょっとエッチなだけですと云ふ会社は危ない。小生が転職した会社も大変な人減らしが続いた。
ここで問題なのは、「社長、この挨拶は直したほうがいいですよ」「社長は写真映りが悪いから、文章だけにしたほうがいいですよ」と云ふ人が周りにゐるのか。或いは云っても大丈夫なのか。
取り巻きが鶴か馬鹿かの分れ道社員総てを取り巻きとして


一月八日(月)
昔はホームページの数が少なかったので、問題のあるホームページを紹介するホームページがあった。問題ありのページにリンクを貼って、どこどこが問題だと指摘する。写真映りの悪い社長も登場した。会社のホームページに自分の写真を載せたためで、写真にリンクを張られたあと問題点は「危なくて何も言えません」など書かれた。他のページの指摘は具体的に書いてあるので、よほど写真が危ないと感じたのだらう。一年くらい掲載されたが、会社がそのことを知り写真を削除したため、そのホームページも掲載を取りやめた。
社長の取り巻きは、秘書室長の怪(あやし)気(げ)狂子(仮名)だった。そもそもこの会社は、求心力が無い。だから社内のそれぞれが、辞めさせたい部下には意地悪のし放題だった。求心力の無い人間は、社長になってはいけない。下が真似をする。経営の鉄則である。更に社員総てを取り巻きにすべきだ。二番目の鉄則である。特定の取り巻きを作ってはいけないことを暗示する。

一月九日(火)
マンションの代行管理会社にも似た話在るも 今までは波風立てず皆が収まる

反歌  歳を取り日々穏やかが大切に心を保ちその日を和む(終)

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