二百十五、清武発言支持

平成二十三年
十一月十三日(日)「プロ野球巨人軍清武代表」
巨人の清武代表が渡辺恒雄氏を批判した。渡辺氏は読売新聞社の代表取締役会長・主筆であり、プロ野球巨人軍の取締役会長である。私は清武代表を支持する。
既に決まつたヘツドコーチ人事を、契約書を交わす当日に、鶴の一声でヘッドコーチから降格させて江川をヘッドにしようとした。
私が渡辺氏に悪い印象を持つ理由は、プロ野球のコミツシヨナー人事も、球団の統合や譲渡もセパ交流戦もすべて渡辺氏の鶴の一声で決まる。渡辺氏はプロ野球の闇将軍、闇コミツシヨナーである。
以前は渡辺氏のことを各スポーツ紙が「ナベツネ」と呼んだ。渡辺氏が何か発言すると「ナベツネ、吠える」といふ見出しが一面に載つた。ところが渡辺氏が記者たちに向つて「なんだお前ら、犯罪者でさへ呼び捨てにしなくなつたのに、ナベツネ、ナベツネと呼び捨てにしやがつて」と吠えた。
記者会見で原稿に「私は犬ではないので吠えません。」といふくだりもあつたらしい。さすがにこの部分は読まなかつた。
それ以降、各紙が一斉にナベツネをやめた。その言論統制ぶりには驚く。

十一月十四日(月)「アメリカの真似が日本のプロ野球を駄目にした」
野村は万年最下位だつた楽天を二位にまで上げたが契約満了を理由に解任された。落合もセリーグで優勝し昨夜現在日本シリーズ二連勝だが、契約満了で解任が決まつてゐる。
日本は監督が中心で運営すべきだ。アメリカみたいにフロントの権限が強すぎるのは合わない。好成績を残した監督を解任するのも合わない。中日は今からでも再考すべきだ。

十一月十七日(木)「江川事件と一場事件」
五十歳以上の人は、巨人と聞いて江川事件を思ひ出し不愉快になる人が今でも多い。当時は巨人フアンの中にも「小林投手は好きだつたので巨人フアンをやめた」といふ人が多かつたくらいである。巨人の選手はあの事件までは球界の紳士だつた。移動のときもきちんとしてゐた。ところがあの事件が起きてからは、だらしなく歩くようになつたそうだ。
それから二六年後に巨人は一場事件を起こした。当時の渡辺オーナーと球団社長、球団代表の三人がそろつて辞任した。
ところが辞任した渡辺氏がいつの間にか球団会長に返り咲き、江川をヘツドコーチにしようとして今回の騒動に至つた。これほど悪い冗談はない。巨人軍悪役そろひ踏みである。

十一月十八日(金)「アメリカの猿真似が球団の赤字を招いた」
一部の選手の収入は高すぎる。アメリカの真似をするからこういふことになる。日本では何億円も稼ぐ人はゐらない。その代わり引退した後や二軍の選手が生活できるようにすべきだ。
アメリカの球団は黒字である。日本はほとんどの球団が赤字である。アメリカの一部だけ真似するからこういふことになる。菅直人の消費税騒ぎと同じで一部だけ都合のよいところを真似してはいけない。

十一月二十日(日)「渡辺氏」
渡辺氏は八五歳で株式会社読売新聞グループ本社代表取締役会長兼主筆、株式会社読売巨人軍代表取締役会長である。新聞業界は再販制度に守られた結果、とんでもない連中が続出するやうになつた。
アメリカ政府系シンクタンク会員の船橋洋一はその筆頭だが渡辺氏も例外ではない。東北大震災の電力不足のさなかにプロ野球開幕を強行しようとして世間の顰蹙を買つた。それ以外にも「無礼だ、たかが選手の分際で」など暴言は数知れないが、今回ばかりは酷すぎる。渡辺氏にも報告し了解を得てゐたヘツドコーチ人事で契約前日にヘツドコーチは江川にすると言ひ出した。しかも報告は聞いてゐないと嘯いた。
清武氏が記者会見で報告したことを述べると、一転して報告を受けたことを認めた。つまり渡辺氏は多数の記者の前で嘘をついたことになる。その一方で今回は、清武氏は社内でも評判が悪いと言ひ出した。もしそうなら評判の悪い清武氏をどうしてこれまで用ゐたのか。無責任な話だ。
このような渡辺氏が今でも読売新聞の代表取締役会長兼主筆とは驚く。新聞業界がどれだけ腐つてゐるかが分かる。

十一月二十三日(水)「中曽根康弘」
渡辺氏の一番悪いところは中曽根康弘と関係が深いことだ。新聞は中立だと思つてゐる人が多いが、国売り新聞(自称、読売新聞)の偏向はこれだけでも明らかである。
中曽根は首相になる前は風見鶏と言はれた。首相になるや他の派閥内で寝返りさうな人間を閣僚や役員に任命し他の派閥に手を突つ込む奴と反発を買つた。
いはゆる大型間接税は絶対にやりません、と言つて選挙を闘つたのに終るや消費税を導入しようとした。国鉄分割民営化では当時から汚い手口が報道されてゐたが、その後二五年かけて不当労働行為が次々と明らかになり昨年にやつと和解した。日本の労働史と鉄道史最大の汚点と後世言はれることだらう。首相が率先してずいぶん汚いことをやつたものだ。

十一月二十六日(土)「渡辺氏、吠える、エガワる、ナベツネる」
清武氏が昨日改めて記者会見を行つた。最初の記者会見の直前に渡辺氏から脅迫の電話があつたことを暴露した。桃井球団社長が『もうやっていられない。俺辞表出すよ』と怒つたことも明らかになつた。桃井氏がなぜ清武氏を批判する側に回つたのかも、渡辺氏の脅迫電話が桃井氏にもあつたためだと分かる。
江川事件のときは「エガワる」といふ言葉が流行つた。今後は「ナベツネる」といふ言葉が流行つてもおかしくはない。

十一月二十七日(日)「渡辺氏はプロ野球を何だと思つてゐるのか」
プロ野球は国民に夢を与へなければいけない。ところが渡辺氏は
「こつちが法廷に持っていく。十人の最高級弁護士を用意してゐる。法廷ならわが方の最も得意とするところだ。俺は法廷闘争に負けたことがない」
と言ひ放つた。こちらはこれこれの理由で正しく相手はこれこれで非道だと非難するのなら賛成である。しかし十人の最高級弁護士を用意しただとか法廷闘争に負けたことがないとはいつたい何だ。カネのあるやつが裁判に勝つと言ふようなものだ。こんな不道徳なことを日本の最大部数の新聞社の会長兼主筆が発言するとは呆れる。

十二月三日(土)「三二歳でお払い箱の巨人軍」
日経ビジネスに相澤利彦氏が巨人軍がなぜ弱いかを分析した記事が載つた。巨人軍は他チームから引き抜いた高齢高額者と、若くて年俸が安い生え抜き組に二極化してゐる。
その裏で生え抜き組の大量放出があり、三二歳で年棒数千万円がお払い箱の基準だと相澤氏は見る。まさか現在「若・安組」に所属している坂本などが日経ビジネスオンラインの読者ではないだろうが、この法則に気が付けば若手のモチベーションは地に落ちるだろう 、と結論付けてゐる。
そして今回の問題も、会長が一コーチの人事に介入したなどという表層的な問題なのでは決してなく、組織の力を最大限に活かし切るビジョンと戦略に欠けるということなのだから、球団代表たるもの経営者として、そういう次元の高い指摘をしてもらいたかったと強く感じるし、会長の反論も「名誉棄損」などと自己保身を前面に出すのではなく、経営者として戦略や経営のレベルで語ってもらいたかったと思うのだ、と述べてゐる。

十二月七日(水)「嫌がらせ訴訟を許すな」
訴訟は被害を受けた人がやむを得ず行ふべきだ。嫌がらせ訴訟は許されない。例へばわざと高額の訴訟を個人に起こすのは権利の濫用である。
巨人軍と読売新聞が清武氏に対して一億円の損害賠償訴訟を起こした。プロ野球十二球団は対等であるべきだ。しかし実際には渡辺氏の鶴の一声で決まつた。読売新聞は公平であるべきだ。本来は私企業だから自由だが少なくとも国民は公平だと思つてゐるし、マスコミを専門とする学者はそのことを指摘しない。それなのに再販制度で守られてゐることも指摘しない。
渡辺氏は中曽根と仲がよい。読売新聞は選挙の公約に嘘をつく人が好きなやうだ。だから今回も読売新聞はさかんに消費税増税を叫び続ける。
清武氏の記者会見は実に公益性が高い。

十二月十一日(日)「国土交通相はJR東海に改善命令を出せ」
国売り新聞(自称、読売新聞)の十一月二七日にJR東海の代表取締役会長葛西の主張が載つた。中曽根が推し進めた国鉄分割民営化で不当労働行為の実行部隊の葛西が、そのことを著書に書き、それを裁判で証人に呼ばれ昨年の国鉄闘争団の和解につながつた。葛西はまづ
安全保障は日米同盟、経済の繁栄は東アジア共同体でなどという不整合は成立しない
と間抜けなことを言つてゐる。国と国の関係は、文化、軍事同盟、通商の三種があることに気が付かないらしい。そして
日本が独立を守り自由を守り、民主主義を望む限り、TPPに裏打ちされた日米同盟以外に選択肢はない。
TPPに加盟しないと日本の独立が守れないとは呆れる。それは逆だ。アメリカによる日本文化破壊を防ぐには、アメリカと距離を取る以外にない。それにはアジアの連携強化が必要だ。
葛西は日華事変、先の戦争、戦後の安保反対運動の三つがすべてソ連の策動だと勝手に思ひ込みさう主張した上で、
中国はあらゆる影響力を行使して日本のTPP参加を阻み、日米を分断して東アジア共同体に日本を取り込もうとするだろう。これを許せば、まさに近衛の誤りを繰り返すことになる
と間抜けなことを書いてゐる。悪いことはすべて共産主義国のせいにするといふ昭和三十年代の発想から抜け出せないでゐる。
葛西の主張に反対だからとJR東海に乗らない訳には行かない。国土交通相は葛西に代表取締役会長から退くよう命令を出すべきだ。だいたいJR東海は会長、社長のほかに副社長三名、専務取締役六名、常務取締役一名、取締役十名、常務執行役員三名、執行役員八名がゐる。この役員の異常な多さは、倒産の恐れのない独占企業体の殿様商売の象徴である。

十二月十四日(水)「JRと新聞社の共通点」
JR東海は国鉄の分割、読売新聞は再販制度で政府の保護下にある。戦前戦中に遡れば、鉄道は民営鉄道の国有化、新聞は日清戦争以来の戦時記事の迅速さと正確度で大手の合併が続いた。つまり鉄道と新聞は戦中体制を今でも引き摺つてゐる。
そんな連中が新自由主義の主張をすべきではない。二人とも競争の厳しい純民間に転職してから言ふべきだ。

十二月十四日(水)その二「独裁GM」
清武氏の問題はGMと監督の権限が未分化のせいだといふ主張が一部のマスコミにあつた。私も十一月十四日にはそれに近い主張をした。
しかし清武氏がGMなら、渡辺氏は大GM若しくは独裁GMである。読売新聞も巨人軍も渡辺氏の独裁ではないか。民主主義と自由といふ価値観などと拝米の口実を日常主張してゐる人たちは、なぜ独裁組織の読売新聞社と巨人軍を批判しないのか。

十二月十六日(金)「野村に見る監督のあり方」
南海ホークスのキヤツチヤーだつた野村は選手兼任の監督になつた。リーグ優勝も果たした。しかし離婚騒動で監督を解任され、元監督の鶴岡を批判したため他チームからの監督の話を鶴岡に長らく妨害されテレビ解説者として有名になつた。その後、鶴岡の球界での影響力が落ちるとヤクルト、阪神の監督になつた。しかし統率法には疑問を持つた。
選手の批判をマスコミに話すからである。監督が直接選手に言へば、選手は大監督から声を掛けられたと感激しよう。マスコミに言へば記事が載り選手が読むといふのが野村のやり方だが、それで人間関係がうまく行くだらうか。
野村があるとき、レギユラーの下には一軍、二軍の多数の選手がゐるといふことを一回だけ書いた。それを読んで一旦は納得した。しかしやはり別の方法がある。野村は社会人野球シダツクスを経て楽天の監督になつた。このときは大活躍をした。

十二月十七日(土)「一段づつ上がる」
野村は選手からコーチとヘツドコーチを経ないで監督になつた。解任された後は野球解説者で人気を得た。ヤクルト、阪神の時代はもしコーチだつたら最優秀だつたであらう。その後、シダツクスの監督を経て監督業にたどり着いたと言へる。
日本の政治と新聞も同じである。西洋の猿真似で途中を経ず最終だけ合はせた。その結果が今回の巨人軍騒動だし、大手新聞の偏向記事だし、最近の消費税騒動である。
中曽根は消費税(当時は売上税)騒ぎで国民を騙した。今また野田が国民を騙さうとしてゐる。中曽根と読売と野田は日本の新悪役そろひ踏みである。(完)

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