二百十三、ビルトツテン氏とアシストフオーラム

平成二十三年
十一月十日(木)「オラクルとアシスト」
私の勤務する会社はオラクルの関係で十年ほど前に株式会社アシストと細々と交流が始まつた。一昨日アシストフオーラム2011といふ催しを見に行つたので二百十二、京都御所訪問記などでトツテン氏を紹介して終結させようと思つた。しかしアシストフオーラムは優れた講演が多数あつた上に、林家木久翁の基調講演、日本太鼓など盛りだくさんであつた。
ビルトツテン氏はアメリカに対し厳しい意見を多数述べるが日本国内は暖かく見守つて来た。一つには取引先にも自民党支持、民主党支持などいろいろあることもある。だから私のようにアメリカと日本国内と両方を批判する人間がアシストを誉めることは避けるべきだと一旦は思つた。
しかしこの催しをほとんど紹介せず通り過ぎることは、日本のコンピユータ業界に大きな損失とならう。そのため昔流行した勝手連方式で勝手に紹介させてもらふことにした。

十一月十二日(土)「オラクル本社、その一」
アシストが日本で有名になつた最初は、オラクルを日本で最初に扱つたことだ。オラクルといふ子会社まで作つたが、後にアメリカのオラクル本社が直営の日本オラクルを作つた。
この辺の事情はマイクロソフト製品を日本ではアスキー社が販売し、後にマイクロソフトが日本に進出したのに似てゐる。
私は十六年前にアメリカのオラクル本社の近くに長期出張で八ケ月住んだことがある。

十一月十三日(日)「オラクル本社、その二」
オラクルの本社の一階には従業員向けのレストランが五つくらいあつた。一般の人もこの部分には行けるのでときどき食べに行つた。そのうちの一つが日本食レストランだが、日本食とは似ても似つかない変な味だつた。アメリカ人はああいふ味を好むのだらう。
本社の前に大きな池があり昼休みは大勢の技術者などが休憩をとつたり雑談をしてゐた。日本語で話す三人のグループもゐた。

十一月十八日(金)「昭和六十年までの日本」
アシストフォーラムでは、アシストをはじめ多数の会社の講演があつた。林家木久扇の基調講演もあつた。中国に木久蔵ラーメン店を作らうとして田中角栄に会いに行つた話もあり、昭和六十年から日本が拝米に急旋回する前を思ひ出した。日本はニユーヨークのロツクフエラーセンターを買収したりしてアメリカに日本脅威論を与へ、アメリカは日本破壊に動き始めた。

十一月十九日(土)「日本風のアシストフオーラム」
林家木久扇のほかにアシストの支店長クラスの人達による和太鼓の演奏もあつた。全員ががんばろう岩手と書かれた法被を着て演奏した。岩手県の酒造所の法被を着た人がゐたので話を伺つたところわざわざ送つてもらつたさうだ。
大地震から八ケ月。盛大な催し物のなかにも多数の犠牲者を忘れない配慮は立派である。それに比べて大地震直後から消費税だTPPだと叫び続ける連中はいつたい何だ。菅直人に至つては自分の人気回復に利用しようとした。

ソフトウエアの会社は外資系が多いせいもあり、とかくアメリカの猿真似で展示会を行ふところが多い。そのようななかでこういふ日本風の展示会は立派である。元アメリカ人のヒルトツテン社長だからできた。日本国内の企業はアシストのような良心的な会社とはもつと取引をしたほうがよい。

十二月一日(木)「アシスト本社訪問」
先日アシスト本社を訪問しUbuntuといふLinuxの説明を聴いた。現在はほとんどのパソコンがWindowsといふOSが掲載されてゐる。大学の情報処理の授業ではOSとしてLinuxを教へるところが多い。なぜならWindowsはOSとは言へないからだ。

まづしよつちゆう新製品を出す。大学でWindowsを教へても数年で変るから、学生が就職しても役に立たない。それよりいつまでも使へるLinuxを教へたほうがよい。
それ以外にもWindowsは欠点が多すぎる。こんなのがOSなら管直人や野田だつて首相に合格だ。

十二月二日(金)「Windowsの欠陥、その一」
OSの設定は平凡なテキストフアイルに書かれる。このファイルを開いて行を追加したり削除すれば設定ができる。ところがWindowsはレジストリといふ巨大なファイルにOSだらうとアプリケーションだらうとあらゆる情報が書き込まれる。六段階くらいの階層に分かれるが全体を見渡せない。或るアプリをアンインストールしたときにレジストリに設定が残つてゐるか調べられない。試しにインターネツトエクスプローラーの検索窓を消す方法を見てみよう。
HKEY_CURRENT_USERといふ階層の中のSoftwareの中のPoliciesの中のMicrosoftの中のInternet Explorerに、Infodeliveryといふ階層を新たに追加しその中にRestrictionsといふ行を作り1を入れる。すると検索窓が消へる。こんなふざけたOSは欠陥品である。

十二月三日(土)「Windowsの欠陥、その二」
コンピユータは複数の仕事を同時にできる。だからOSにはどの仕事を優先させるかを設定する機能がある。或いは暴走した仕事を消滅させる機能がある。ところがWindowsでこれをやらうとしてもほとんどの場合、エラーが表示される。しろうとに危険なことはさせないといふのだらうが、それだつたら危険な業務はコマンドで入力させるべきだ。その際、新たなコマンドを覚へるのは大変だからLinuxと統一すべきだ。
優先度とは、CPU(演算装置)への割当時間である。ところがCPUはここ三十年で速度が数千倍になつた。ハードデイスクはそれほど早くはならなかつた。メモリが不足するとハードデイスクで代用するから余計遅くなる。大型コンピユータはハードデイスクが早いしメモリも十分にある。優先度はメモリとハードデイスクの割当にすべきだつたができてゐない。
これはパソコンで圧倒的シエアを持つWindowsの怠慢である。

十二月三日(土)その二「NPO理事長の講演」
偶然といふことがある。アシストを訪問した二日後に、或るNPOの理事長が来社し同僚三〇名とともに講演を聴いた。当社の取引先に以前勤めてゐた縁ださうだ。何の講演か分からず参加したらLinuxだつた。
アメリカ国防省がソ連から攻撃されても存続するネツトワークを開発し、後に国防省は知的所有権を持たず公開したためインターネツトに発達したといふ話とJ・ナイのソフトパワーの話が出たので、私は次の質問した。
アメリカが公開したのは冷戦が終はつたためと、インターネツトで世界の文化破壊を試みたためではないですか。そしてそれは成功はしてゐないと思います。
Jナイのソフトパワーも文化破壊ではないですか。
理事長の回答は、戦争ではなくソフトパワーで外国と競ふといふ内容であつた。これは正しい。戦争ではなくソフトパワーで競ふほうがよい。しかし競ふとなるとカネのあるほうが勝つし、西洋文明がまだ優勢だから今競つても、非西洋地域は負けて国民の混乱を招く。私は競はずに各国が自国の文化を守るのがよいと思ふ。Jナイの競ふといふ態度自体がアメリカ帝国主義の典型である。
社内の講演会だから、政治的ではない質問の仕方をした。Linuxのボランテイア開発者で優秀な人はIBMや北京の大学からヘツドハンテイングがあるといふ話があつたので、若い技術者が下流工程(悪い表現だが)に閉じこもるおそれがあるといふ質問も同時にした。回答は、それはカーネルの話でそれ以外は機能の開発などがあるといふことだつた。これは正しい。カーネルはOSの核の部分で、これは仕様が決まつてゐる。しかしそれ以外は機能追加が可能である。
インターネツトが成功か失敗かとなると、これだけ世界に広まつたのだからもちろん成功である。しかしアメリカの意図とは別に、各国の文化破壊にはならなかつたからその点は失敗である。日本のようにアメリカ大使館がマスコミを通じて世論を誘導した国では特に失敗だつた。
日本の新聞はラジオのない時代に戦争報道の迅速性で大手に統合された。先の戦争では地方紙が各県一紙に統合された。そういふ戦時体制をインターネツトがやつと終結させたと言へる。

十二月四日(日)「大学は世の中の役に立たない」
理事長は或る私立大学の非常勤講師をしてゐるさうだ。非常勤講師は兼任で忙しいから仕方がないが、選任の教授たちはWindowsのようなOSとは言へないものをなぜ批判しないのか。
先日、大学の授業ではWindowsではなくLinuxを教へるところが多いと述べたが、実際に統計を取つた訳ではない。理論で考へればすぐに新製品が出て使ひ方の変はるものを教へても意味がないし、Windowsのコンピユータ設定関係のメニユー分類は非論理的である。だからWindowsを教へるはずがない、といふのが私の結論であつた。
ところが理事長の話だと、大学はWindowsを教へるといふ。私はWindowsの上で表計算やワープロを教えるのであつてOSはLinuxを教へるのだらうと解釈してゐるが、教授連中がWindowsをきちんと批判しないからこういふことになる。

十二月六日(火)「すべての国民と企業はLinuxを使はう」
今では、Linuxで動くオープンソースのWord互換ソフトとExcel互換ソフトがある。ブラウザも無料で使用できる。そもそもLinux自体がオープンソースである。
OSを特定の企業が独占し、しかも次々に新製品を出し古いものはサポートしないといふのは、独占だからできる行為だ。今こそすべての企業とすべての家庭はLinuxを使はう。既に外国の政府や公共機関は、特定企業のOSといふことでWindowsを信用せずLinuxを多くの場合に使つてゐる。Linuxはサーバでも使用実績が多い。

十二月九日(金)「Linux導入はアシストに相談を」
アシストフオーラムの最後に、岩手の小岩井農場の「雪のまきば」といふクツキーが配られた。普通のクツキーのようにパサパサせず甘すぎることもなく、ココナツツクリームに包まれたおいしいものであつた。
岩手県で始まり岩手県で終演した今回の催しは、被災者への配慮らあふれたものであつた。すべての企業はLinuxの導入を検討すべきだ。そしてそのときはビルトツテン氏のアシストに相談してほしい。
本当は、私の勤務する会社にと言いたいところだが、まだ私が会社にLinux進出を進言してゐる段階である。
そしておやつには小岩井農場の製品を買つてほしいと思ふ。(完)


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