千六百五十八(和語の歌) マンション管理人日記、続編
辛丑(2021)
十二月十四日(火)
(前へ)マンションのゴミ庫で臭はないのが三ヶ所だけだと書いたことがある。その後、臭はないマンションが更に二つあり、どちらも今年に建てられた。一つは、管理人の方がゴミ出しのあと、洗剤を付けて壁や床をモップで拭くさうだ。私も勤務し、可燃ごみの日は、洗剤を付けて拭いたあと、水で拭いた。
もう一つは、管理人のほかに清掃員がゐて、私は管理人だった。ゴミ出しを手伝ふときに、臭はないので質問すると、ハイターで拭くさうだ。

十二月十六日(木)
その後、二日続けて古いマンションを担当した。どちらも築二十年だ。一つは、地下の屋内に駐輪場があり、扉で仕切らない別の部屋に、清掃用具室、その奥にゴミ庫がある。まったく臭はないのは、管理人が普段から床を洗剤で拭くことと、部屋が広いのでごみ袋を積み重ねないためだ。
もう一つは、ゴミ庫と用具室が繋がり、他とは扉で区切られるものの、同じく臭はない。ここも広く、積み重ねないためだ。
十年(ととせ)ほど 過ぎた建屋は ごみ置き場 臭ふと云へど 二十年(はたとせ)か または新たな 建物は 臭ふことなく 浄(きよ)きを保つ


十二月十七日(金)
私が管理人になって一ヶ月以内に、二つの出来事があり、マンションより一軒家のほうがいいと、改めて思った。「改めて」と云ふのは、私はもともと一軒家がいいと思ふからだ。
一件目は、居住者の部屋で天井から水漏れがあり、原因はトイレにビニール手袋を流したため、詰まった。私が担当したのは一日で、水漏れ原因が判ったあとだった。水が漏れた部屋は引っ越して、全面改修の工事中だった。
もう一件は、ベランダのドアがひび割れした。ベランダは共有部のためドアは管理組合の所有だ。ある居住者は、ドアに断熱シートを貼り、そのためガラスがひび割れた。管理組合の掲示は、不良品なのかシートを貼ったことが原因なのかで修理費負担先が変はるため、調査中とあった。
今時は 一つ建屋が 縦と横 広がり部屋が 集まりて 上下(うえした)隣 皆が住む 一つの家と 異なりて 新たな事が 次々起きる

私は、賃貸のマンションに住んだことはあるが、それ以外は一軒家だ。
一番目は、土地の持ち分が少ない。
二番目に、人間は地面に住む生き物だ。高いところに住むと、将来弊害が現れるだらう。犬や亀を木の上で飼育しても、育たないのと同じだ。猫は不明だ。
三番目に、庭で昆虫が鳴いたり、草木が育つことが必要だ。

十二月十八日(土)
それよりもっと大きな理由がある。マンション全体を一つの事業体が持てば、どんなものでも収益物件になる。或るマンションでは、お年寄りで子の家か施設に引っ越したい入居者から、多少安めに(入居者に損をさせてはいけない。仲介手数料程度)買ひ上げて、有効利用する方法がある。別のマンションでは、転勤者から手数料分で他のマンションに差額は精算してあっせんする方法がある。
そもそもマンションを建設すること自体が大きな収益だから、販売して売り抜けしてはいけない。建設したところが、賃貸して最後まで面倒を見るべきだ。
だから今まで分譲マンションを購入しなかった。これまで建設した分譲マンションは、収益物件として活用すれば、将来が開ける。今のままだと、将来は廃墟になる。
そんな考への私がマンション管理人をする理由は、既に住む人たちには快適な生活をしてほしい。決して新規分譲マンションの建設促進で働く訳ではない。
縦横の 一つ建屋に 住む人を 損(そこ)なはずして 利(よ)い住まひ 一つ建屋が 生き残る道


十二月十九日(日)
昨日担当したマンションは、築三十年弱。ゴミ庫は屋外にあり、各戸が当日の朝に出す。これが一番いい。同じ地区の一戸建ては決められた日に出すのに、マンションの居住者だけいつでも出せるのは贅沢だ。
各戸が当日に出せば、管理人の人数や勤務時間を減らすことができる。管理費を削減できる。(終)

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