千五百三十八(和歌) 10.争議が長引いた原因、11.二つの人脈
辛丑(2021)
四月三日(土)
労働争議が長引いた原因は、私が転職した当日から悪い噂を流された。第x営業部長(xは数字が入った)は、私が前職だった会社の営業部長兼技術部長の子分みたいな男で、転職当日に挨拶するとその後、その会社に行ってくると出掛けた。私はにこやかに送り出した。事実を話されて困ることは何もない。
ところが帰って来るなり、態度が一変した。嘘を吹き込まれたのだらう。この男は、社長と同じ岳習院(仮名)大学出身だ。すぐ社長の耳に入れることだらう。
私の前々職はコンピュータ専門学校の教師で、理事長が脱税で全国紙に報道され、新設校について違法があり、教員数名への退職勧奨があった。だから対抗して、新設校の違法行為について東京都に通報した。それが効いたかどうかは不明だが、三校目の新設は認可されなかった。
私の前々々職は富士通マイコンシステムズで、その後、パソコンが半導体部門から電算部門に移管されたため、富士通本体は誰も移動せず、富士通マイコンシステムズの半数だけが新子会社に移動した。半導体と電算は仲が悪いから、新子会社だけ敵地に送られたやうなものだった。
以上三つの話で、私はまったく違法なことや道徳的にやましいことはしてゐない。しかし営業部長が、私の悪口を社長に言ひふらすとなると、事情は異なる。
この会社の課長(今は役職名がGM)だった男が、退職後に私の前々職の専門学校のNo3だ(校長、事務局長の次。校長、事務局長と専門学校学生時代のお友だちだった)。
社長はかつて、富士通ファコムに勤務したが、富士通に吸収され別の子会社になったため、別の子会社の社長(後に独立)が私財で作ってくれた会社を経営し、後に株式を引き取った。それがこの会社だ。
私の前職、前々職、前々々職に人脈があるだけに、無理に聞き出せば悪い噂になってしまふ。噂で解雇はできないから、退職勧奨が続くことになった。
本来は 他人に伝へる 必要が ない情報を 無理に聞き出す どう終結を


四月四日(日)
四流銀行から、社長の大学時代のお友だちを押し付けられまもなくして、営業部長が退職した。あの二人だって先輩後輩の関係なのに、まるで足利尊氏が弟の直義を抹殺したやうな、豊臣秀吉が甥の秀次を処刑したやうな素早さだった。
このお友だちは、派遣なのに派遣ではないと事業部長と担当営業が嘘をついた事件と、顧問なる男が何も云はず人に会へと云ふから会ったところ派遣だったため騒動になった、二つの事件に責任がある。それより重大で取り返しがつかないことは、あの二人に、退職させないならあなたに退職してもらふ、と云ったことだ。
二人は必死になるから、かなり暴言があった。迷惑料として五百万円はもらはないと合はない。争議が長引いた原因だった。
有能か 道徳心が ある人は
他人犠牲と 引き換へに
生き残らうと する筈がない

(反歌) 一方を 退職させる 提案は 云はれた人が 拒否をすべきだ

四月五日(月)
大学関係者の紹介で、社長やお友だちにとって後輩の女性が来たことは前に書いた。これで四人だが、岳習院(仮名)大学がもう一人ゐた。
私より半年年上で、営業職を定年ののち、営業はもともと合はないと云ふことで、再雇用は事務部門になった。再雇用規則では、従来の職種に就く。今まで営業なのに、営業が合はないとは変な話だ。
その半年後に、私が六十歳になった。「再雇用で仕事がないとつまらないから、何をするか考へてほしい」と云はれ、即座に技術職を回答した。
会社側が想定した返答と逆だったため、それまで通り事務職になった。この人を対抗させて、私から仕事を取り上げるつもりだったと考へられる。
この人は、大学同窓会の会長がまもなく退任するので、その人を暫定で会長に残し、この人が会長代理になるとのことだった。かつては婦人部が皇太子妃の人選に口を出し過ぎるので、その後は発言権が無くなった、と述懐してゐた。

四月六日(火)
前社長が急死した後も争議が長引いたのは、次のことが考へられる。
或る時、前社長が経営者仲間二人を連れて、私の席の横を通りながら「精神的に危ないのが一人ゐるが、働くだけ働いて、辞めてもらへればいいですよ」と云った。その話を聞きながら、人を使ひ捨てにすべきではないと思ひ、誰のことかはまったく考へなかった。少なくとも私のことではないからだ。
社長が亡くなり送別式で、いっしょにインドネシアに旅行した二人が、ゴルフ場から戻ると苦しんだ様子はなく眠るやうだった、と挨拶した。あのとき来た二人だった。さうなると「精神的に危ない」は私のことかも知れない。ずいぶん失礼な話だが。
あの二人は社長をホテルに残してゴルフに行ったため、ことさら「精神的に危ないのがゐると生前よく言ってゐた」と責任を私に振ったのかも知れない。

四月七日(水)
最後に富士通人脈について説明すると、冷遇組と優遇組に分かれる。私が入社したときの上司は、かつて大阪事業所長だった取締役で、社長が富士通ファコムにゐたときの部下だった。それなのに翌年、退職し(させられ?)た。退職の前に、もう一人大阪に富士通出身者がゐると云ってゐた。私とこの取締役は冷遇組だ。
日本DECがコンパックになり、更にヒューレットパッカードに吸収された後に、仕事を発注してくれる富士通の或る子会社から、これまでに七人来た。これらは優遇組である。優遇するのはよいが、それにより社内の人が余ることは、絶対に避けるべきだ。この会社の欠点は、技術職はかつて、部長や所長にはなれなかった。工数請負だとかうなる。今は部長になる人が出だしたとは云へ、上層部は富士通出身者で、となる。
或る時、グループマネージャーは課長と名称を戻したほうがいいと提案したことがある。富士通出身の本社事務顧問は真意を理解しなかった。
しかし富士通から来る人で、性格の悪い人はゐなかった。性格が悪いのは、もう一つの人脈で来た男だ。否、あの男もお友だち扱ひをしなければよかった。お友だち依怙贔屓は、政治も会社も、組織を駄目にする。(終)

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