千五百三十九(和歌) JTBと毎日新聞の節税を批判
辛丑(2021)
三月十六日(火)
JTBが1億円に減資した。現代ビジネスのホームページは、『週刊現代』2021年3月20・27日合併号の記事を紹介し
公認会計士の佐久間裕幸氏が解説する。
「もっとも大きいメリットは、外形標準課税の免除です。法人事業税の一つで、人件費などを基準に算出されます」
給与などの人件費は1・2%が企業に対して課税される。資本金1億円を超える大企業のみが対象で、中小企業には課されない。佐久間氏が続ける。
「従業員の数や販管費などから、JTBの人件費は1000億円を超えると推測されます。それを基に試算すると、中小企業化によって、JTBは約12億円分の税金の支払いを回避できる。(中略)'20年3月期の税引前純利益はわずか56億円です。12億円の税金を支払わなくて済むかどうかは、大きな問題なのです」

ここで許し難いのが、
3月上旬、ゴルフから帰宅したJTBの皆見薫代表取締役専務を、横浜市内の自宅前で直撃した。
(前略)
―GoToトラベルなど、国による支援もあったが。
「儲かっていませんよ。はははは。(売り上げのうち)海外旅行が35%、インバウンドが5%、残りの6割が国内。GoToで一時的にお客様が増えても、劇的に状況が改善するとか、そんなことはあり得ない」
―「税逃れ」の一環ではないか、という指摘もある。
「(表情が一変。やや声を上ずらせながら)いやいやいや! 国のルールに則った資本政策ですので、『税逃れ』という言葉はきわめて不適当でしょう」

つまり今後JTBは中小企業扱ひしなくてはいけない。それが国のルールに則ると云ふことだ。
企業には 社会の上に
責務あり それを放棄し
中小と 云ふならそれに 合ふ扱ひを

(反歌) 中小が 支店を多数 全国に 裏があるので 取引するな
これについて
「大企業が中小企業化し、あからさまに節税するのは、『公』に対する責任を放棄する行為とみなされる。企業の評価やブランド価値が棄損するリスクがあるのです」(経済ジャーナリスト・磯山友幸氏)

そもそも
税法により定義された中小企業に対して税制上の優遇があるのは、国内企業の99・7%を占める、本来の意味での中小企業の経営を助けるためだ。
こんな例がある。'15年5月、シャープはグループ全体の前期最終赤字が2223億円に膨らみ、苦境に喘いでいた。
その際、状況を打開すべく画策したのが減資だった。1218億円の資本金を1億円に減らし、中小企業化による節税を図ったのだ。
だが、社会はそれを許さなかった。「大規模な営業活動を行っている以上、多額の税金を支払うのは当然」「ルールの抜け穴を突く形で、中小企業のための税制優遇を受けるのは卑怯だ」と批判が殺到した。
 さらに、宮澤洋一経済産業相(当時)もこの減資に対し、「企業再生としては違和感がある」と指摘。結果、減資は5億円までに留まり、中小企業化は失敗に終わった。
以来、看板だけを挿げ替えて税制の優遇に縋る大企業の中小企業化は、「禁じ手」として忌避されてきた。


毎日新聞も禁じ手を使った。
1月15日の臨時株主総会で、毎日新聞社は41億5000万円の資本金を1億円に減資することを決定した。これも、税制上の優遇を受けることを狙ったものだ。(中略)シャープが減資を画策した当時、毎日新聞は「節税目的の減資」だと批判を浴びせた。まさにブーメランだ。

これについて
長らく毎日新聞社代表取締役会長の座に就き、現在は相談役を務める朝比奈豊氏に減資の背景を尋ねると、「これってそんなに大きな問題ではない。そういう認識を私は持っていますから」と述べ、後は「広報を通してください」と言うのみだった。

ずいぶん無責任なものだ。
前出・鈴木氏が言う。
「私が経営者なら、中小企業化に踏み切るような判断はしません。その前に、企業が抱える根本的な問題を解決する方法を考えるべきです。安易に税法を『悪用』してしまえば、今後、別の企業も同じことをやりかねないのではないか」

法律に 違反はなくても
道徳に 欠如があれば
不人気で 業績悪化
世の常だ 法の抜け穴 輿論で退治
(終)

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