千五百四(和歌)(モリカケ桜疑獄百九十九の四) 安倍の記者会見と国会での修正謝罪
庚子(仏歴2563/64年、西暦2020、ヒジュラ歴1441/42年)
十二月二十八日(月)
安倍は国会での訂正と謝罪の前に、記者会見を開いた。朝日新聞ホームページの見出しは
会見1時間だけ、司会は元側近… 安倍氏、遠い疑惑解明

このやり方は、加計学園理事長が記者会見を開いたときとそっくりだ。あのときも短時間で、しかも入場出来たのは地元の記者クラブ会員だけだった。関西からわざわざ駆け付けたマスコミは入場を拒否された。
今回の記者会見について、デイリースポーツのホームページは
橋下徹氏 安倍前総理の会見「しょーもない質問ばっかり」…再登板質問バッサリ

と云ふ題で
橋下氏は「記者の質問が甘いわ!」とバッサリ。(中略)直前、ちょうど「今後、自民党内が…安倍前総理の再登板を求める声があると思うんですが、どのようにお答えする?」という質問が流れていた。この質問に対するお怒りだった。
会見前、(中略)「国会で事実と違うことを答弁し続けたということは、議員辞職もやむなしなんじゃないのかなと思ってます」と話した。

国会で 嘘答弁を したならば 議員を辞職 当然のことだ


十二月三十日(水)
ハーバービジネスオンラインに
安倍前首相は国会で答弁を「訂正」するはずではなかったのか?

と云ふ記事が載った。
あの場は安倍氏がみずから求めて開かれた答弁の「訂正」のための場だった。しかし、答弁は適切に「訂正」されなかった。なのに、なぜ報道はそれを看過するのか。あの場の位置づけを軽視することは、「説明責任を果たした」という安倍氏の主張に加勢することになってしまうのに。

まったくそのとほりだ。具体的には
それぞれの1面記事の冒頭は、こうだ(それぞれ、東京本社版)。
●読売新聞
“(前略)前夜祭を巡る過去の答弁について、「事実に反するものがあった」と認め、謝罪した。”
●朝日新聞
“(前略)首相在任時の国会答弁が事実と異なることを認め、謝罪した。”
●毎日新聞
“(中略)「結果として、事実に反するものがあった」と誤りを認め、謝罪した。”
●東京新聞
“(前略)「事実に反するものがあった。国会の信頼を傷つけた」と陳謝し、夕食会参加者の費用を補填していたことを認めた。”
 これらの報じ方では、なぜ安倍氏が議院運営委員会に「出席」したのか、わからない。(中略)「謝罪したい」と申し出たのか? 違う。「答弁を訂正する発言を行わせていただきたい」と、申し出ていたのだ。

国会が 安倍の宣伝 してはいけない
マスコミが 安倍の宣伝 してはいけない


十二月三十一日(木)
安倍氏は、「答弁の中には、事実に反するものがございました」としか説明していない。これでは、質疑に入る上での前提条件が整っていない。「やり直し」を命じてよいレベルだ。
それなのにやり直しはしなかった。
だから、衆議院と同じ説明を参議院議院運営委員会でもおこなった安倍氏の冒頭発言が終了した時点で、立憲会派の議院運営委員会筆頭理事である吉川沙織議員は手を挙げて席を立ち、委員長席に向かい、他の理事らを集めて協議をおこなった。(中略)理事の一人が安倍氏のもとに行って何かを話し、そのあとで安倍氏が再び答弁に立ち、こう語っている。
●安倍晋三「ただいま理事の方々からご指摘がございましたが、答弁の中で4点申し上げたところでございますが、この4点についてですね、事実でないものがあったということを、で、ございますが、しかしながら、結果としてですね、事務所が支出を、桜を見る会の前夜の夕食会について、支出をしていなかった、ということも含めて、答弁の中には事実に反するものがございました、ということでございます」
ここでもやはり「事実でないものがあった」「事実に反するものがございました」としか安倍氏は答弁していない。そして、吉川議員が再び委員長席に向かい、他の理事らも集まって、再び速記が止まる。その後、委員長がこう発言する。
「安倍前総理の冒頭のご発言につきまして、具体性に欠けるのではないかというご指摘がございました。安倍前総理におかれましては、この後の答弁で、誠実にお答えいただきますようお願いしたいと存じます」
その後、質疑の時間へと移行した。


西暦元日後閏十一月一日(金)
本来はこの議院運営委員会の様子を報じる際には、まず、
●安倍前首相は答弁の訂正を求めて国会に出向いた
●しかし冒頭発言で安倍氏はどの答弁をどう訂正するのか、明言しなかった。答弁の中には事実に反するものがあったとするのみであった。
●後援会による支出の補填があったという、検察の調査によって認められた事実は、「新たに判明した事実」として語られたが、それ以外は、過去の答弁について、具体的な訂正をせずに質疑に臨んだ。
ということが報じられるべきだった。なのに、それが報じられなかった。

立憲会派の理事が審議を停止させたのはよいことだ。それなのに
なぜ、あの場で質疑に移行することを止めたのか、吉川沙織議員にも取材して記事にすべきだった。しかし、おこなわれなかった。かろうじて東京新聞が26日「こちら特報部」で下記のように報じたが、「反発」という表現(括弧内略)では、問題が伝わらない。
“参院で議員運営委員会が始まったのが午後三時十五分。安倍氏が「結果として(過去の)答弁の中には事実と反するものがあった」と語りだすと、野党議員たちは「具体性に欠ける」と反発して委員長の周りに集まり、一時中断した。”
安倍氏の冒頭発言では適切に答弁の「訂正」がおこなわれなかったからこそ、そのまま質疑に入ることはできないと、吉川議員が議事進行に異議を唱えたはずなのだ。不当な妨害行為ではなく、正当な介入であったはずだ。なのに、なぜ「反発」なのか。
「具体性に欠ける」と、という表現も的確ではない。「具体性に欠ける」というのは委員長の言葉だ。吉川議員らは、「具体性に欠ける」と漠然と指摘したのではなく、「これでは訂正とは言えない」と指摘したのだろうと思う。しかし、記者は吉川議員には取材しておらず、吉川議員の行動の意図は明らかにされないままとなっている。


西暦元日後閏十一月二日(土)
「反発」という言葉は、理がなく感情的にリアクションを返しているように見える。このときの吉川議員の行動は、「反発」ではなく「抗議」だろう。
この東京新聞「こちら特報部」の「『桜』疑惑 安倍氏国会質疑」という記事(中山岳、榊原崇仁の署名入り)のリード文では、下記の通り、これが「答弁を訂正する」場であったことを正しく伝えていた。
“「桜を見る会」夕食会をめぐる政治資金規正法違反事件で、不起訴となった安倍晋三前首相が二十五日、国会で、「答弁を訂正する」との趣旨で、事件に関する説明を行った。”
それだけに、この書きぶりは残念だ。
またこの記事には立憲民主党の辻元清美氏の質疑について、こういう記述もある。
“言葉ばかりの反省に「何をしにここに来られた」「相変わらず変わっていない」といらだちをぶつけた辻元氏。”
この「いらだちをぶつけた」という表現も、適切ではない。実際の映像を衆議院インターネット審議中継からご確認いただきたい(0:48:04~)が、辻元氏は感情を抑えて、実に冷静に安倍氏に迫っている。
冷静に迫っているからこそ、その質疑には凄みがある。なのに、「いらだちをぶつけた」と表現すると、これもまた、理もなくワーワーと騒いで見せているように見えてしまう。

辻元さんは、抗議など強硬な姿勢ではなく、穏やかな方法で東京新聞に意見を伝へたほうがいい。このままだと「いらだち女」「ワーワー女」とあだ名、筆名、ペンネームが付かないとも限らない。

西暦元日後閏十一月三日(日)
なお、26日の朝日新聞は、下記の社会面の記事のリード文では、“安倍氏自らが「説明したい」と申し出ての実施だったが、詳細を語る場面はなく、「秘書任せ」「他人任せ」の姿勢に終始した。”と記している。
●核心答えぬ安倍前首相 議運後には「説明責任果たした」(朝日新聞 2020年12月27日)
自らの申し出による場だったということはこの記述でわかるが、しかし、「説明したい」と申し出たのではない。「答弁を訂正する発言を行わせて頂きたい」と安倍氏は申し出たのだ。
その違いは看過すべきではない。「答弁を訂正する発言を行わせて頂きたい」を「説明したい」と言い換えることは、国会という場の重みを報道が軽視してしまうことになるからだ。
(終)

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