千二百五十八 二つの記事(1.若者の奮起 支える社会に、2.二十円の節約は一生でどれだけ)
平成三十一己亥年
一月十二日(土)
二つの記事を紹介したい。一つ目は毎日新聞1月5日朝刊に載った真山仁さんの「若者の奮起 支える社会に」だ。この記事は大筋で同感だ。しかし細かい部分は意見が異なるので、それを併記し社会の役に立つ情報としたい。
こんなことを云ふと、現状の内容だと社会の役に立たないのかと疑問を持つ人もゐることでせう。有益な記事でも論評しなければ、翌日の朝刊配達とともに忘れられてしまふ。しかし論評すれば、末永く役立つ。
真山さんは全国紙記者、フリーライターを経て、十五年前に作家としてデビュー。理想的な人生を歩まれた。私だってホームページを書いてゐればそのうち「先生、ホームページの文体でうちの出版社に1冊書いてください」と声が掛かり作家デビューかな、とはまったく考へなかった。
たまたま二十年前に私が勤務する会社に在日中国人がゐて、その人の知人が作ったGeocitiesのSiliconValley区画のホームページを見せてもらったので「私もホームページを作らう」と決意した。そのホームページが二十年間続いた。
さて真山さんは
バブル崩壊後、(中略)就職氷河期と言われたが、就職はできても手当てが廃止されたことで、収入は上の世代より大幅に下がった。

まづ、手当てが廃止されて貧困になった若者はゐない(と断言すると、多数の中からさういふ人を見つけることは可能だが、それは稀な例外だ)。貧困なのは、非正規雇用や、就職できなかったり就職した企業がブラックだったりで引きこもりとなった若者たちだ。真山さんは大手紙に就職したからたくさん手当てがあった。一般の企業は手当てがほとんどない。
企業にとっては、夢を持って働く社員は頭脳となる少人数でよいのが本音だ。

真山さんがかつて勤務したY売新聞は、Nツネだとか著名なワンマン人がゐたのでさうかも知れない。そもそも全国紙は数十年間倒産がなかったから組織が堕落する。
一方で一般企業は業績悪化の虞があるから、どんな現場にも工夫、改善できる人が必要だ。三十五年程前に流行ったQCサークルや、星野リゾートのフラットな組織はその典型だ。ただし日本の一般企業がさう云ふ人を有効利用してゐるとは云へない。

一月十三日(日)
今の10代、20代は、明らかに危機感を抱き(中略)何とかしようとベンチャーに行ったり、起業したりする若者がいる。
そして
たまに「大手企業とベンチャーどちらに行くべきか」と相談される。私は最初は大手企業に入った方がいいと答える。

ここは同感だ。しかし
起業する力があるなら、まずは組織で100人のライバルを倒して1番になれと勧める。

ここは絶対に不同意だ。100人のライバルを倒した時点で、その人は性格も人徳も最悪になってしまふ。起業してもブラックが限界だ。それより、倒産のない大手全国紙の社内はこんな雰囲気なのかと、普通の企業との相違に驚く。続いて
あるいは1番になれなくても「組織とはこういうものか」と勉強してきなさい。

ここは半分同意半分不同意だ。組織とは何かを学ぶのではなく、商売の方法を学ぶべきだ。ここでも大手全国紙の弊害が現れる。
社会全体が若者を応援する仕組みが必要だ。若者は、生きるために、新しいルールや社会を自分たちで作りだしてほしい。

記事はこの文章で終るが、こんな抽象的なことを書いては駄目だ。それでは1キ1スケ1ゾーと同じ(東條英機は戦陣訓や戦争スローガン、安倍は「日本の明日を切り拓く」)になってしまふ。

一月十七日(木)
Googleで検索をしてゐたら、二か月に一回買ふ物を遠い店まで行って20円節約したとして、五十年間で六千円の節約にしかならないから、悪い節約だと云ふ評論家だかの主張が載ってゐた。
私はこの主張に反対で、その理由は節約は世の中のためにするべきだ。二十円安くするには、経営努力が必要だ。だからその経営努力に報いる。私が嫌ひなのは経営努力が不要な業界で、だから大都市の鉄道、NHK、大手新聞社、世襲議員は嫌ひだ。
勿論ここで価格競争だけだと、大手が有利だし、ブラックが有利だし、日産みたいに下請けをゴーンと不利に扱ふところは有利だ。だから私は、非正規雇用の禁止、下請けの禁止を主張してきた。人件費には平衡作用がある。人件費が高くなれば業績が悪化し賃上げが抑へられるし、人件費が低くなれば経常利益が増えて賃上げが促進される。非正規雇用や下請けを使ふと、これらが機能しない。
私は昨年まで、浦和の実家に行くのに、古くはバスカード、その後は地下鉄を使ふやうになった。バスカードは便利なので応援したいと思ったし、地下鉄は土日券が便利だから応援する意味があった。
しかしそれ以上に大切な理由は、JRが発足するときに今のJR総連の人たちは、国労を見捨てて自分たちだけ採用された。その裏切り方が不愉快だったので、JRには青春18きっぷを除いて原則乗らないことにした(過去のページを見ると、経緯はもう少し複雑だが)。
バスカードの時代に、歩いて都営バスの停留所まで歩くと安くなるが、その分で日本茶のペットボトルを買ふから、金額は変らないこともあった。青春18きっぷを買ふのに、JR東海やJR東海ツアーズで買ふこともあった(JR東海はJR総連が少数派なので)。
昨年からJR東日本で通勤するやうになったが、これは毎日和光市まで歩く訳に行かない。昨年にJR東日本でJR総連から脱退者が相次いで、組合員数が半分を割ったさうだ。節約は世の中の公正のために行ふ。これが正解だと思ふ。(終)

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