千百八十二 1.敗戦責任を曖昧にしてはいけない(東條英機、牟田口廉也)、2.大人の発達障害
平成三十戊戌
八月十七日(金)
東條英機と牟田口廉也には重大な敗戦責任がある。それなのに最近、敗戦責任を曖昧にする記事が二つ続いたので、これを批判したい。
まづ東條について、戦争を避けるために内相も兼任し、戦争を回避して暴動が起きたときに備へたと云ふ記事を見つけた。東條を首相に任命した理由が戦争を回避するためだったのは事実だ。しかし東條はその前に、陸相のときは徹底して開戦を主張し続けた。
だから逆に首相をやらせて陸軍を納得させようとしたのだが、外交交渉はうまく行かなかった。それは当然で、本当は開戦主義者だからだ。
東條は陸相のほか内相を兼任した。その理由に、暴動が起きたときに備へることもあったのかも知れない。しかし東條は、内相として弾圧を繰り返した。まるで安政の大獄である。だから東條の敗戦責任と弾圧責任を曖昧にする主張をしてはいけない。

八月十八日(土)
次の記事は、文春オンラインに載った広中一成さんの
「愚将」牟田口廉也 “不適材不適所”を生んだ組織の病とは何か?

だ。インパール作戦では9万人のうち3万人が亡くなった。それもほとんど餓死だった。そのため
インパール作戦を計画実行した牟田口廉也軍司令官は厳しい批難を浴び、戦後、「愚将」という不名誉なレッテルが貼られた。
また、最近になって、SNS上では東京オリンピックにまつわる話題のなかで、(中略)猛暑が予想されているにも拘らず、再検討をしない小池百合子東京都知事や、森喜朗JOC会長を名指しし、彼らの考えを「牟田口的」であると批判する書き込みが現れたからだ。

これは当然のことだ。それなのに広中さんは
私は牟田口が「愚将」であったかどうかはどちらでも構わないと思っている。それは、たとえ牟田口を主観的に「愚将」と見なしたところで、歴史学的に何ら意味をなさないからだ。

確かに牟田口を愚将と見なしても、教訓としては役立たない。なぜ牟田口と云ふ愚将が発生したのかを考察すべきだ。しかし牟田口が愚将かどうかはどちらでも構はないとなると、多数の犠牲者が浮かばれない。弘中さんは多数の犠牲者を忘れてしまった。結論として
牟田口は陸軍大学卒業後、陸軍中央の部局で実務にあたった、今でいうキャリア官僚のような軍人だった。しかし(中略)中国の前線部隊の司令官に「左遷」された。そこで起きたのが盧溝橋事件だった。指揮官の経験がない牟田口は、命令を二転三転し、現場を混乱させた。(中略)牟田口は、しばしば感情によって方針を決定することがあり、変化する状況に対し、合理的判断を要求される軍司令官の職には不向きだった。(中略)その結果が「愚将」というレッテルではないだろうか。

牟田口は愚将ではなく適材適所ではなかったと云ふのだ。ずいぶん無責任な主張だ。命令を二転三転させたり、感情によって方針を決定するのだから、やはり愚将だ。
ここで問題点は、陸軍中央と軍司令官はどちらが要職なのか。陸軍中央が軍曹や二等兵で何の問題も無い。軍司令官が二等兵だと職務を遂行できない。陸軍中央の階級は兵か下士官でよい。命令、指示、書類発行は天皇、参謀総長、陸軍大臣が行ふのだから。
現場の将校が中央に来るときは二等兵や軍曹になる。戻ると大佐や中将になる。そのほうがよくないか。或いは文官でもよい。中央に来たら文官、現場に戻ったら武官になる。

八月十八日(土)その二
DIAMOND ONLINEに池上正樹さんの
成績優秀なのに仕事ができない  “大人の発達障害”に向く仕事、向かない仕事

と云ふ記事が載った。それによると
やるべきことを先延ばしにする。約束が守れない。時間に遅れる。人の話が聞けない。相手の気持ちを考えずに一方的に話す。物事の優先順位がわからない。後先考えずに行動する。場の空気が読めない。キレやすい。落ち着きがない。片づけられない…。もしそうだとしたら、その原因は“大人の発達障害”にあるのではないか。

発達障害は、勉強の成績はよい。記事に登場する最高齢85歳の女性は
都内で英語教師や翻訳の仕事をしていたが、(中略)日常生活がうまくできない。(中略)知能検査をしたところ、結果を表すIQは135と、平均知能指数100に比べて非常に高いこともわかった。

もしかすると牟田口廉也は大人の発達障害ではなかったのか。否、そればかりではない。陸軍を乗っ取った一夕会のメンバーに、大人の発達障害がどのくらいいたのだらうか。まさか将校に発達障害が、と断定してはいけない。
特徴的なのは、大人になってから、「仕事中毒になりやすい」ことだという。
「(前略)仕事をしているときに充実しているんです。また、アルコール依存症になる人の約7割は、仕事中毒なんですよ。昼間、しっかり仕事をして、夜になると、飲み屋で飲んでいるんです」

彼らに向く職業は
① 研究者、学者、中学・高校教師、塾・予備校講師など
② 警察官、消防士、新聞・雑誌の記者、作家、ジャーナリスト、カメラマン、ディレクターなど
③ イラストレーター、スタイリスト、漫画家、画家、建築関係、コンピュータ・プログラマー、CGアニメーター、広告関係、デザイナーなど
④ 調理師、調律師、自動車整備士、歯科技工士、電気技師、図書館司書、校正など

いづれもまともな職業だ。戦前の将校、特に陸大卒に発達障害が多かったとしても不思議ではない。(終)

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