千百八十二 (附録)記事『インパール作戦を立案・指示した「陸軍最悪のコンビ」の深層心理』は8割賞賛、2割批判
平成三十戊戌
八月十八日(土)
前回は批判した広中一成さんが、「現代ビジネス」に
インパール作戦を立案・指示した「陸軍最悪のコンビ」の深層心理

と題する別の記事を書いた。読んでみて、これなら10割賛成だった。二回目に読んで9割賛成1割反対になった。そして今は8割賞賛2割批判になった。一番目に読んで賛成だったのは、インパール作戦の失敗をうやむやにしなかった。第十五軍司令官牟田口の責任が重大なのは当然だが、その上官のビルマ方面軍司令官河辺、更にはその上官の東條まで批判したことだ。
とは云へ、なぜ東條を批判しなくてはいけないかが、この記事には書かれてゐない。そもそも軍、方面軍、総軍、大本営と連なる命令系統で、東條は首相兼、陸相、内相その他だ。
組織の長大化は官僚主義(官僚が悪いと言ってゐるのではなく大企業だって同じだ)の典型だ。あと、陸士何期だ陸大卒だ先任だ陸大成績順位だを気にするのは、戦時にすべきではない。東條に関しては、これらを批判すべきだ。

八月二十日(月)
インパール作戦は、牟田口が勝手に始めたのでなく、上官の河辺、さらには東条首相の支持がなければ実現できなかった。

ビルマ方面軍の上位に南方軍があるから、広中さんは、上官の河辺、さらに上官の南方軍総司令官を批判すべきだ。東條に責任があるとすれば、首相兼陸相の東條がインパール構想を支持したのなら、それに適する人間を軍司令官に配置しなかったことだ。そもそも軍、方面軍、総軍、大本営と組織が多重化すれば、適材を軍司令官に配置なんてできない。
あと軍、方面軍、総軍の参謀長、各参謀は何をやってゐたのか。司令官が参謀長を指名し、参謀長が参謀を指名できるやうにしなかったことも東條の批判点だ。これらは難しいことではない。下が自由に発言できる雰囲気にすれば、改善点はすぐ出て来るから東條はそれを採用する。これで参謀長、参謀まで自由に発言できるやうになる。

八月二十日(月)その二
広中さんは記事の冒頭で
昨年から今年にかけて、日本では組織内で何らかの不祥事が起きたとき、誰がどのように責任を取るのかという問題が注目を集めた。
そのひとつが、いわゆる森友学園問題である。

と書いた。記事の最後は
敵を批判することに熱中するあまり、(中略)しかし、実はその「敵」はスケープゴートに過ぎず、「敵」の裏に潜んでいるのが、本当の批判の対象かもしれない。
愚かな判断の裏には、それを黙認し、かつ支持しながら、いざ失敗が明るみになると、「自分は関係ない」と姿を隠す人間が必ずいる。
いま、あなたは気づかないうちに「牟田口」になっているかもしれない。もしそうなら、あなたの後ろには「河辺」がいる。

で終はる。モリカケ問題の場合は、「愚かな判断の裏には、それを黙認し」ではなく「不公正な判断の裏には、それをごり押しし」だから少し違ふ。少し違ふが、インパール作戦の最終責任が首相にある点は同じだ。8割賞賛2割批判の所以である。(終)

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